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イギリスの元首相に小児性愛者疑惑 EU離脱にも影響

木村正人在英国際ジャーナリスト
元首相ヒースの小児性愛疑惑を伝えるサンデー・メール紙の1面

1970~74年にイギリスの首相を務めた保守党の故エドワード・ヒース氏(1916~2005年)が小児性愛者だった疑惑が浮上しています。30人以上が被害を訴えています。

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英大衆日曜紙サンデー・メールが1面のスクープとして報じました。6月に疑惑に関する報告書が発表される予定だそうです。数年前に数人から英南部ウィルトシャーの警察署に被害届が出されましたが、容疑者が元首相という事の重大性からもみ消されたと言います。

「ヒース元首相は車を運転したことがなく、いつもお付きの警察官が車を運転していた。犯罪には関与できない」という証言もありますが、元首相は車を持っていました。運転免許証や車を運転している写真も証拠として紙面に掲載されています。

元首相の小児性愛疑惑については2015年、英BBC放送で人気を集めたTVパーソナリティー、故ジミー・サビルの小児性愛事件を受けて捜査が始まり、「針葉樹作戦」と名付けられました。

以前に浮上した元内相らの小児性愛疑惑が全くデタラメだったことから、元首相への捜査は即刻中止するよう圧力がかかりました。

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しかし、多くの被害は、使われた名前や場所、内容が共通しているため、捜査に当たった警察署長は「偽情報ではない。120%間違いない」と確信しているそうです。

ヒースは欧州経済共同体 (EEC) 加盟交渉に責任者としてかかわったことから「ミスター・ヨーロッパ」として有名です。1970年の総選挙で勝利して首相に就任。イギリスは73年に欧州共同体 (EC)加盟を果たします。

74年の総選挙に敗北し、退陣。保守党党首を後にイギリス初の女性首相になるマーガレット・サッチャーに譲ります。オルガン奏者としての教育を受けたヒースは音楽をたしなみ、生涯独身を通したことから「同性愛者」「無性愛者」といううわさが立ったこともあります。

小児性愛疑惑が本当なら大変なスキャンダルです。「ミスター・ヨーロッパ」の名声が地に落ちれば、保守党内でイギリスの欧州連合(EU)離脱圧力はさらに強まる可能性があります。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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