Yahoo!ニュース

「出口なきアベノミクス 目先2年はバイ・ジャパン」英巨大ファンド創業者が読む世界羅針盤(10)

木村正人在英国際ジャーナリスト

日米欧で異例の金融緩和が続く。世界経済は危機を脱し、回復軌道に乗ったのか。英国の長者番付に日本人としてただ1人、名を連ねるロンドンの巨大ファンド「キャプラ・インベストメント・マネジメント」共同創業者、浅井将雄氏がリーマン・ショックから5年を経た世界経済を展望する。

――安倍晋三首相の経済政策アベノミクスの見通しは暗くなっているか

「答えはイエス・オア・ノー。目先2年であれば100点満点のスタートを切っている。ここまではそれ以上かもしれない。市場は成長戦略である第3の矢が経済を浮揚させるかということを期待はしているが、それによって劇的な効果があるとは思っていない」

「安倍首相が経済をうまく運営しているように見えるが、2011年の東日本大震災で日本経済の損失は20兆円。それを埋めるために震災予算18兆円、安倍政権になって補正予算10兆円が組まれた。消費税を上げるために6兆円と全部で34兆円の財政を出した。34兆円は日本経済の7%に当たる」

「2011~13年の経済成長はフローの数字で見ると、7%お金を出して5%ぐらい成長している。極端に言うと出した分は必ず効いてくるので、安倍首相には失礼だが、他の人がやっても経済成長はある程度実現できた」

「安倍首相がうまくやったのは財政を出すタイミングに加えて日銀に金融緩和を強くコミットさせ、期待の経済学に働きかけることによって資産浮揚効果を高めたという点においてアベノミクスは成功している。120点だ」

「私はアベノミクスの次の2年間の方向性については及第点を出したいと思う。安倍首相が思っているより日本経済は成長すると確信している。次の2年、3年、日本株、不動産についてすごくポジティブに思っている」

「変化はチャンスであると思っているが、その変化に対して大きな一石を与えてインパクトを増幅させたということでアベノミクスはとりあえず大成功。これからの2年間は成功が続く。『Buy Japan(日本買い)』というスタンスで今は走って行っていいのかなと思う」

――その後は

「黒田東彦日銀総裁の『出口は考慮するが今は考えず、とりあえず走ってゆく』という発言があったが、日銀がやっている大量の流動性は異常事態。日銀だけがアベノミクスのドライバーだ。財政は出すが、日銀が90兆円を引き受けたようなものなので、2年間ぐらい突っ走れる。しかし、出口がない戦いを行ってしまったと思っている」

「今までの日銀と、過去の米連邦準備制度理事会(FRB)も含めて何が違うのか。日銀は今、日本経済に対して大量の流動性をばらまいている。今までの日銀もゼロ金利政策をやってきたじゃないか、量的緩和をしてきたじゃないかという議論がある。しかし、黒田総裁がやっているのは、日銀が自己資本を大きく超えるリスクを決断してとっているということだ」

「白川方明前総裁も大きな緩和、アセット・パーチェス・プログラム(資産買い取りプログラム)を組んで大きく国債を買っていったが、彼は最初の大量買いが3兆円だった。2年間限定で、政府に言われて渋々3年にした。黒田総裁がやっているのは、1年から40年まですべての国債を毎月7兆5千億円ずつ12カ月間で90兆円買っていってバランスシートを270兆円にするという政策をしている」

「日銀のデューレーション(資金の平均回収期間)が今2~3年というところが、そのうち7年、8年になってくる。8年間国債をホールドするリスクを抱えている。インフレに与える一番大きな影響は公共料金と税金。日本もインフレを作り出すことは可能だと思う」

「政府は2%のインフレターゲットを設定しているが、消費税を上げて公共料金を上げて行けば日本もインフレ国家にある程度はなる。もちろん構造的な問題があって潜在成長率が低くなっているので、インフレ率は高くなりにくいが、公共料金の負担を増やすことによって疑似インフレが作れる。インフレは達成できるかもしれない」

