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引退したキム・ハヌルが韓国女子ツアーに“苦言”?日韓女子ゴルフツアーの決定的な違いとは?

金明昱スポーツライター
キム・ハヌルは韓国にもベテラン選手の活躍の場が必要と提言した(写真・KLPGA)

 今年10月、日本女子ゴルフツアーの「NOBUTA GROUPマスターズGCレディス」を最後に現役を引退したキム・ハヌル。

 その後、韓国女子ツアーの今季最終戦「SKシールダス-SKテレコムチャンピオンシップ」(11月12~14日)に推薦枠で出場し、引退試合を行ったのだが、初日に会見が行われた。

 韓国ツアーは通算8勝。2011、12年には2年連続賞金女王のタイトルを獲得し、“スマイル・クイーン”の愛称で人気を獲得。「ハヌル・サラン」というファンクラブが韓国ツアー選手の中で初めてできたことでも有名だ。

 韓国で結果を残すことに限界を感じ始めていた頃、15年から日本ツアー挑戦を決断。メジャー2勝を含む通算6勝と再びキャリアを輝かせる実績を残し、日韓両国で“美しくて強い”ゴルファーとして人気を確立した。

 韓国での会見では、引退に至った経緯や今後の活動などについて、現地記者から様々な質問が飛んだ。

 その中で日本ツアーに挑戦したことについては「すごくいい選択でした。韓国に残っていれば、とっくにやめていたと思います」と振り返り、日本と韓国ツアーの違いについて語るくだりがあった。

「今大会もそうですが、韓国にいれば私が年長者になった気分になります。日本ではトップを争う選手たちの顔ぶれを見ると、世代交代はしましたが、今も私よりも年上の選手たちが上位に食い込むこともあり、とてもいい試合をしています。先輩たちががんばってくれるので、私たちもまだがんばれるという気持ちになりました。ただ、韓国ではベテラン選手がすごく早い時期に抜けていきます。私がずっと居続けることは後輩たちに申し訳なく思うくらいですから」

日本よりも選手生命が短い韓国ツアー

 韓国女子ツアーでは、プロ1年目からすぐに優勝できる実力者が多く、今もレギュラーツアーのシード選手は20代前半がしのぎをけずる。20代後半になればシード圏外に追いやられ、30歳を超えるとほとんどの選手が引退していく。

韓国ツアー最終戦で引退試合を行ったキム・ハヌル(写真?KLPGA)
韓国ツアー最終戦で引退試合を行ったキム・ハヌル(写真?KLPGA)

 実際、今季の韓国レギュラーツアーでプレーする30代の選手は数人しかおらず、韓国女子プロゴルファーの選手生命は日本に比べるとかなり短いのが現状だ。

「米女子ツアーや日本女子ツアーは、賞金女王やトーナメント優勝経験があれば、試合に出られる様々な資格が付与されるのですが、韓国にはそうしたものがほとんどありません。なので、ベテラン選手や先輩たちがツアーに出場できる機会がありません。世代交代があまりにも早いと思います」

 プロの世界は実力者が勝つ競争の場とはいえ、日韓でプレーしたことがあるキム・ハヌルには、韓国の現状がもどかしく映っていた。

 かつて申ジエも「韓国のジュニアは集中的に練習するので成長スピードは速いが、やめるのも早い。私はゴルフを楽しく、長くプレーできる姿を後輩たちに見せたい」と語っていた。

 日本では44歳の大山志保や42歳の李知姫はシード選手として活躍しているし、35歳の上田桃子も今季は賞金ランキング9位と若手に交じって奮闘している。

 韓国ツアーは若手のレベルが高くて競争も激しく、ベテラン選手はゴルフを続けたくても長く居続けられない雰囲気がある。

 キム・ハヌルは日本のようにベテラン選手が少しでも活躍できるようなチャンスが、韓国ツアーにも必要だと伝えたかったようだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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