「気候危機」を生き残れるか?それは私たち次第~『気候戦士 ~クライメート・ウォーリアーズ~』公開~

「気候変動」から「気候危機」へ――。

地球温暖化や気候変動と言われてどこかピンと来なかった人たちにとっても、2019年秋はいよいよもってそれが現実なのだと思わざるを得ないエピソードに事欠きません。

スウェーデン出身のグレタ・トゥーンベリさんが国連本部で気候危機を涙ながらに訴え、グローバル気候マーチ(Fridays for the Future)と銘打って世界各地の若者たちが気候危機を止める具体的な政策や行動を求めて声を上げています。日本でも、過去最大級という10月の台風19号上陸に伴う甚大な被害を前に、気候変動が私たちの生活に本格的に影響を与え始めたことを実感した人たちも多かったはずです。

こうした中、気候変動を止めるために行動する活動家たちの挑戦に密着したドキュメンタリー映画『気候戦士 ~クライメート・ウォーリアーズ~』が、11月29日(金) からヒューマントラストシネマ渋谷などで公開されます。これまでに米国、英国、イスラエル、ハンガリー、ガーナなど10カ国で上映され、日本はアジアでは初の上映となります。

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「気候正義」をめぐる攻防と「気候活動家」たち

産業革命以降、温暖化効果ガスの増大で気温上昇が続いています。世界では、気温上昇に伴う海面水位の上昇や自然災害の頻発によって移民を余儀なくされる人々が増え、地球環境の汚染も深刻化の一途を辿っています。「気候変動」は「気候危機」と言い換えられるまでになり、緊急な対策が求められています。

にもかかわらず、世界第2位の二酸化炭素排出国である米国は、ドナルド・トランプ大統領の就任を機に、気候変動抑制に関する国際協定(パリ協定)からの脱退を宣言。一方で、アーノルド・シュワルツェネッガー元カリフォルニア州知事は、州知事時代に温暖化効果ガスは汚染物質だと認めさせるために米政府機関を提訴。国際会議などの場で、脱炭素と草の根運動の重要性を発信し続けています。本作品は、気候正義(Climate Justice)をめぐるグローバルな攻防を軸に、気候変動を止めるために多様なスタイルで行動する活動家たちの姿を紡いでいくものです。

パリ協定からの離脱を表明するトランプ米大統領 (c) fechnerMEDIA
パリ協定からの離脱を表明するトランプ米大統領 (c) fechnerMEDIA
国際会議でスピーチするシュワルツェネッガー元米カリフォルニア州知事 (c) fechnerMEDIA
国際会議でスピーチするシュワルツェネッガー元米カリフォルニア州知事 (c) fechnerMEDIA

ビジネス、アート、イノベーションで気候危機と戦う人たち

例えば、17歳の米先住民でヒップホップ・アーティストのシューテスカット・マルティネスは、気候変動に消極的な米政府を提訴するなど、若手の気候戦士の代表格として全米や世界各地の気候変動防止アクションの先頭に立っています。

気候変動防止運動のリーダー、シューテスカット・マルティネス  (c) fechnerMEDIA
気候変動防止運動のリーダー、シューテスカット・マルティネス  (c) fechnerMEDIA

科学者であり、母親であり、ユーチューバーでもあるジョイレット・ポートトレックは、自身のユーチューブチャンネル「座っていないで、行動しよう」で、気候変動を止めるための行動をユーモラスに視聴者へアピールしています。

Don’t Just Sit There Do Something (Youtube)

亡命先のドイツで再生可能エネルギーのコンサルティング会社を創業し、欧州各地で再生可能エネルギープロジェクトを成功させている、元イラン難民のアミール・ロガニ。農業で発生するわらを使ったペレット発電の実用化にこぎつけた、ドイツの発明家エディ・クラウス。作品に登場する彼らのような「気候戦士」に共通するのは、次の世代のために気候変動を止めようと、自らの強みとアイデアをもって力強く行動し続ける情熱です。

