世界経済は加速、アベノミクスは減速
世界銀行は15日、世界経済見通しを発表した。世界経済が昨年の実質2.4%成長から今年は3.2%に加速、「金融危機から5年、世界経済はようやく峠を越した」と宣言した。一方、日本経済は1.7%から1.4%に減速すると予測している。
世界経済と日本経済の成長率はー。
○○ 2012年 13年推定 14年予測 15年予測 16年予測
世界 2.5% 2.4% 3.2% 3.4% 3.5%
日本 1.9% 1.7% 1.4% 1.2% 1.3%
安倍晋三首相の経済政策アベノミクスの効果について、ロンドンで記者会見した世界銀行のアンドリュー・バーンズDevelopment Prospects Groupマネージャーに聞いた。
バーンズ氏いわく
「アベノミクスは明白な変化をもたらした。円安が輸出を促進した以上に重要なのはビジネス部門や家計のセンチメントが変わったことだ。しかし、少し残念なのは成長戦略の第3の矢だ。持続可能な成長には構造改革が不可欠だ」
日本のインフレ率の予測はしていないとする一方で、「アベノミクスはデフレ脱却に一定の成功を収めている。ポジティブな進展だ」と評価した。
日本の成長率予測が減速していることについては「金融セクター、農業分野、労働市場などの構造改革に期待している」と話した。
今回の世界経済見通しの大きな特徴は、日米欧の先進国経済の回復が顕著になり、新興・途上国とともに成長の第2のエンジンになってきたことだ。
米国のプラス成長は2年半続いている。問題は米連邦準備理事会(FRB)の出口戦略だ。「量的緩和第3弾(QE3)の縮小についてFRBと市場のコミュニケーションはうまくいっている」(バーンズ氏)。
最も起こりうるシナリオで世界の金利は16年半ばまでに3.6%に到達。途上国への資本流入は途上国のGDP(国内総生産)比で昨年の約4.6%から16年には4.1%に減少すると予測している。
しかし、長期金利が1%上昇した場合、途上国への資本流入は数カ月にわたって50%以上減少、中所得国の成長率を0.4%押し下げる。
長期金利が2%上昇した場合、途上国への資本流入は最大で80%減少、中所得国の成長率を0.6%押し下げると想定している。
タイやインドネシア、マレーシア、ベトナムは米国の出口戦略による影響を避けられないが、中国は「影響されない」(バーンズ氏)という。その理由は株式などへの資本流入が少ないためで、中国の成長率は今年7.7%。15~16年は7.5%と予測している。
ユーロ圏は緩和策に転換したわけではないが、追加の財政緊縮策がやわらげたことがプラスに働いている。日米欧の需要が増えることで途上国の輸出も促進される。
世界の貿易は昨年の3.1%成長から今年は4.6%、15~16年は5.1%拡大する見通しだ。
一方、エネルギーや食料の価格は、ピーク時の11年前半から13年11月にかけ、それぞれ9%、13%下落した。金属や鉱物は30%も急落した。
世銀のバーンズ氏は途上国の経済成長率が世界金融危機前の03~07年に比べて2.2%も下回っていることについて「持続不可能なターボチャージャー型の経済ではなくなった証拠で、心配する必要はない」と分析した。
しかし、ダウンサイズ・リスクが世界経済の回復をおびやかす状況は続くという。2年目を迎えたアベノミクスは4月の消費税率引き上げを控え、構造改革を進められるか、これから正念場を迎えそうだ。
(おわり)