「日銀はREIT(不動産投資信託)を買ったり、国債を買ったり、デューレーションを長くしたり。3年後ぐらいに、バランスシートがGDPの50%になってもやめることはできない。なぜか。やめる、手を緩めるだけでアベノミクスが終わってしまうからだ」

「アベノミクスは日銀の金融緩和、実態はそれだけがドライバーの政策なので、日銀が止めると言うと、円安だった基調が円高になり、流動性が枯渇してくる。国債は瞬間的に値段を落としてくる。国債の50%を日銀が保有しているという日が2018年には来る。要するに日銀が一手にリスクを吸収するスキームを築き上げていくのがアベノミクスだ」

「やめられない、やめるとアベノミクスが終わってしまう。こういうことを、おそらく日銀執行部は黒田総裁以下知っていると思う。考えたくないと思うが、それでもやっていかなければいけないところにこの政策の恐さがある。では今われわれは何をすべきか、日銀のサポートのもとに株を買って、不動産を買って、リスクをとる。いいチャレンジだと思う」

「2年、3年はそういう時代だと思う。すべての市場参加者が2年後、日銀が何をやるかを虎視眈々と見ている。一歩間違えるとアベノミクスも終わる。すべての鍵を黒田総裁が握っているが、それもそれほど長い間ではない」

――日本の政府債務はどうなるのか

「日本の債務はインフレで解消できる。1千兆円という現在の政府債務は日本が5%のインフレを維持すれば持続可能だ。国民が5%というインフレを甘受することによって政府債務を維持することができる。必ず誰かが負担しなければいけない。これは国民が負担することになる」

「その場合、国民1人当たりドルベースの国内総生産(GDP)を大きく減価させていく。世界的な経済として円ベースでは維持されるが、ドルベースでは苦しくなってくるかもしれないと言うのがアベノミクスの実態なのかもしれない」

「最終的にはインフレを受け入れながらレボリューションを起こしてゆく。つまりメタンハイドレードの商業化など画期的な変化があったり、ソニーがウォークマンを作ったように、また日本がディファクトスタンダードを握るような工業製品を世界に売り出したり、インフレを上回るような成長が可能になれば、5年でも10年でも、このマジックは成功する」

「しかし、その可能性はかなり低いと白川前総裁は言っていた。構造的な問題を打破するようなレボリューションを日本が起こせるか。エネルギーサイドなのか、工業製品サイドなのか。今年末ごろには10年債の金利が3%ぐらいになるというレポートも出ているが、私は真っ向から反対して今は『Buy Japan』だ」

――米国経済と日本経済の違いは

「米国の潜在成長率は2.5~3%と高い。人口も増えている。日本の場合、移民もいや、原発もいや、軍需産業はダメと言っていたら1千兆円の政府債務は消えない。日銀はもう時間を買っているという段階ではない。日銀が債務を買ってくれている間に、日本はチャレンジしなければ」

――米国の状況はそんなに良いのか

「やはり、シェールガスがアメリカのエネルギー構造を変えたことが鍵になってくると思う。オバマ米大統領は就任当初の勢いは完全に失ったが、それでも米国経済は腰折れしない。政府機関を止めても、今月の雇用統計20万人増。必ず失業率も7%切って、6.5%、6%まで行く。米国が6%まで行くと完全雇用と同じ。経済政策の結果は及第点。ただオバマ大統領が何をしたかといえば何もしていない」

「やはりシェールガスとFRBの量的緩和が救ったと思う。FRBが大量の債務を買って時間を買っている間に、シェールガス革命が起きた。米国が純エネルギー輸出国になる可能性もなくはない。FRBがチヤレンジしている間に産業がついてきた。グローバルには米国企業はどんどん強くなっている」

――バーナンキFRB議長の後継は、サマーズ元財務長官ではなく、イエレンFRB副議長に決まったが

「米国はたぶん民主党と共和党の対立が戦後一番厳しくなっている。ティーパーティー(茶会)派が力を持って妥協をしなくなってきている。ひと昔前なら民主党も共和党もちゃんとヘッドが話し合って握手して大統領の下で動けたのに、今はシリアに軍事介入するかどうか、100%大統領に権限があるものですら執行できなくなってきた」

