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実は北朝鮮が“非公式”世界一!?女子サッカーのカンプ・ノウ観客動員数9万人の“史上最多”は間違い?

金明昱スポーツライター
世界一の15万人収容の綾羅島メーデースタジアムの外観(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

「女子サッカー史上最多の観客動員数を記録した試合」と最近、報じられたニュースは果たして正しいのだろうか。

 3月30日にバルセロナのカンプ・ノウで行われたUEFA女子チャンピオンズリーグ(CL)の準々決勝、バルセロナ対レアルマドリード戦に9万1553人が来場。1999年に米国で開催されたワールドカップ(W杯)決勝、米国対中国の9万185人を上回り、史上最多を更新したという。

 この記録はもしかしたら史上最多ではないかもしれない。世間的にはほとんど知られていない“世界一の記録”を持っているのが北朝鮮だからだ。

 2014年10月28日、平壌の綾羅島メーデースタジアム(5.1競技場)で行われた北朝鮮代表対ウォルミドの試合で15万人が入った。

 この試合は「朝鮮中央通信」が写真付きで報じており、金正恩総書記が観戦したこともあって、観客席はすべて埋め尽くされていた。これは韓国の「聯合ニュース」なども写真付きで報じている。

 さらに当日は大規模改修工事を終えた「竣工式」も兼ねていて、最大15万人が収容可能の「収容人数で世界一のスタジアム」になった日でもある。

 これはテレビ東京のサッカー番組「FOOT×BRAIN」で放送(2020年2月16日)された「東大卒クイズ王が教える集中力を高める頭の使い方」で、クイズ問題として出題された。

 “東大クイズ王”の伊沢拓司が、収容人数が世界一のスタジアムのことを「カンプ・ノウ」と答えて不正解。正解は前述の通り、「綾羅島メーデースタジアム」だった。

マスゲームが行われているメーデースタジアム内
マスゲームが行われているメーデースタジアム内写真:代表撮影/Pyeongyang Press Corps/Lee Jae-Won/アフロ

日本のプロレスラー参戦の試合も世界最大観客数

 同スタジアムは、“世界最大”と言われるイベントが多数開催されている場所でもある。

 一つは、10万人規模のマスゲーム「アリラン」が行われる場所として有名だ。

 意外にも日本とも関わりがある。1995年4月に同スタジアムで「スポーツと平和の祭典」が行われ、メインイベントとしてアントニオ猪木とリック・フレアーが戦った。この時は19万人(主催者発表)の観客が入り、プロレス興行の世界最大観客数を記録している。

 他にも蝶野正洋、橋本真也ら当時のトップ選手が参戦し、ブル中野vs北斗晶の女子選手の対戦も平壌市民を熱狂させた。

 とはいえ、収容人数オーバーの19万人がどのようにして入れたのかは謎。立ち見も含めてのことだと思うが、とにかく多くの観客がこのスタジアムには入れるのは間違いない。

 いずれにせよ、2022年3月30日のUEFA女子CLのバルセロナ対レアルマドリード戦に9万1553人が来場したのが“公式”記録ならば、2014年10月28日の女子サッカー北朝鮮代表対ウォルミドの15万人は“非公式”の世界一と認識しておくといいのかもしれない。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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