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マグナ・カルタってご存じですか?

木村正人在英国際ジャーナリスト

まず、アンケートに答えてくださるとうれしいです。

今年は英国でマグナ・カルタ(大憲章)が発布されてから800周年に当たるため、英国の世論調査会社Ipsos MORIが1月6~20日にかけ、世界23カ国でアンケートを実施した。

筆者はその結果に非常に驚いたので、MORIの質問内容を少し省略して簡易アンケートを行ってみることにした。

MORIのアンケートに回答したのは各国16~64歳の500~1千人で、計1万7061人。日本からも1003人が答えた。

「マグナ・カルタについて聞いたことがありますか?」という質問には、英国の79%、米国の65%が「はい」と回答した。日本でマグナ・カルタを知っている人はわずか23%にとどまった。

英国のジョン王は1215年、国王の権限を制限することを求めた諸侯たちの要求を受け入れ、マグナ・カルタに調印した。貢納金の徴収や司教の選任、司法、地方行政に関する国王の専制を制限した。

マグナ・カルタは英国憲法の土台となり、権利請願(1628年)、権利章典(1689年)とともに英国憲法の三大法典と称される。

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MORIの創設者ロバート・ウースター氏が数カ月前、林景一・駐英日本大使夫妻と懇談、「実はマグナ・カルタを知っているか、日本でアンケートを実施している」と伝えた際、林大使は「たくさんの人が知っているはずです」と答えたという。

しかし、知っている人は予想外に少なかった。ウースター氏は筆者に「日本の教育は充実しているだけに結果は意外だった。マグナ・カルタは学校で教えられていないんでしょう」と語る。

マグナ・カルタはまだ、ましだ。日本人は韓国人の20%や中国人の18%よりマグナ・カルタを知っている人は多い。

がしかし、日本最大の同盟国である米国の独立宣言(1776年)に関するアンケート結果にはひっくり返ってしまった。

米国は83%、英国は74%、日本は45%。中国人(65%)の方が米国の独立宣言についてより多く認識しているのだ。

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さらに驚く結果がある。国連の世界人権宣言(1948年)を知っていると答えた日本人は25%。韓国人や中国人の45%を大幅に下回っている。

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旧日本軍慰安婦をめぐる1993年の河野談話以降、日本は歴史教育をめぐり、いびつな形で紛糾し続けてきた。「日本固有の伝統や文化」「日本の歴史」を大切にするのは良い。

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MORIのアンケートでも日本人(1003人回答)の多くが「源氏物語」62%、福沢諭吉の「学問のすすめ」62%、「平家物語」56%を知っていたが、マグナ・カルタや米国の独立宣言、世界人権宣言について知っている人は世界平均を大きく下回った。

日本はもう一度、世界に向けて目を開くべきだ。曽野綾子氏のコラムを取り上げるまでもなく、「失われた20年」がもたらした内向き、後ろ向きの弊害はいろんな形で噴出し始めている。(グラフはいずれもIpsos MORI/MC800thより)

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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