【EU離脱】統一地方選は与党・保守党が地滑り的勝利。野党は惨敗、反EU党は消滅

UKIP前党首ナイジェル・ファラージ(昨年のEU国民投票、筆者撮影)

イギリスで総選挙(6月8日)の前哨戦となる統一地方選が5月4日に行われ、開票の結果、首相のテリーザ・メイ率いる保守党が地滑り的勝利を収めました。

欧州連合(EU)からの離脱を党是に掲げ、昨年6月の国民投票でEU離脱を主張した英国独立党(UKIP)は、保守党がEU離脱を実行に移す中で、ほぼ消滅してしまいました。これを「狡兎(こうと)死して走狗(そうく)烹らる」とでも言うのでしょうか。

イギリスでは労働者の自由移動を認めた単一市場が反EUポピュリズムの源泉になっていたことが改めて浮き彫りになりました。

今回の統一地方選は、イングランド地方の34議会、スコットランド地方の32議会、ウェールズ地方の22議会、これに8首長選を加えて行われました。

英BBC放送のまとめでは(5日午後3時時点)で保守党は465議席増、最大野党・労働党は299議席減らしました。UKIPは108議席減で、これまでのところ1議席しか取れていません。

スコットランド地方の議会選では、EU残留を唱えて2回目の独立住民投票に突き進むスコットランド民族党(SNP)は19議席減らしたのに対して、EUとの困難な離脱交渉に向けて4地方の結束を強調している保守党は110議席増の大躍進です。

SNPの仕掛ける2回目の独立住民投票は頓挫する恐れが出てきました。

1992年、当時の首相ジョン・メージャーがEU創設を定めたマーストリヒト条約に署名したことに反対し、「反連邦主義者連盟(後のUKIP)」が創立されました。

昨年の国民投票でEU離脱を唱えた元党首ナイジェル・ファラージは創立メンバーで、ずっと「EU離脱」を唱えてきました。車にはねられても、精巣腫瘍を患っても、2010年5月の総選挙では乗っていたキャンペーン用の小型機が墜落しても、「EU離脱」の主張を曲げませんでした。

初代EU大統領のヘルマン・ファンロンパイを「ボロ雑巾のカリスマ」「木っ端銀行員みたいな外見」とこき下ろし、EUからの移民について「2700万のルーマニア人とブルガリア人に門戸を開放すれば大問題をもたらす」とイギリス国民の不安心理をあおり続けました。

イギリスの大衆酒場(パブ)で地ビール(エール)の入ったパイントグラスを傾け、タバコの煙をくゆらすのがファラージのキャンペーンでした。UKIPは労働者階級の代表ですよ、というメッセージでした。

EU国民投票では、15年の難民危機を「決壊点」として、「EUに留まれば100万人以上の難民が流入する」と難民の写真を掲げたキャンペーン車まで走らせました。

大役を終えたファラージは党首を退きました。現在の党首にはファラージのようなカリスマは全くありません。保守党からUKIPに鞍替えした下院議員のダグラス・カースウェルも3月、UKIPを離党して政界から引退。

UKIPを離党し、政界を引退するカースウェル(筆者撮影)
UKIPを離党し、政界を引退するカースウェル(筆者撮影)

イギリスのEU離脱が現実になり、存在意義を失ったUKIPは空中分解してしまいました。UKIPは政党ではなく、実はEU離脱を主導するキャンペーン団体に過ぎなかったのかもしれません。

ファラージは5月7日に迫ったフランス大統領選の決選投票で、EUや単一通貨ユーロからの離脱を唱える右翼ナショナリスト政党・国民戦線の党首マリーヌ・ルペンが勝てば、ブレグジット(イギリスのEU離脱)は容易になると訴えています。

しかし実際には、EU統合推進派の中道政治運動「前進!」のエマニュエル・マクロンが大統領に選出される見通しです。

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シンクタンク、王立国際問題研究所(チャタムハウス)の9カ国調査では、「イギリスとの離脱交渉で妥協してでも緊密な関係を保つべきだ」と答えたのはドイツ13.9%、フランス17.2%と低く、一番多いハンガリーでも40.2%にとどまっていました。

欧州の世論は、イギリスに対して非常に厳しくなっています。

イギリスの労働党党首ジェレミー・コービンは相変わらずの無能ぶりをさらけ出していますが、オランダでも、フランスでも、労働党や社会党は崩壊寸前です。統一地方選に続いて6月8日の総選挙でもメイは地滑り的勝利を収めるのはほぼ確実です。

イギリス国民からの全権委任を得たメイは、EUの包囲網にどんな戦略で臨むのでしょう。「悪い合意ならしない方がマシ」と非妥協的な立場を貫くのか、それともEUへのアクセスをできるだけ残そうとするのでしょうか。表面的な動きを見る限り、イギリスとEUは「全面戦争」に突入しそうな雲行きです。

(おわり)