「一昔前のワシントンとは大きな違いがある。誰が権力を持っているのか。昔は大統領が『米国は世界の警察官』と言っていた。今は『世界の警察官ではない』と言っている。かなり状況は変わっている」

――サマーズはタカ派(金融引き締め派)、イエレンはハト派(成長重視)と言われている

「イエレンは女性が初のFRB議長になるということで、超党派女性議員もサポートしている。超党派というのは今の状況ではなかなかつくれなくなっている。今回の場合、オバマ大統領が先にサマーズというカードを出そうとした。サマーズに対してみんな拒絶反応を示した」

「そのあと、共和党・民主党双方が歩み寄りやすいイエレンが出てきた。政策以外で多分に米国の政治的な分裂がもたらした影響が大きい。金融政策ではサマーズの方がイエレンよりタカ派なのは間違いないが、別にそんなことで選ばれているわけではない。タカ派かハト派か、どっちを選ぶという協議ではなくて、オバマ大統領に一泡吹かせようと『サマーズ、ノー』という声を出した。サマーズがタカ派だから拒否して、イエレンがハト派だから残したという議論は重要視されていないと思う」

――イエレンという選択は正解か

「サマーズより出口戦略を遅らせるということで、目先の世界経済に対する不透明感が先送りされた。米国の財政にとっては、量的緩和は早い段階でやめた方が良いんでしょうし、失業率が6%になるのならもう量的緩和を続ける必要はない」

――出口戦略の時期は

「米国は全部問題が片付いたわけではなくて、『財政の崖』の問題が残っている。来年2月にはまだ財政の崖の問題が出てくる。まだ片付いたわけではない。また政府機関が閉鎖されるかもしれない。米国がデフォルト(債務不履行)するとは思わないが、テクニカルデフォルトして一部利払いを停止した時の世界における金融混乱の度合いというのはリーマン・ショック並み、いやそれ以上かもしれない」

「米国は大きな原子爆弾を懐に抱えたまま、4カ月間はボタンを押さないよと言っているだけなので、落とせない爆弾、要するに核と同じですよね。300兆円も世の中で担保に使われているものがデフォルトするかもしれないと言われているのに、そんな爆弾を抱えながらギリギリまで交渉する集団ですから、本当に核の政策と非常に良く似ている。落とせない、じゃあ、落としてみろよ、とかそういう話し合いをしているので、それが来年2月からまた繰り返されるわけです」

「イエレンとか、サマーズとかもうあまり関係ない。ただ、米国の10年債金利が4%に上がった時に世界中に供給されていた流動性が、米国で十分利回りが取れるとなると大きな資金の戻しになる。経常赤字国で新興国に対する資本流入が止まって、資本流出に変わってくる」

「その逆バネが大きくて、実際にこの9月、10月にテーパーリングが議論されただけで新興国のパフォーマンスが悪くなった。本当に米国の出口戦略が始まるとなるとそれが起きる。しかし、出口戦略は先送りされたので、年末にかけては穏やかな市場になりやすい。日経は大納会で1万6千円以上なんだと個人的には思っている」

――中国の状況はどうか

「中国のポテンシャルは成長、人口も含め、800兆円を超えるGDPを持つ国が7%超で成長してくれていることが世界経済にとってものすごい恩恵であることは間違いない。今の共産党政権がうまくコントロールしていければいい」

「しかし、ここには弊害があって、コントロールしきれなくなると政治的に暴走するかもしれない。ただ、それ以外の視点で見た場合、国営・公営企業のあり方が問題を抱えている。特に地方政府が公営企業として持っている企業群がものすごく多く、鉄鋼、自動車も電化製品も作っている」

「それがオーバーキャパシティーになっている。鉄鋼というのは中国全土で作られていて、世界中に安価な鉄を輸出している。前は中国に需要があったので、中国でカバーできた。今はオーバーキャパシティーを輸出しているので、新日鉄住金とか神戸製鋼が廃炉に追い込まれた」

