読者予想「ギリシャはユーロ圏離脱」5割超 注目のユーロ圏財務相会合、行方はいかに!?
水と油の関係
欧州の未来は余談を許さない状況になってきた。ドイツの堅物ショイブレ財務相と反緊縮の刺客、ギリシャのバルファキス財務相では肌合いが違いすぎる。2人のキャラクターは水と油だ。
ギリシャは19日、ユーロ圏に6カ月の融資延長を正式に申請した。これを受けて20日、ブリュッセルでユーロ圏財務相会合が開かれ、ギリシャの延長申請を検討する。
ギリシャがドイツに仕掛けたチキンゲームは吉と出るか、凶と出るか。融資延長の申請が拒絶されれば、ギリシャは資金が枯渇し、ユーロ圏離脱に追い込まれる恐れが高まる。
ドイツはギリシャが離脱してもユーロ圏への悪影響は限定的と高をくくっているようだが、果たしてそうだろうか。
筆者に言わせれば、ユーロ圏で3180億ドルもの経常黒字を積み重ねているのに、意地の張り合いからギリシャ離脱という事態を招き、世界経済を不安に陥れるのは常軌を逸している。傍迷惑もいいところだ。
ギリシャが融資延長を正式に申請する前、ドイツの投資銀行、ベレンバーグ銀行のチーフエコノミスト、Holger Schmieding氏はロンドンにあるシンクタンク、英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の講演で「ギリシャのユーロ圏離脱の確率を35%」と推定してみせた。
そのSchmieding氏は19日夜、英BBC放送の報道番組ニューズナイトに出演し、ギリシャの延長申請について「同国の前政権が署名した財政再建と構造改革の計画を実行しない限り、ドイツは延長に応じない」との見方を示した。
やはりギリシャはユーロ離脱か
筆者の「ギリシャはどのシナリオで動くと思いますか?」という簡易アンケートに読者1098人が回答してくださった。どうもありがとうございます。その結果は次のグラフの通りだ。
「ギリシャがヒザを屈して、ドイツの言う現行支援の延長をのむ」139件
「ドイツを中心とした欧州『北部』連合がギリシャへの締め付けを緩める」241件
「チプラス政権が崩壊に追い込まれ、テクノクラート内閣が誕生。再び総選挙となる」160件
「互いに譲らず、ギリシャの金融機関が破綻。ギリシャはユーロ圏離脱を余儀なくされる」558件
各メディアの報道によると、ギリシャはかなり譲歩している。
(1)ギリシャはすべての債権者への返済義務を履行する
(2)欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)の支援プログラムの法的拘束力を認める
(3)欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、IMFの3者による「トロイカ」の監視を受け入れる
しかし、支援の条件である国内総生産(GDP)比で3%相当の基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字という目標について、ギリシャのチプラス首相は1.5%に引き下げることを求めている。50%を超える若者失業率を考えると当然の要求だろう。
これに対し、ドイツ財務省は「ギリシャの提案は中身を伴っていない」とけんもほろろだ。
筆者の予想では、ドイツはチプラス政権を「調教」するため、もう少しいたぶる腹づもりだろう。言うことを聞かなければギリシャのユーロ圏離脱もやむなしと考えている。
しかし、フランスやスペイン、イタリア、さらに欧州委員会のユンケル委員長はギリシャ側に立って仲裁に動き、最後は何らかの妥協が図られると筆者はみる。
欧州は、政府間の利害を調整する場となっているEU首脳会議やユーロ圏財務相会合より、連邦主義的な色彩が強い欧州委員会や欧州議会に権力の軸足をシフトしていくべきだ。
欧州委員会や欧州議会が、ミゾが深まるドイツなど欧州「北部」連合と欧州「南部」連合のバランサーになれなければ、欧州統合という未完のプロジェクトはいつかは崩壊する。
ドイツには1924年、29年、32年、53年、欧州の仲間たちに債務再編に応じてもらった歴史を思い起こしてほしい。排除の論理ではなく、欧州の結束を強めるため包容力のあるリーダーシップを発揮すべきだろう。
(おわり)