元イラン難民の再エネ起業家、アミール・ロガニ (c) fechnerMEDIA
元イラン難民の再エネ起業家、アミール・ロガニ (c) fechnerMEDIA

本作品を手掛けるカール・Aフェヒナー監督自身も、そんな情熱を持ち合わせる気候戦士の一人でもあります。10年間の軍隊生活を経て、25年以上にわたって持続可能な社会をテーマにしたドキュメンタリー映像を制作。初の監督作品となった『第4の革命』(2010年)では、ドイツにおける再生可能エネルギーによる社会変革の動きを追った内容が国内外で反響を呼びました。

カール・Aフェヒナー監督 (c) fechnerMEDIA
カール・Aフェヒナー監督 (c) fechnerMEDIA

そんなフェヒナー監督は、本作品にどのようなメッセージを込めたのでしょうか。11月中旬に東京都内で行われたジャパンプレミア上映会後に話を聞きました。

「気候変動を止めよう!作品は私からの招待状」

―ー本作品の最大のメッセージは何でしょうか?

気候変動問題を解決するために何ができるのか、誰と、どのようにコラボレーションすればいいのかについて、個人として、組織としてできることを考えてほしい。気候変動についてオープンに考えてもらい、皆さん一人ひとりが気候戦士になってほしいです。戦士と言っても、武器を持って戦えと言っているわけではありません。強い意志とパワーをもって幸せと希望を目指して行動すればいいのです。この作品は、気候変動を止めるために行動しようと呼びかける、私から皆さんへの招待状です。

ーー監督が『第4の革命』でテーマに取り上げた再生可能エネルギーは、経済合理性があって今や世界じゅうに広がってきました。一方で、気候変動というテーマは原因が複雑多岐にわたります。行動しようと言っても、何をすればいいのか立ちすくんでしまう時があります。

個人的な話になりますが、私は国内での移動では飛行機を使わないようにしました。自宅の屋根に太陽光パネルを置き、5年ほど前からは電気自動車に乗り換えました。さらに、ドイツでは年間に家畜用牛の30%が過密な環境での飼育などによる病気で死亡していることを知り、肉食もやめました。

気候変動の原因に関わる分野は、実に多岐にわたります。みんな問題を知っていますし、みんな解決策を探しています。まずは問題の中身を感じてみて、その上で何をすべきか決めることが大切です。

ジャパンプレミアで客席からの質問に答えるフェヒナー監督(筆者撮影)
ジャパンプレミアで客席からの質問に答えるフェヒナー監督(筆者撮影)

ーー日本では、東日本大震災後の福島での原発事故を経験したにもかかわらず再エネの拡大が遅いですし、世界でムーブメントになりつつあるグローバル気候マーチも日本での盛り上がりはいま一つです。上映会の会場でも「日本はもう変えられないのではと思ってしまう」という声が聞かれましたが…。

他の国に比べて歩みが遅いと感じるかもしれませんが、10年前を思えば日本でも再エネの導入ははるかに進みました。それぞれの国や文化によって変革のスタイルは異なります。大切なのは、あきらめないことです。

私が影響を受けた1990年代の社会学の研究では、社会のあらゆる階層を代表した人口の5%が行動すれば物事は変わるとしています。革命は最初マイノリティから起こりますよね。グローバル気候マーチも、参加してみることで気候変動に心を痛めているのは自分ひとりではないと感じることができる。これが、あきらめない上では大切なことです。

私の次の作品のタイトルは『Friday』です。若者たちによる気候変動を止めるための取り組みを追ったものです。彼らに燃え尽きてほしくない、あきらめてほしくないから私も撮り続けます。

フェヒナー監督 (同)
フェヒナー監督 (同)

パリ協定での目標を達成するために、国際社会は2020年から10年ごとに温室効果ガスを10%ずつ削減していかなければなりません。にもかわらず、世界の温室効果ガスの排出量は過去最高に達してしまいました(国連環境計画2018年報告)。

太陽光、風力、水力、バイオマス、水素エネルギーなど、再エネ100%にするための技術は揃っています。作品の最後のナレーションを、皆さんはどうお聞きになるでしょうか。

“気候危機を生き残れるかどうかは、私たち次第だ”

◆『気候戦士』は、2019年11月29日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほかでロードショー

『気候戦士』オフィシャルサイト

http://unitedpeople.jp/climate