Yahoo!ニュース

渋野日向子ら“黄金世代”が語った女子ゴルフ開幕戦開催への感謝とこれから自分たちがすべきこと

金明昱スポーツライター
アース・モンダミンカップでは予選落ちだったが、試合ができることに感謝していた渋野(写真:Motoo Naka/アフロ)

 新型コロナウイルスの影響で中止が続いていた日本女子ゴルフツアーだが、開幕戦となったアース・モンダミンカップが無事に終了した。

 ギャラリーを入れない無観客は当然のこと、大会関係者の入場規制、事前のPCR検査や検温など徹底した防疫対策の中で試合は行われた。

 スポンサーや大会運営者のみならず、協会や選手たちすべてが初めて経験することとあって、かなりの緊張感はあったと思う。

 ただ、いつ開催されるのかわからない状況の中でも、試合が行われたこと、徹底した感染防止策で選手たちが安心感を得られたことは、今後、トーナメントを開催する指針となったのは間違いない。

 そんな中、今月、“黄金世代”の5人の選手たちに話を聞く機会があった。

渋野日向子「試合があることに感謝」

 この大会で最も注目されていたのは、渋野日向子だろう。昨年の全英女子オープンでの初優勝のインパクトもさることながら、ルーキーながら国内ツアー4勝で賞金ランキング2位の結果からしても、今季は賞金女王の期待もかかっていた。

 だが、注目の今季初戦の結果は予選落ち。それでも渋野は明るかった。

「アース・モンダミンカップは事前にPCR検査もあり、会場内には消毒液もたくさん置き、キャディさんも試合中はずっとマスクをしていました。ギャラリーは入れず、大会関係者の人数も制限されていたので、残念な部分もありますが、とにかく選手が試合に安心して挑めるように準備が徹底されていました。それこそ、本当にいい状態でやらせていただいていたので、とても感謝しています。ただ、これからも開幕戦のような感じでやっていかないといけないとは思いますが、とにかく今は試合があることに感謝をしたいという気持ちでいっぱいです」

 予選落ちについても、「すごく悔しかったですけれども、私のなかではオフにやってきたことは間違っていないと思っています。そのときに結果が出せなくても、いつか出せると思ってこれから先もめげずにやっていけたらなと思います」と前向きに気持ちを切り替えていた。

河本結「一人ひとりができることを」

 今季から米ツアーに挑戦している河本結は、7月31日から開幕するLPGAドライブオン選手権(オハイオ州)に出場するため、渡米を決めている。

 そういう意味では日本ツアーで試合ができた経験は大きい。河本自身も改めて「試合があって当たり前」の状況が、いかに感謝すべきことなのかを感じていた。

「試合(アース・モンダミンカップ)が開催されたときは、これまで当たり前だったものが、いろんな人の力でできていることを改めて感じました。私たち選手もツアーが始まったときにいいパフォーマンスを見せられるように、一人ひとりできることをしっかりやっていかなきゃいけないなってすごく思いました」

原英莉花「試合なくても心掛けて生活を」

 ジャンボ尾崎が師匠で有名な原英莉花。昨年、ツアー初優勝し、日本通運の所属となった。同企業のCMにも登場し、ゴルフファンのみならず、顔も知れ渡ってきている。

 原は「心配な部分はまだあります」と正直に話しつつも、「自分に何ができるか」をたくさん考えるようになったという。

「トーナメントの中止が続く中、アース・モンダミンカップを無事に開催するために、PCR検査をやり、みんなが“密”にならないように意識してやってくださっていました。選手や関係者も例えば、近場であればそこまで移動手段に気を配らなくてもいいのですが、遠くの場所での開催になると、各大会スポンサーさんたちもリスクも考えると思います。そこは致し方ない部分もあると思います。なので、選手の立場としてはこれからも一人一人が、心掛けて生活をしていく意識をしっかりと持っていれば、またいずれ試合をしていただけるのかなとも思っています。今は新型コロナウイルスの感染者数が増えているのも、自分のなかではプレッシャーになっている部分はありますが、今は試合がなくてもしっかり(感染予防の)意識を持つことが大切だと思います」

大里桃子「試合ができるありがたみ感じた」

 一昨年、ツアー初優勝した大里桃子。地元が熊本の大里は、ここ数日の九州地方を中心とする豪雨被害で甚大な被害が出ている熊本県の被災地へ、所属先である伊藤園製品の支援物資を寄付した。

 今季開幕戦となったアース・モンダミンカップでは5位タイと結果を残した大里だが、他の選手たちと同じく、やはり試合ができるありがたみを感じていた。

「アース・モンダミンカップの開催においては、厳重な感染予防をしていただいて、選手にとってはとてもありがたかったです。とにかく試合ができたことがすごくうれしかったですね。次の試合はまだ決まってないのですが、感染予防対策がとても大変になるとは思います。私は熊本に住んでいるので、毎回出ていくときに、飛行機に乗ったりと多少なりとも、怖い部分もあるのですが、気を付けながら準備していくしかないと思っています」

勝みなみ「試合勘の鈍りを取り戻せた」

 アマチュア時代の高1でプロツアー初優勝し、プロ転向後はレギュラーツアーで3勝している勝みなみ。

 アース・モンダミンカップ以降の試合はまだ決まっていないが、緊張感のあるなかでも「いつもより楽しく気合を入れて挑むことができた」と笑顔を見せていた。

「中止続きの女子ゴルフツアーでしたが、アース・モンダミンカップは医療従事者の方の尽力があって開催できたと思います。選手が安心してプレーできるように様々な対策を施してくれたので、とても感謝しています。私たちも無事に大会が成功したことがすごくうれしかったです。それに私としては、試合勘が鈍りかけていたところで、プレーができたのはすごくありがたかったです。ギャラリーは入れなかったですが、緊張感があるなかでプレーができるのはすごく幸せなことだなと改めて感じました」

 “黄金世代”5人の共通の想いは、試合があることへのありがたみと感謝の気持ちだった。

 だからこそ、次戦の開催に慎重にならざるを得ない部分があるのも分かっている。試合がしたい気持ちはあるが、現状では一人ひとりが感染予防と練習に取り組んでいくしかないと理解している。

 次戦の開催がいつになるか。こういう状況だからこそ、選手もファンも楽しみに待っている。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

金明昱の最近の記事