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′99年準優勝の日本を超えられるか。サッカー U-20W杯決勝戦に挑む韓国代表の実力と優勝の可能性

金明昱スポーツライター
史上初の決勝戦に進んだU-20韓国代表(写真:ロイター/アフロ)

 韓国サッカー界に新たな歴史の一ページが刻み込まれようとしている。

 FIFA U-20ワールドカップ(W杯)で、快進撃を続けている韓国代表が準決勝でエクアドル代表を1-0で下して、韓国サッカー史上初の決勝戦に進出した。

 16日(日本時間1時)の決勝の相手はウクライナ代表。奇跡の瞬間に立ち会おうと、いま韓国はU-20代表の話題で持ちきりだ。

ただ、当初は韓国がまさか決勝の舞台に立つとは、予想もしていなかった。

 大会前、U-20韓国代表の合言葉は“アゲイン1983”だった。チョン・ジョンヨン監督は最終メンバー発表会見で、「個人的には(目標を)“アゲイン1983年”と言っておきたい」と語っていた。

 これまで韓国の同大会の最高成績は、36年前の1983年にメキシコで開催されたFIFAワールドユース選手権(U-20W杯の前身)のベスト4。

 それさえも達成できるのか懐疑的だったが、今大会で韓国代表は、目標を達成したばかりか、初の決勝進出という快挙を成し遂げたのである。

初戦敗北あとの快進撃

 ここまでの戦いぶりを振り返ると、まさに死闘の連続だった。

 グループFに入った韓国は初戦のポルトガルに0-1で敗れたが、2戦目の南アフリカに1-0で勝利。3戦目はグループリーグ突破を掛けて、強豪アルゼンチンと戦い2-0で退けて、グループ2位で決勝トーナメントに進出した。

 決勝トーナメントの相手は日本。アジアのプライドを掛けたライバル同士の対戦では、韓国が1-0で日本に勝利してベスト8へ。

 準々決勝で韓国はセネガルを相手に死闘が繰り広げられた。セネガルに1-2でリードされ、そのまま試合終了かと思われた90分のアディショナルタイムにCKから劇的な同点弾。

 さらに延長戦では3-2でリードしたが、後半アディショナルタイムにセネガルに決められて3-3。勝負はPK戦にゆだねられ、3-2で勝利した韓国が準決勝に進出した。

 この試合ではVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)判定が7回もあり、途中何度も試合が中断したが、韓国の選手の冷静な対処が光った試合でもあった。

参照:日本とセネガルを撃破した韓国のU-20W杯ベスト4は「KリーグのVAR導入経験が生かされた」から?

 準決勝は前述の通り、1-0で韓国がエクアドルを下した。

 韓国にとってはFIFAが主管する大会で初の決勝戦進出。大会前に韓国のサッカー担当記者に話を聞いたときはこんな見解だった。

「正直、期待しすぎるのは早い。今回招集された欧州組でさえもクラブでは主力ではない。試合を見守る必要がある」

 それが、ふたを開けてみれば驚くべき結果が待っていたわけだ。

バイエルンのチョン・ウヨンが抜けたが…

 開幕前からその予兆はあったのかもしれない。

 一つは、欧州組を最大限に招集したことだ。大韓サッカー協会(KFA)が発表した21人のうち、5人が欧州のクラブに所属する選手だった。

 GKチェ・ミンス(ハンブルガーSV)、DFキム・ヒョヌ(ディナモ・ザグレブ)、MFキム・ジョンミン(FCリーフェリング)、MFイ・ガンイン(バレンシア)、FWチョン・ウヨン(バイエルン・ミュンヘン)がメンバー入りした。

 しかし、バイエルンのチョン・ウヨンが大会前にチーム側から招集を見送られため、これが「大きな戦力ダウン」と見られていた。

 チョン・ウヨンはリザーブチームで今季13ゴールを挙げており、昨年のUEFAチャンピオンズリーグでもトップチームにデビューするなど、実力が認められていたからだ。

重圧はねのけたイ・ガンイン

 そんな彼を抜けた穴を埋めるかのように、18歳の“神童”イ・ガンインが背番号10を背負い、チームを引っ張った。

 彼の実績を見ると、期待されて当然だ。10歳のときにバレンシアのカンテラに入団。順調に成長して、16歳のときにプロ契約。今年1月にリーガデビューを果たすと、2月にはヨーロッパリーグ(EL)ラウンド32の第2レグ・セルティック戦にも出場した。

 3月にはA代表にも招集されており、総合ニュースサイト「news1」は今大会の活躍ぶりから、イ・ガンインのことを「パク・チソンやソン・フンミンのように、未来のエースになる資格が十分にあるように見える」と評価する。

 

 確かに獅子奮迅の活躍で、決勝戦に進むまで1ゴール4アシストを記録。

 韓国中の期待を一身に背負いながらも、プレッシャーに押しつぶされることのなく、スペインのトップリーグで鍛えられたメンタルを生かして、チームをけん引した。

アルゼンチン戦と日本戦で得点したのは2部リーグ選手

 それにしてもバレンシアのイ・ガンインばかりが注目されているが、Kリーグでプレーしている選手が21人中、15人もいることを考えると、基盤は国内リーグ選手の力によるところが大きい。

 アルゼンチン戦と日本戦でゴールを決めたオ・セフン(牙山ムグンファFC)は193センチの長身FWで空中戦を得意とするが、彼の所属チームが2部のKリーグ2だということはあまり知られていない。

 今季はリーグ戦で9試合に出場して3得点、2アシストを記録している選手だ。

 さらにアルゼンチン戦で得点したFWチョ・ヨンウク(FCソウル)は今季リーグ8試合に出場して、1得点1アシスト。

 セネガル戦でゴールを決めたDFイ・ジェイク(江原FC)とDFイ・ジソル(大田シチズン)は共にディフェンダーだが、得点に絡んだ。イ・ジソルが所属する大田シチズンも2部のKリーグ2である。

 そして準決勝のエクアドル戦で決勝点を決めたDFチェ・ジュンは、延世大学校サッカー部所属の選手。チームにはもう一人、高麗大学校サッカー部所属が代表入りしている。

 海外組、Kリーグ1部と2部のプロ国内組、さらに大学サッカー部のアマチュア選手まで全員で勝ち進んだ決勝戦だった。

99年準優勝の日本を超えられるか

 決勝の相手となるウクライナだが、準決勝でイタリアを1-0で下した粘り強さを見る限り、難しい試合になることが予想される。

 スポーツ・芸能総合サイト「OSEN」は「アジアとしては1981年のカタール、1999年の日本が決勝戦に進出しているが、いずれも敗れて準優勝に終わっている。もしウクライナに勝利すれば、アジアの国としては初の優勝となる」と伝えている。

 ちょうど20年前の1999年ワールドユースでの日本代表の準優勝は、小野伸二、稲本潤一、遠藤保仁、高原直泰、本山雅志など“黄金世代”と言われた豪華メンバーから、今でも色あせない記憶として人々の記憶に残っている。

 若き韓国代表は、それを超えられるのだろうか――。ここまで勝ち進んだならば、アジアと世界のサッカー史に新たな一ページを刻みこんでもらいたい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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