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“女子ゴルフ最強国”韓国が渋野日向子ら日本の“黄金世代”に注目するワケ

金明昱スポーツライター
渋野日向子ら黄金世代の活躍は韓国にも伝わってきている(写真:ロイター/アフロ)

 最近、韓国のゴルフニュースを見ていると、明らかに日本の女子ゴルフで活躍する“黄金世代”に関する記事が増えている。

 これまで韓国で報じられる女子ゴルフのニュースといえば、米ツアーか韓国ツアーのネタがほとんどで、たまに日本ツアーで勝利した韓国人選手のことが報じられる程度だった。

 だが、近年の日本ツアーで台頭しはじめた“黄金世代”によって、韓国メディアもそこに注目し始めたというわけだ。

 ちょうど先週の日本女子ツアー「デサントレディース東海クラシック」で、首位の申ジエとの8打差から逆転優勝した渋野日向子のことも韓国でも大きくニュースになっていた。

 賞金女王を争う申ジエとの優勝争いということも注目の要因だが、それでも日本の女子選手たちが大々的に報じられることはあまりなかった。

 9月11日付の韓国紙「中央日報」は「韓国のように…日本女子ゴルフ1998年生まれ“黄金世代”」と見出しを打ち、その実情を大々的に報じている。

「日本には1998年4月から1999年3月までに生まれた選手がたくさんいる。日本のレギュラーツアーだけで10人。ルーキーだが、8人が米ツアーと日本ツアーで計18勝している(その後、畑岡奈紗が日本女子プロゴルフ選手権で優勝したので19勝)。米ツアー3勝の畑岡奈紗、今年の全英女子オープンで優勝した渋野日向子、日本ツアー4勝の勝みなみが代表的な選手たちだ」

 こうした現象について、同紙は「パク・セリの影響を受けた韓国の1988年生まれ(イ・ボミ、キム・ハヌル、申ジエ、パク・インビなど)のように、98年生まれも自国スターの影響を受けた。それは2003年当時、高校3年だった宮里藍のプロツアーでの優勝が大きな話題になったことだった。宮里の人気はタイガー・ウッズを凌駕した」と伝えている。

 つまり、かつて韓国で起こった“パク・セリキッズ”現象が、今まさに日本で“藍ちゃんキッズ”現象が起こっていると伝えたいわけだ。

河本結の会見発言に韓国記者が驚く

 韓国の総合ニュースサイト「イーデイリー」ゴルフ担当のチュ・ヨンロ記者に話を聞いた。

「韓国の“パク・セリキッズ”のような現象がいま日本で起こっていると確かに話題です。これまでと比べると日本の女子ゴルフへの関心は確かに高まっています」

 日本のゴルフツアーの取材にもたびたび訪れているチュ記者は、日本のゴルフ事情にも詳しい。

 6月には日本で河本結のインタビューも行っており、“黄金世代”の印象についてこう語る。

「近年、韓国女子ツアーに招待される日本選手の顔ぶれを見てもそうですが、力のある若い選手が出場しています。今年8月の韓国ツアーに初めて河本結選手が招待されましたが、記者会見を見てもハキハキと話す選手で、頭の回転も早い。確かに日本の選手に力のある選手が増えているのは分かります」

 今年8月の韓国女子ツアー「ハンファクラシック」に日本から河本結、吉本ひかる、三浦桃香の“黄金世代”3選手が推薦で出場している。

 同大会の公式会見に7人が呼ばれたのだが、その中に日本人は河本結だけだった。

 だが、そのときの会見がかなりインパクトの強いもので、韓国の記者たちを驚かせたという。

「日本ツアーでプレーしているイ・ミニョンも会見にいたのですが、河本がイ・ミニョンのトップ10入りが多いことやパーオン率の順位も知っていたこと。さらにキム・ヒョージュも同席していたのですが、彼女がアマチュア時代に日本ツアーのサントリーレディスで優勝したことまで、河本が話しはじめたんです。周囲の記者も詳しさに驚いていましたよ」(チュ記者)

渋野日向子が賞金女王になれば…

 こうして日本でも徐々に世界に通用する選手が登場しはじめたことを韓国メディアが改めて知るきっかけになったのは、やはり渋野日向子だ。

 チュ記者も「渋野日向子の全英女子オープンでの優勝は驚きをもって伝えられています。ただ、韓国の選手はすでに海外メジャーで何勝もしていますから、渋野が日本で賞金女王になれば、さらに韓国国内での関心は高まると思います」という。

 確かに米女子ツアーで上位を席巻しているのは韓国勢である。現在世界ランキング1位のコ・ジンヨンは2年前までは韓国ツアーにいたが、今季の「ANAインスピレーション」と「エビアン選手権」でメジャー2勝している。

 また、世界ランキング4位のイ・ジョンウンも今季米ツアーにデビューしたばかりにもかかわらず、いきなりメジャーの「全米女子オープン」を制覇してしまった。

 日本選手たちが韓国選手レベルにまで追いつくにはまだ時間がかかりそうだが、いずれ世界を席巻する日がくることを楽しみにしたい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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