英国の長者番付

金融危機も経済危機もなんのその、英高級日曜紙サンデー・タイムズの「リッチ・リスト2015（英国の長者番付2015年版）」によると、英国の資産家トップ1千人の資産額合計は、世界金融危機の影響が出た2009年に比べ、倍以上になった。

英国人の平均年収が２万５千ポンド（約450万円）。一方、長者番付のトップはウクライナ生まれの実業家レン・ブラヴァトニク氏。音楽やメディアなどに投資しており、資産額は131億７千万ポンド（約２兆3774億円）。

普通の英国人が飲まず食わず、52万6800年働いてやっと手にできる金額だ。長者番付（１千人）に入るためには１億ポンドの資産が必要で、普通の英国人は一銭も使わずに４千年働かなければ貯まらない。もう格差を超え、うらやましいというより別世界だ。

国際都市ロンドンの強み

サンデー・タイムズ紙によると、世界中のカネ持ち、実業家、起業家、芸能人、映画監督、ファッション業界のカリスマが英国というよりロンドンに集結している。

国際都市ロンドンの強みは（１）英語を話す（２）地理的、歴史的にアジア、中東、アフリカ、欧州、米州へのグローバル・リーチが利く（３）弁護士、会計士、金融・保険市場など人材と制度の国際インフラが整っている――ことだ。

さらに法人税の標準税率はこの4月から20％に引き下げられ、最高の所得税率は年間所得15万ポンド超で45％（2012年度まで50％）。税制が非常にシンプルで、わかりやすい。

それに比べ、米国の連邦法人税率は15～39％（８段階）、さらに州別の法人税率が加わる。カリフォルニア州の場合、国と地方を合わせた法人税率は14年3月時点で40.75％(日本の財務省資料)。

長者の資産総額は09年の２倍以上

英国の長者１千人の資産額合計は5470億ポンド。09年の2580億ポンドに比べて２倍以上（112％増）に膨れ上がった。英国の国内総生産（GDP）の3分の１に達している。この1年は資産の増え方（前年比5.4％増）がそれまでの年に比べ、一番多かった。

長者番付の最低ラインは09年に比べ4500万ポンド上昇、昨年に比べても1500万ポンドも上がっている。

昨年9月にベニスで結婚した米俳優ジョージ・クルーニーとアマル夫妻は１億2100万ポンドで初の長者番付入り（790位）。英南部バークシャー州に1千万ポンドのマナーハウス（元荘園領主の邸宅）を所有している。

英国のビリオネア（資産10億ポンド以上）は117人（前年比12％増）で、資産額合計は3251億3千万ポンド。アイルランドや南アフリカのGDPを上回る。米国を除くと、英国は最も資産家が多い国になっている。

米国のビリオネアは384人だが、人口比では英国のビリオネアは54万7千人に1人なのに対し、米国は83万３千人に１人。ロンドンのビリオネアは80人で、資産額合計は2580億ポンド。パリは21人。ロンドンはビリオネアの人口密度が高い都市だと言える。

英国経済は外国資本と移民なしでは回らない。エリザベス女王の資産額は３億４千万ポンドで302位、初めてトップ300に入らなかった。

（おわり）