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久保建英で注目のコパ・アメリカ、韓国代表が「格」を重んじて2020年大会を辞退した複雑な事情とは?

金明昱スポーツライター
コパ・アメリカに20年ぶりに出場した日本。来年の大会に韓国が招待されたというが…(写真:ロイター/アフロ)

 コパ・アメリカに招待国として参加している日本代表。

 初戦ではチリに0‐4で大敗したが、続くウルグアイに2-2の引き分けで善戦。

 1分け1敗の日本だが、第3戦のエクアドル戦で勝利すれば、決勝トーナメント進出も可能となった。

 さらにレアル・マドリードへの移籍が決まった久保建英に注目が集まり、ウルグアイ戦で2ゴールを決めた三好康児(横浜F・マリノス)にも欧米のスカウトが目を光らせていると聞く。

 当初は日本代表が若手の経験を優先させたメンバー選考に懐疑的な目が向けられ、チリに0-4で大敗したことで批判の声も少なからずあった。

 だが、ウルグアイに引き分けたことで、一気に息を吹き返した。来年の東京五輪につながる貴重な経験になっているのは間違いはない。

 日本の健闘に注目が集まるなか、韓国では「韓国代表はコパ・アメリカになぜ招待されていないのか?」という声も少なからず聞かれるようになった。

2020年大会は豪州とカタールが参加

 そんな中、先月、スポーツ紙「スポーツ朝鮮」が「大韓サッカー協会(KFA)に2020年コパ・アメリカの参加要請があったが、様々な要件が重なり、参加を見送った」と報じていた。

 来年のコパ・アメリカは、アルゼンチンとコロンビアの共催。招待国はオーストラリアとカタールに決定している。

 なぜ韓国は来年のコパ・アメリカ参加を見送ったのか。同紙はこう伝えている。

「韓国代表を正常なスケジュールで動かすことができないのが、もっとも大きな理由だ。コパ・アメリア開催前の6月初旬には、2022年カタール・ワールドカップ(W杯)のアジア予選が行われる。W杯アジア予選とコパ・アメリカを同時に準備するには、時間的な余裕がない。当然、重きをW杯予選に置くしかなく、コパ・アメリカに向けた準備は大きな負担になる、と判断したからだ」

 さらに同紙は、大韓サッカー協会のチョン・ハンジン事務総長のコメントも掲載していた。

「韓国代表選手たちとっては、良い経験を積める絶好の機会。どうにかしてコパ・アメリカに参加できるように、代表選手の招集と選出方法を考えていたが、最終的には難しいという結論に至り、不参加の意思を伝えた」

 南米の強豪を相手に貴重な経験を積めるのはいいが、W杯予選が重なるとなると、確かに話が変わってくる。

 ちなみに2022年W杯開催国でアジア予選免除のカタールにとって、来年のコパ・アメリカ参加は絶好の強化試合になる。

 一方、オーストラリア代表は、W杯アジア予選も控えているだけに、コパ・アメリカ参加を表明したのは、かなり勇気が必要な判断だったに違いない。

コパ・アメリカに参加する”格“

 また、「スポーツ朝鮮」はこうも伝えていた。

「韓国のA代表を二元化する方法も考えたが、メリットよりもデメリットが多いという指摘があった。A代表ではない五輪代表の参加も検討したが、コパ・アメリカの“格”にふさわしくないと判断した。来年7月に東京五輪が開催されるため、コパ・アメリカと東京五輪に立て続けに出場する場合、代表選手は約2カ月間、所属チームを離れることになる。Kリーグでプレーする選手の所属チームにとっては、望ましい話ではない」

 コパ・アメリカに招待されるアジアの国は、確かに名誉なこと。ただ、韓国の場合もそうだが、各国によって悩ましい事情があるのはある程度想像できる。

 ベストメンバーを送れなければ辞退するのか、もしくは選手のレベル向上や経験を積むことを目的に若手選手を優先するのか――。

 南米ナンバーワンを決める大会だけに、「ベストメンバーでなければ失礼にあたる」という意見があるのも分からなくもない。

 それでも、アジアの選手たちの目線で見たときは、世界にアピールできる格好の舞台でもある。

 すべては結果によって、メディアから高く評価されたり、批判の的にもさらされるが、日本代表の久保の注目度や三好の活躍ぶりをみると、欧州へのステップアップも夢ではないのも事実だろう。

 コパ・アメリカは2020年大会以降は4年ごとに開催される。そのたびにアジアのどの国が招待されるのかも、一つの楽しみになりそうだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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