サン・セバスティアン映画祭レポート2日目(24日)。食事の暇もなし。上映時間に追われて街を走る

ビクトリア・エウへニア劇場。貴族気分のバルコニー鑑賞だがよく見えない。筆者撮影

サン・セバスティアン映画祭の取材は想像以上に大変だ。

なにせ時間がない。メディア向け上映は朝9時から始まり夜24時に終る(週末は深夜上映あり)。ほぼ2時間半刻みで10数本から選べるようになっているが、どう頑張っても1日6本が限界。見終わったら次の会場へ行き席取りの列に並ぶ、を6回繰り返せば1日が終わっている。上映会場がそれぞれ微妙に離れており、徒歩10分ほどの距離を観光客であふれかえっているので「ペルドン!(すみません。通して!)」を連発しての小走りでも15分から20分かかる。ただ、それをやっていると食事は立ち食い(サン・セバスティアンには立ち食いでおいしいタパスバルがたくさんあるので便利だが)で、映画を見る以外のことができない。だから泣く泣く1本諦めて時間を作り、この原稿を書いている。

席取りに遅れると非常にまずい。

さすが今年65回目の伝統の映画祭。上映会場は豪華な建築様式のシャンデリアも見事な劇場だったりするのだが、これが実は映写には向いていない。上映時間ギリギリに行くと2階席、3階席になり正面にならましだが、最悪横のバルコニーに座ることになる。赤いカーテン越しに見下ろすなんて気分は王侯・貴族なのだが、3次元の演劇ならともかく平面のスクリーンでは画面が曲って見えるだけ……。

こんな感じて2日目は5本見た。

『C'EST LA VIE!』と『CUSTDY』が◎

通算5本目『C'EST LA VIE!』(上映おすすめ度5)

公式コンペティション作品。「これが人生だ!」という題名で想像する通りのコメディ&ドラマ。階級や格差、移民などの社会問題を皮肉りながらのありがちのストーリーだがジョーク連発で飽きさせない。主人公のマシンガントークをスペイン語字幕で追うのは大変だったけど。楽観的過ぎるような気もするが、それが今の社会には必要だ。

6本目『LOVE ME NOT』(上映おすすめ度0)

最高点の後は最低点。サスペンスは主人公たちの行動が馬鹿げていると楽しめない。見ている者に「俺の方がもっとうまくやる」と思われたら終わりなのだ。最初の設定のヒューマンドラマで押せば良かったのに。猟奇的な女性虐めにも説得力がなくインパクト目的だけのよう。公式コンペティション入りしたのが信じられない。

おすすめ度ゼロが3本も

7本目『CUSTDY』(上映おすすめ度5)

またもや出た最高点。スペイン語題名では『共同親権』。マチスモ(男性優位主義)の国スペインでは女性や子供への虐待がニュースにならない日はない。「正義と裁きはどこにある?」というテーマは『三度目の殺人』とも共通するもの。子供の顔のアップで苦悶と恐怖を伝える演出が抜群だ。

8本目『UNA ESPECIE DE FAMILIA』(上映おすすめ度0)

最高点の後にまたもや最低点。これも公式コンペティション作品なのに。とにかく主人公の言動がエキセントリック過ぎて身勝手で、1人で周りを巻き込み破滅へ向かっていく。共感できない言動でも良いのだ。その動機がきちんと描かれていれば。監督はわざと主人公への不快さが募るように作ったのかもしれないが、なら最初の「なぜ?」にちゃんと答えるべき。「ある種の家族」という題名は思わせぶりなだけに終わった。

9本目『OPERACION CONCHA』(上映おすすめ度0)

……というかこれは映画祭へのオマージュ、内輪受けの話なので一般への配給は考えてないのでは?「オペレーション・コンチャ」のコンチャは貝のことで、街と映画祭のシンボルマーク。舞台もメイン会場や映画館などその辺で撮影した感にあふれている。メディア・関係者向けの上映会だったので爆笑も拍手も起きていたけど、これは日本では無理でしょう。

さて、昨日のレポートで「スターが近くにいても偶然でなければ会えない」と書いたが実はこの日の夜、ある有名な映画監督と偶然知り合った。その話はまた後日!