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「愛は嫌悪に勝る」アリアナ・グランデさん、テロで負傷した子供たち見舞う

木村正人在英国際ジャーナリスト
チャリティーコンサートを開くアリアナ・グランデさん。イギリスに到着(写真:Splash/アフロ)

[ロンドン発]5月22日、米歌手アリアナ・グランデさん(23)のコンサートが開かれていた英中部マンチェスターのマンチェスター・アリーナ(2万1000席)で22人が犠牲になった自爆テロに、10歳のジェイデン・ファレル=マンちゃんも巻き込まれてしまいました。両足を骨折、飛び散ったネジやナットで負傷して2回の手術を受け、ロイヤル・マンチェスター子供病院に入院しています。

6月2日、金曜日の夜、ジェイデンちゃんにとって奇跡のような出来事が起きました。グランデさんがプレゼントを持って病室に現れたのです。ジェイデンちゃんを抱きしめて、キス。お気に入りの「アリアナ・グランデTシャツ」にハートマーク付きのサインまでしてくれました。

ジェイデンちゃんのお母さん、シャロンさんは地元の夕刊紙マンチェスター・イブニング・ニュースにこう話しています。

「そのとき、ジェイデンは座ってTVを見ていました。するとグランデさんが何の前触れもなしに病室に入って来たのです。ジェイデンの喜びようと言ったらありませんでした。本当にビックリしました」

「今日の早い時間にウィリアム王子と会い、そして夜にはグランデさんが病室に歩いて入って来たのです」

自爆テロによるケガや恐怖心にも負けず、笑みを絶やさなかったジェイデンちゃんはさらに大きな笑顔を浮かべ、「今日、私のクィーンに会ったの。アリアナ・グランデ、あなたのことが好きでたまりません。チュッ。チュッ。チュッ。チュッ」とツイートしました。

グランデさんは自分のコンサートで起きた自爆テロの犠牲者を追悼し、重傷を負ったファンを励ますため、6月4日の日曜日、マンチェスターにあるクリケット場オールド・トラフォード・クリケット・グラウンド(約5万人収容)で、チャリティーコンサート「ワン・ラブ・マンチェスター」を開きます。

コンサートの前にグランデさんは、自爆テロに巻き込まれた少女たちを見舞ったのです。みんな、憧れのグランデさんに抱きしめてもらって、これ以上ないスマイルを浮かべました。

チャリティーコンサートには、カナダの人気歌手ジャスティン・ビーバーさん、バンドグループ「ワン・ダイレクション」のナイル・ホーランさん、英ロックバンド「コールドプレイ」、アメリカの歌手ケイティ・ペリーさんらも参加します。

災害やテロなどに遭遇すると、強い心理的な衝撃を受けて心のバランスが大きく崩れることがあります。「自我」がまだ十分に発達していない子供の場合、こうした心的外傷(トラウマ)の影響は大人より深刻です。

しかし、グランデさんに抱きしめられた子供たちの表情を見ていると、テロの苦痛や後遺症が吹き飛んでしまったように見えます。

グランデさんは自爆テロの4日後、ツイッターに「テロが私たちを分かつことはない。嫌悪が勝つこともない」という手紙を投稿し、マンチェスターに戻ってファンを支援するチャリティーコンサートを開きたいと表明していました。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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