「しかし、中国の場合、国営だったり、公営の企業群が持っていたりするのでなかなか潰れない。収益が上がらなくなった鉄鋼を収益が上がる何かで埋め合わせている状態が地方全体に蔓延してくる。収益の共食いが中国国内で起きてきて徐々にそれが成長を止めて、巨大なゾンビ集団が出来上がる」

「成長企業だけが勝ち組になるのではなくて、全体がうまくいっていないところもどんどん大きくなって肥満になっていく形で膨れ上がっていく。シャドーバンキングの問題だけではなくて、政治形態、病巣まみれの巨大企業がどう変革を遂げていくのかは注目に値する」

「中国には日本の旧国鉄みたいなものがうじゃうじゃある。中国もそれを分割して良い例になっていくのか、処理が困難な国鉄になるのか。中国には国鉄が200も300もあるというイメージです。米国にも英国にも国鉄みたいなものはもうない。ゾンビ企業が中国には200も300もある」

「それがどう処理されるのか。今はシャドーバンキングに注目が集まっているが、シャドーバンキングは先進国も経験した。日本の住専はまさにシャドーバンキングだ。金融バランスシートの調整も経験している。200も300もある国営・公営企業、第三セクターをコントロールするノウハウも経験も先進国にはない。ここが私の考える中国最大の問題点だ」

――欧州の単一通貨ユーロ圏では欧州中央銀行(ECB)が主要政策金利を史上最低となる0.25%に引き下げた。欧州では、不良債権問題がくすぶっているが

「不良債権金額についてはストレステストを何度もしている。実際市場でつかんでいる数字は明らかになっていて、次のストレステストによって大幅に悪くなるわけではない。ストレステストの新たな実施によって不良債権の額が増えるというより、今までは不良債権やソブリン(国債)のリスクだけをピックアップしていたのを、ECBによるファンディングに依存している銀行についてそれを精査するという条項が入っている」

「銀行のバランスシートはまだオーバーローンの状態が欧州全体で続いているので、オーバーローンをどこまで縮小していくかというゲームがストレステストの後にも続いていく。例えば日米欧3極を比べると、日本は預金100に対して貸出が70、米は預金100に対して貸出が85から90の間、欧州は預金100に対して貸出が108から110となっている。オーバーローンになっているところは先進国では欧州だけ」

「もちろん日本は1990年、バブルの時は超オーバーローンだった。その間、不良債権になって経済が停滞してくると、当然、不良債権に対してファンディングしなくてはいけない問題が出てくるが、ファンディングがしきれない。預金がオーバーになっている場合は容易にファンディングできるが、預金よりも貸出があって、その出ている分が不良債権になって、誰かがファンディングし続けないといけない」

「このファンディングをしているのがECBだ。それに頼っているのは問題があるのではないかというのを当局、市場が問うている。オーバーローンが悪いわけではない。預金が100で貸出が110でも、適正な経済成長率があってインフレがあるとオーバーローンでも貸し出しの部分がインフレによって翌年になると減価してくる」

「経済成長によってオーバーローンは調整されるが、低成長並びにデフレに見舞われ、不良債権が増大した場合、ファンディングに支障をきたす。要するに誰かがファンディングしないと不良債権はカバーできない。ECBは注意深くファンディングの事故が起きないように実行している」

「ECBが漸進主義を取っていて抜本的な解決ができていないので、次の5~10年間にわたって低成長に見舞われる可能性が高いと思っている。景気成長による不良債権の減少というドライブはない。早い段階で銀行セクターのバランスシートを改善、縮小してゆく手助けが必要だ」

――公的資金でということか

「公共資金だけで全部がカバーできるサイズではもはやない。国家の債務も増えている。公的資金プラス民間の流動性を生かした救済スキームがこれから重要になってくる。例えばドイツの州立銀行はかなり淘汰された。アイルランドは銀行の統合が進んだ。イギリスもRBSやロイズに多額の公的資金を投入した。国によって大きく対応が違ったことで、またひずみができた。金融機関の南北格差を助長させる結果になった」

