トランプ一族のホワイトハウス支配 娘婿クシュナーが勢力拡大 追放される「黒幕右翼」バノン

シリア空爆後にホワイトハウスから公開された写真(名前は筆者加工)

7日、米ホワイトハウスの大統領報道官スパイサーが、シリア空爆の報告を受けるトランプ政権の写真をツイッターで公開しました。注目はテーブル席から「黒幕」首席戦略官・上級顧問バノンが外されていることです。

米紙ニューヨーク・タイムズや英BBC放送が1枚の写真からうかがえるトランプ政権の内紛と勢力の変化について詳細に解説しています。

複数の米メディアは、大統領トランプが、ホワイトハウスの最高実力者とまで呼ばれた首席戦略官・上級顧問バノンと、首席補佐官プリーバスの2人の更迭を検討していると報じています。

バノンはかつて右派ウェブサイト「ブライトバート・ニュース・ネットワーク」を運営し、イスラム系移民排斥や白人至上主義への偏向が以前から指摘されていました。バノンが主導したムスリム(イスラム教徒)入国禁止令が裁判所で差し止め命令を受けるなど、トランプ政権は出だしから大きく躓きました。

「アメリカ・ファースト(第一)!」を必要以上に強調し、イスラム過激派やテロ対策を優先させるべきだと主張するバノンはシリアのアサド政権が化学兵器を使用したことに関する空爆にも後ろ向きでした。

空爆派の国家安全保障担当大統領補佐官マクマスターの要請を受け、トランプは5日に米国家安全保障会議(NSC)常任委員からバノンを外し、従来通り、統合参謀本部議長と国家情報長官を復帰させました。

写真で存在感を示しているのは何と言ってもトランプの長女イヴァンカの夫で大統領上級顧問クシュナーです。現在、中国の国家主席、習近平との米中首脳会談が行われているトランプの別荘「マール・ア・ラーゴ」の一室で撮影された写真には、もちろんトランプ政権の意図が含まれています。

NYタイムズ紙やBBCの報道を参考に写真を少し加工してみました。

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写真をよく観察すると、右上隅に追いやられたバノンをテーブルの中央に陣取るクシュナーが鋭くにらみつけています。これはバノンがNSCから外されたにもかかわらず、シリア空爆という重要なブリーフィングに相変わらず顔を出していることに対するクシュナーの怒りとも受け止めることができます。

「バノンよ、出て行け」というのがこの写真に隠されたトランプのメッセージなのかもしれません。

さらにバノンの盟友である補佐官・上級顧問ミラーは顔の一部が他のメンバーの影に隠れる有様ですが、NYタイムズ紙は「ミラーはまだ、大きな影響力を保持している」と分析しています。前共和党全国委員長のプリーバスはオバマケア(医療保険制度改革法)の代替法案に関して共和党内の調整に失敗し、責任を問われています。

写真左手のスクリーンを通して副大統領ペンス、国防長官マティス、統合参謀本部議長ダンフォードがブリーフィングを行っています。3人の姿が見えないのはそのためです。

写真をご覧になられた皆さんの中には2011年に国際テロ組織アルカイダ指導者ウサマ・ビンラディンを殺害した際の前大統領オバマのホワイトハウス作戦室の有名な写真を思い出された方も多いのではないでしょうか。あの時は国務長官ヒラリー・クリントンら2人の女性が写真に映っていました。

今回はトランプの長女イヴァンカの長年の友人で、ゴールドマン・サックス出身の補佐官兼上級顧問(経済イニシアチブ担当)ディナ・パウエルが写真(右端)に映っている唯一の女性です。パウエルはブッシュ(子)政権時代に人事担当ディレクターを務め、その後に教育・文化担当の国務次官補に起用されています。

NYタイムズ紙はパウエルのことを「NSCのライジングスター」と表現しています。中東政治の繊細な文脈も理解していることから、マクマスターを支える次席補佐官のトップに就任するというウワサも流れているほどです。

他の特徴は、米中首脳会談のためとは言え、経済閣僚がたくさん写真に含まれていることです。商務長官ロス、財務長官ムニューシンは普通なら国家安全保障に関するブリーフィングには顔を出さない人たちです。

マクマスターの前任である国家安全保障担当大統領補佐官フリンが就任前にロシアの駐米大使とロシア制裁問題について話し合った疑惑により在任3週間で辞任に追い込まれたことで、トランプ政権内の政治力学は劇的に変わったようです。

クシュナーはゴールドマン・サックスなど金融出身の政権幹部と近く、軍関係者もクシュナーとの関係構築を急いでいると報じられています。イヴァンカも無給で政権に参加し、トランプの信頼が厚いクシュナーは今や「影の国務長官」(NYタイムズ紙)、「全分野の長官」(CNNテレビ)と呼ばれています。ホワイトハウスのトランプ一族支配はますます強まっています。

(おわり)