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再エネで地域をけん引するリーダーたちから学ぶ ~事業化ノウハウ掲載の映像教材・小冊子を公開~

木村麻紀フリージャーナリスト(SDGs、サステナビリティ)

太陽光、風力、地熱、バイオマスといった環境への負荷の少ない再生可能エネルギーを使って、環境に配慮したビジネスや持続可能な地域づくりを行う人材を育てるサステナブル・ローカル・ビジネススクール「まちエネ大学」。経済産業省資源エネルギー庁主催で2013年度から始まったまちエネ大学は、4年間で全国23の地域別スクールを開講。これまでに全国で約700人が受講し、事業計画作成の中心的役割を担った事業構想リーダー約100名を輩出した。スクール終了後はそれぞれの地元に戻って、事業化に向けて奮闘している。

このまちエネ大学の卒業生を中心に、全国で再エネによって地域をけん引するリーダーたちがなぜ事業化を思い立ち、どのようにして事業化に向けて取り組んで成果を上げてきたかを伝える映像教材と小冊子が公開されている。

再エネ×地域資源・課題=地域活性化の数々

このうち小冊子「Green Power People〜再生可能エネルギーで地域をけん引する挑戦者たち〜」では、まちエネ大学卒業生を含め、太陽光、地熱(温泉熱)、バイオマス、小水力発電について地域で事業化した6名の「再エネローカルリーダー」たちの事業内容を紹介。その上で、事業を成功に導いたいわゆるKFS(Key Factor of Success)を提示することで、これから地域で同様の事業を行いたい人たちにとって参考になるようにという意図で制作された。

まちエネ大学の卒業生の一人、宝塚すみれ発電・代表取締役社長の井上保子さんは、兵庫県宝塚市内で市民出資による太陽光発電(約11kW)を設置したのを皮切りに、「固定価格買取制度」(FIT)も活用しながら、これまでに太陽光発電を6号機まで設置、運営している。この中には、農家の高齢化や後継者不足に悩む同市北部・西谷地区で、農地に太陽光パネルを設置して農作物栽培と発電を両立させる「ソーラーシェアリング」もある。また、中古太陽光パネルの導入支援を行ったのをきっかけに、隣接する兵庫県丹波市に本社を置く丹波乳業とともに、酪農農家から発生するし尿などによるバイオガス事業にも取り組み始めている。

地元の関係者や行政などを巧みに巻き込みながら事業を進める井上さん。「地域での再エネ事業は一人では進められません。(中略)地域の皆さんとの相乗効果が出て初めて、地域が変わって行くのだと思います」(同冊子9ページ)、とコメントを寄せている。

小冊子に加えて、これまでのまちエネ大学で受講生向けに制作した映像教材を掲載したウェブサイト「Green Power People 地域事例から学ぶ再生可能エネルギー」には、大手資本による事業ではなく、地域住民や行政、金融機関などと恊働した地域主導型の再エネ事業の草分け的存在でもある、NPO法人北海道グリーンファンド理事長の鈴木亨さんや、徳島県内で太陽光やバイオマス発電を20機以上プロデュースする徳島地域エネルギー理事の豊岡和美さんなど、13人の事業について学べる映像教材が公開されている。

まちエネ大学は2017年度も全国5カ所(青森市、埼玉県飯能市、広島県福山市、徳島市、大分県竹田市)で開講している。再エネを通じた地域づくりに向けて起業を目指す個人の方々だけでなく、電力自由化を受けて地域のエネルギー供給源として事業化のノウハウが求められるようになってきた自治体にとっても、地域恊働型再エネ事業化のノウハウが学べる機会であろう。

<小冊子「Green Power People」(A4 19ページ)>

「Green Power People 地域事例から学ぶ再生可能エネルギー」内ページよりダウンロード可。

http://localenergy.biz/book

<2017年度まちエネ大学開催概要>

各地での開催概要はまちエネ大学公式ホームページ(http://www.greenpower.ws/)を参照のこと。

フリージャーナリスト(SDGs、サステナビリティ)

環境と健康を重視したライフスタイルを指すLOHAS(ロハス)について、ジャーナリストとしては初めて日本の媒体で本格的に取り上げて以来、地球環境の持続可能性を重視したビジネスやライフスタイルを分野横断的に取材し続けている。時事通信社記者、自然エネルギー事業者育成講座「まちエネ大学」事務局長などを経て、現在は国連持続可能な開発目標(SDGs)の普及啓発映像メディアSDGs.tvの編集ディレクター、サーキュラーエコノミー情報プラットフォームCircular Economy Hub編集パートナーなど、サステナビリティに関わる取材・編集、学びの場づくりを行っている。

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