――欧州も日本と同じ失われた20年を経験するか

「日本の場合は違う問題がある。金融機関のバランスシート調整だけが日本のデフレの真因ではない。経済に大きな影響を与える人口減少や世代間のギャップがあったり、移民が入ってこないなど、複雑な構造問題を日本は抱えている。それに対して欧州は国境をオープンにしているので、人口の弾力性が日本に比べると何倍も強い」

「欧州は欧州という域内で国を開き、ユーロを作った。その弊害もあるが、日本とは違った道を歩んでいる。人口構成や高齢化に対応する面でも、人口にフレキシビリティがあるので非常に将来性がある。日本の場合は島国なので人口や高齢化に対する手法がなかなか見つけにくい」

「マインドもなかなか上がりにくいという問題を日本が抱えている。ただ、EU(欧州連合)の域内経済2千兆円近いGDPだが、金融のバランスシートを調整しなければならない。これは日本の『失われた20年』と似た状況だが、欧州の場合は抜本的な改革ができなくとも5~10年で、失われた20年にはならない可能性があると思う」

「一方、一つの方向でオープンにしたものが逆の方に動く可能性が次の10年、20年である。ユーロ圏離脱が続くなど、そうなると一度統合したものが分かれてしまえば、離れていく通貨が減価する可能性が高いので、ドイツ以外は、経済的ダメージは相当なものになる。1種の貨幣のデフォルトと同じこと。そうなれば日本よりもっと厳しい状況になる」

――世界経済の現状は

「基本的には世界の潜在成長率は3%を超えている。新しいフロー、富を生み出している。経済にはアップ・アンド・ダウンがあって、今はダウンではない。アップの過程に入っている。われわれには克服できない地球温暖化などさまざまな問題を長期的に抱えているが、今の方向をクラッシュさせないで走っていけば良い。そんなに悲観的ではない」

「ただ、中国のゾンビ企業爆弾より、目先は日本の債務問題という爆弾の方が大きい。中国は経済成長がある。7%の経済成長があったらごまかしが効く。中国が日本のように0%成長になったら本当に困る。膨れ上がった病巣がどんどん破裂していくからだ。欧州はくすぶっているからどこかが破綻すればすぐに影響がくる」

「日本の爆弾は、2年間は破裂しない。中国も病巣が破裂せずに、米国が『財政の崖』問題を乗り切って、欧州も0.5~1%ぐらいの成長に回復できるかもしれない。欧州の金融統合が上手くいって、バランスシート調整が進んで、これからの2~3年間、ECBのサポートの上に、米国や日本の金融セクターがバランスシートを買っていけばセーフだ」

――ロンドンでは建設ラッシュが起きている

「英国は、次は利上げという議論をしている。2015年第4四半期に利上げすることを市場は織り込み始めた。さらに海外からの資金流入が途絶えていない。それが大きな経済のドライバーになっている。そこに日本が目指すカギがあるのは間違いない。島国の英国は対岸に欧州大陸がある。島国の日本も対岸に中国がある」

「英国は自主独立の精神を貫きながら通貨も別にしたが、それは英国にとってはすごいリスクだった。マネーが英国を素通りしてしまうしかもしれないと言っていたのが、ユーロ導入後も逆に入ってきている。これは素晴らしい実験だ。英国は国をオープンにしながら成長を遂げた」

「近い将来日本で万が一政府債務が発散すると、現代の鎖国である資本規制を敷くことになる。そうなってしまうと日本はグローバルプレイヤーでなくなり、江戸時代のように鎖国をしながら国体を維持していく状態に陥ってしまう。中央銀行は一番国に近いところでクッションになりやすい存在だ。FRBも日銀も300兆円もリスクを取っている。誰かがリスクテイクをしてくれている間は、経済は成り立つ。日銀が全力で日本経済を支える動力源になっているうちに日本は官民一体で次世代の革新をおこす必要がある」

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

木村正人の最近の記事