「ミサイル発射」北朝鮮の非核化合意なしに6カ国協議に応じるな

北の核ミサイル能力は証明不足

北朝鮮がアメリカ本土に到達可能とされる移動式大陸間弾道ミサイル(ICBM)やグアムを攻撃できる中距離弾道ミサイル「ムスダン」(射程最大4000キロ)の発射準備を進めているとみられる中、アメリカの元国務次官補代理で英シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)のマーク・フィッツパトリック氏は14日、筆者の取材に「アメリカのオバマ大統領はこれまでの忍耐戦略を堅持し、北朝鮮が非核化に合意しない限り6カ国協議の開催に応じるべきではない」と強調した。

アメリカ国防総省傘下の国防情報局(DIA)が「北朝鮮は弾道ミサイルに搭載できる小型の核弾頭を開発した」と評価したことについて、フィッツパトリック氏も、北朝鮮は沖縄県の米軍嘉手納基地をとらえる中距離弾道ミサイル「ノドン」(射程1300キロ)に搭載できる核弾頭の小型化に成功していると同意した。

しかし、アメリカの他の情報機関はDIAと同じ結論に達していないため、クラッパー国家情報長官は「北朝鮮は核ミサイルに必要な能力を完全に証明したわけではない」と慎重な見方を示した。フィッツパトリック氏は「キーワードは『証明された(demonstrated)かどうか』だ。北朝鮮はまだ、ダミーの核弾頭を積んでミサイルの発射実験を行ったわけではない」と解説した。

裏を返せば、北朝鮮がダミーの核弾頭を搭載したミサイルの発射実験に成功した時、北朝鮮の核・ミサイル危機は新たなステージに入る。

新型ミサイル「KN-08」

2012年4月に行われた北朝鮮の軍事パレードで公開された新型ミサイルKN-08について、フィッツパトリック氏は「公開されたミサイルは模造だ。あの時点では開発中だったということだ。発射実験も行われていない」と述べた。

「KN-08はペイロード(積載量)1000キログラムで7500キロ以上は飛ばないと信じている。どんなエンジンを積んでいるかで1万キロ飛ぶことも考えられる」。1万キロ飛べば、米本土をとらえることができる。

「北朝鮮は旧ソ連からKN-08のエンジンとミサイルのデザインを入手したのは間違いない」。しかし、北朝鮮が旧ソ連の技術をもとに、信頼に足るICBMを開発するエンジニアリング能力を保有しているかどうかは専門家の間で見解が分かれており、フィッツパトリック氏は「KN-08が飛翔することを否定はできないが、実際に見るまでは信じない」との厳しい見方を示した。

ムスダンやKN-08に搭載できる核弾頭を北朝鮮が持っている可能性については、「ICBNについては、大気圏に再突入する際の振動や高熱に耐えられる核弾頭を製造するのは技術的に非常に難しい。ムスダンとKN-08の発射実験も行なっていない段階なので、まずあり得ないだろう」ときっぱり否定した。

その上で、フィッツパトリック氏は「北朝鮮がムスダンやKN-08の発射実験を行ったとしても一度だけなら、戦時に使えると確信できる十分なデーターを収集できるわけではない。しかし、実験に成功すれば、政治的には非常に大きな武器になる。北朝鮮は核の恐怖を広範囲に拡大することができる」との懸念を示した。

行動読みにくい金正恩

挑発をエスカレートさせる金正恩の「瀬戸際戦略」について、フィッツパトリック氏は「1994年の第1次核危機や、非武装地帯内のポプラの木を切ろうとした米兵2人を朝鮮人民軍が殺害した1976年の斧蛮行事件ほど深刻ではない。94年や76年は戦争になる危険性が大きかった」と比較した。

しかし、金正恩の「瀬戸際戦略」はこれまでとは2つの意味で異なるとし、「まず、北朝鮮は核兵器を保有している。核兵器に守られていると考えている北朝鮮が瀬戸際戦略をより危険な領域までエスカレートさせられると信じるかもしれない」と分析。

「初代・金日成や2代目・金正日はもっとひどい挑発を行ったが、過去のパターンが分かっていたので危機をどう克服すれば良いのかアメリカはもっと確信を持っていた。しかし、未知数の金正恩に率いられた北朝鮮の行動を予測するのは難しい」と述べ、「状況は以前ほど深刻ではないものの、リスクは増大している」との見方を示した。

忍耐戦略を堅持せよ

北朝鮮の体制崩壊を辛抱強く待つオバマの忍耐戦略はすでに破綻しているとの指摘については、「米韓軍事演習の規模を縮小して北朝鮮に挑発の口実を与えないよう緊張を弱めるなど、オバマは賢明に立ち回っている。こうしたことが中国に行動を促しやすい状況をつくっている。多くの中国政府高官がすでに北朝鮮の挑発行動にイライラしている。オバマ政権は、北朝鮮が非核化に合意しない限り、6カ国協議に応じないという基本方針を貫くべきだ」と、安易な対話路線を選択するべきではないとクギを刺した。

(おわり)