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柏レイソルから韓国・蔚山現代に期限付き移籍のキム・ボギョンがMVP候補!?「自身のキャリア最後の…」

金明昱スポーツライター
蔚山現代でキャプテンも務める元韓国代表MFキム・ボギョン(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 まさかの活躍ぶりに驚きを隠せないでいる。

 2017年6月に柏レイソルに加入し、Jリーグでプレーを続けていた元韓国代表MFキム・ボギョン。

 19年の年明け、柏レイソルはキム・ボギョンが蔚山現代へ期限付き移籍することを発表した。

 当時、クラブ公式サイトを通じて、こんなコメントを残している。

「柏レイソルでは選手としてたくさんのことを学び、経験することができました。サポーターの方々の期待に活躍する姿で応えなければなりませんでしたが、足りない部分が多かったと思います。もう一度柏で認めてもらえるように、この1年でもっと成長して良い選手になれるように頑張ります。また、常に柏レイソルを応援していますし、選手として柏レイソルでプレーしたすべての瞬間を忘れずにいたいと思います。本当にありがとうございました」

 母国のKリーグで成長し、戻ってくるのを約束する言葉に背水の陣の覚悟が見え隠れする。

 ただ、自分が生まれ育った国とはいえ、決して慣れた環境でないのも事実だ。

 キム・ボギョンがプロデビューしたのはJリーグ(セレッソ大阪と契約後、大分トリニータに期限付き移籍)であり、欧州のカーディフ・シティやウィガンでもプレー。

 サッカー選手としては、韓国よりも海外生活のほうが長い。

 Kリーグ(全北現代)でプレーしたのは16年から17年途中までの約1年半しかないため、さらなるKリーグでの成功は、決して約束されたものではなかった。

 しかし、今季の躍進は目覚ましく、現地メディアにひっぱりだこだ。

 今年30歳のベテランが、目下、”KリーグMVP候補”というのだから、一体何が起こっているのかと気になる日本のサッカーファンも多いと思う。

キャリアハイの13得点8アシスト

 そもそも、キム・ボギョンが所属する今季の蔚山現代は、第36節終了時点でリーグ首位を走っている。

 優勝争いのライバル、全北現代は2位。ここには韓国代表の長身FWキム・シンウク、元韓国代表のベテランFWイ・ドングク、もう一人のMVP候補と言われている韓国代表MFムン・ソンミンらが名を連ねる。

 そんな強豪クラブを押しのけ、蔚山現代が快進撃を続けているのだ。

 その原動力となっているのがまさしくキム・ボギョン。最近はキャプテンマークをつけて試合に出場することも多く、信頼の大きさがうかがえる。

 スポーツ紙「スポーツ朝鮮」は「もう一足大きく進化した2人の男、KリーグMVP戦争」と見出しを打ち、蔚山現代のキム・ボギョンと全北現代のムン・ソンミンをクローズアップしている。

 MVP争いに一歩抜け出した感があるのがキム・ボギョンだ。

「(キム・ボギョンは)2010年南アフリカ・ワールドカップ(W杯)に出場した代表クラスのMFでもある。元々はパスや試合の流れに緩急をつけるのがうまい選手だが、今シーズンはFWに近いプレースタイルに変わった」

 Kリーグでプレーの幅が広がり、より攻撃的なプレーに変化したという。ちなみに11月3日に行われた第36節、蔚山現代対FCソウルの試合では、キム・ボギョンが後半35分に鋭いFKを決めて1-0で勝利した。

 ここ一番の勝負強さは、日本にいたときよりも磨きがかかっている。

 個人の記録は自身キャリアハイの13得点8アシスト。サッカー専門サイト「フットボリスト」は「キム・ボギョンがMVPにまた一歩リードした」とピッチでの存在感を大いに称えていた。

蔚山に完全移籍か、Jリーグに戻るか

 三面六臂の活躍でチームの成績もうなぎのぼりで、蔚山現代は36試合を終えて勝ち点78で1位をキープ。2位の全北現代は勝ち点75で、その差は3。優勝争いはまだ分からない状況だ。

 11月23日に控えている全北現代との直接対決を制すれば、蔚山現代の14年ぶりのリーグ制覇が見えてくる。悲願を達成するためにも、キム・ボギョンも気を抜けない状況にある。

 そんな彼が10月中旬、スポーツ専門サイト「SPOTV」の取材に対し、気になることを話している。

「自分のキャリアやサッカー人生において、最後になると考えてきた場所が蔚山です」

 そんな決死の覚悟を持って、今シーズンはプレーしているということだろう。キム・ボギョンがリーグ優勝とMVPを獲得すれば、それこそ蔚山現代が“最後”の場所になるはずがない。

 ちなみに柏レイソルとの契約は2020年までだが、個人的には来季の行き先が気になるところ。

 まずは蔚山現代がリーグ優勝を達成するのかどうか、キム・ボギョンがMVPを獲得するのかを見守りたい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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