10月27日、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の小林浩美会長名で報道機関に配布された文書の内容にはこう記されていた。

「日本女子プロゴルフ協会は、JLPGAツアー公認競技における放映権の帰属について2017年より4年間にわたり各大会主催者様と協議を続けてまいりましたが、このたび2022年度JLPGAツアー公認競技の全ての大会において、主催者様との間で、放映権が幣協会に帰属することで合意にいたりましたことをご報告申し上げます」

 これで来年から大会の運営方式などの権利がJLPGAの帰属になるわけだが、今後数年をかけてツアー各大会の主催者が「JLPGA」になるように交渉が進んでいくと思われる。

 こうした動きを韓国も注視している。というのも韓国女子プロゴルフ(KLPGA)ツアーも年々試合数と賞金額が増加。今季6勝で賞金ランキング1位のパク・ミンジの獲得賞金額は、約1億5000万円と日本女子ツアーにも匹敵する勢いがある。

 強くて若い選手が次々と登場し、一方でビジュアルのいい選手も人気獲得に一役買うなど、プロスポーツにおける“キラーコンテンツ”となっているからだ。

「ヘラルド経済」は「JLPGAツアーが数年間、引き延ばしてきた放映権をついに確保し、来年からツアー中継の状況に変化が現れるようだ。これによって大会結果がすでにネットで報じられているにもかかわらず、一部の大会では放送局の事情で数時間が経ってから、放送してきた日本ツアーの旧時代的な慣行が来年から相当数、消えると見られている」と伝えている。

 JLPGAツアーが放映権を持つことで、どのように発展していくのかは、韓国にとって気になるところではあるだろう。

KLPGAは中継局“一択” 5年契約で約37億5000万円

 ちなみに現在、KLPGAツアーの中継は韓国のテレビ局「SBS(Golf)」が一手に担っている。韓国女子プロゴルフ協会(KLPGA)は2014年から放映権のパートナーとして「SBS」を単独で選定。2017年からはさらに5年間の契約に成功している。

 地上波のライブ中継を通して、国内の強い選手たちのレベルの高いプレーと素顔を知る機会が増えることで、大会を開催したい企業やファンを多く獲得してきた経緯がある。日本の一部の試合で録画放送の前に結果をネット記事で知るような現象は起こらない。

2020年はコロナ禍で世界のツアーに先駆けて開幕したKLPGAツアー(写真・KLPGA提供)
2020年はコロナ禍で世界のツアーに先駆けて開幕したKLPGAツアー(写真・KLPGA提供)

 ちなみに2013年11月「韓経スポーツ」は「2014~2016年の3年間、『SBS Golf』は独占でKLPGAツアーを中継する対価として、年間45億ウォン(約4億5000万円)ずつを3年間、計135億ウォン(約13億5000万円)を支払った」と報じている。

 また、「SBS」が2017年から契約5年間でKLPGAに支払った放映権料は、年間75億ウォン(約7億5000万円)で計375億ウォン(約37億5000万円)と韓国内では報じられている。

 さらにKLPGAツアーは今年から日本でCS放送のスカイAが放送(2年契約)を開始しているほか、タイとベトナムでも中継がスタートしている。いずれにしても莫大なお金が集まることで、KLPGAが様々な施策に打って出たのは言うまでもない。

KLPGA「広報モデル」活動はすべてノーギャラ

 一つはKLPGAの伝統ともいうべき「広報モデル」の選定だ。今年は13代目で、レギュラーツアーのシード権を持つ選手を対象にオンライン投票で、ジャン・ハナやパク・ヒョンギョンなど10人が選ばれた。

 2009年から始まった広報モデルの選出(毎年10人前後)だが、過去にはイ・ボミ、キム・ハヌル、アン・シネ、ユン・チェヨン、ペ・ソンウら日本ツアーでお馴染みの選手も選ばれている。

2021年は第13代目となる広報モデルたち。米ツアーでプレーしたジャン・ハナ(左から3番目)の姿も(写真・KLPGA提供)
2021年は第13代目となる広報モデルたち。米ツアーでプレーしたジャン・ハナ(左から3番目)の姿も(写真・KLPGA提供)

 これも女子ツアーへの注目度を高めるための施策の一つ。各種イベントや公式YouTubeなどへの出演、最近ではメッセンジャーアプリの「カカオトーク」では公式スタンプが制作され、ファンとの距離もグッと近くなった。今年は大韓赤十字社の広報大使としても活動し、社会貢献活動にも領域を広げている。

 ちなみに選手たちの活動はすべて“ノーギャラ”だ。つまりボランティアになるのだが、KLPGAは上記のような活動を通して、それ以上の“価値”を選手たちに提供するように心がけている。

 「広報モデル」に選ばれる選手たちはみな、“名誉”ととらえている側面がある。メディアへの露出が増えるため、選手にとってはイメージ戦略にもなるし、スポンサードする企業にとってはありがたい話だ。

 年間を通じて、KLPGAが企画する様々なファンイベントや社会貢献活動など、選手にとっては好感度アップにもつながるため、自然とファンも増える。選手自身のステータスも高められるとあって、多方面への影響の大きさは計り知れない。

ファン参加型のKLPGA無料ゲーム開発

 また、KLPGAはスマホアプリの開発にも投資をしている。公式アプリからは、すべての試合結果やニュース記事、選手の詳細データなどが確認できるほか、アプリを使ったオンラインショップではKLPGA公式ゴルフグッズも販売している。

 さらに驚いたのは、今年からは新たに無料オンラインゲームを開設したことだ。

 これは参加者が実際に行われるKLPGA(1部)ツアーに出場する5人を選択して「My球団(クラブ)」を作り、他のゴルフファンが作ったチームと対決するシミュレーションゲームだ。選んだ選手の結果によって、ポイントが加算され順位を競う。

 実際の試合を見ながら無料で気軽に参加できるため、会場に行けなくても、ライブ感があってとても楽しい。

KLPGAオンラインゲーム「PICK GOLF」の選手選択画面
KLPGAオンラインゲーム「PICK GOLF」の選手選択画面

サイン入りバッグや高級時計のプレゼント!?

 KLPGAの施策がすごいと感じるのは、この一般参加型のオンラインゲームにただ参加してもらうだけではなく、毎試合、豪華な商品を用意していることだ。

 例えば、1位になった人には、該当大会の優勝選手のサイン入りミニゴルフバッグをプレゼント。2~5位にはKLPGA公式のキャップ、ボールマーカー、エコバッグなどのセットを用意している。

 また、シーズンを通して1位になった人には、フレデリック・コンスタントの時計(約11万円相当)が贈呈されると知って驚いた。2位から5位にはボイスキャディの距離測定器が贈られるのも、ゴルフファンにはたまらないだろう。

 こうした企画もお金がなければ始まらない。放映権料がいかに協会にとって大事な資金なのかが、KLPGAの施策から見てとれる。

 JLPGAも来年以降、様々な企画を打ち出したい思惑がきっとあるはずだ。というのも、渋野日向子をはじめとする“黄金世代”を筆頭に、その下の世代がどんどん力をつけてしのぎを削るツアーとなり、やり方次第では“キラーコンテンツ”へと化ける可能性を秘めているからだ。

 これからJLPAGはどんな方法でゴルフファンを楽しませてくれるのか。放映権問題は一件落着とはまだ言い難いのかもしれないが、次の施策を楽しみに待ちたい。