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ドバイにある北朝鮮レストランに潜入!愛嬌たっぷりサービス満点、美人ウェイトレスの素顔とは!?

金明昱スポーツライター
UAEのドバイにある北朝鮮レストランで公演するウェイトレスたち(筆者撮影)

 そこには明るく、活発な会話と笑顔、そして楽しい時間が流れていた。

 サッカーアジアカップのグループリーグ初戦で、サウジアラビアに0-4と惨敗した北朝鮮代表の取材をした翌日の夜、私はドバイにある北朝鮮レストラン「玉流館」を訪れていた。

 ドバイの中心部にある「玉流館」は、北朝鮮でもっとも有名でおいしい平壌冷麺が味わえる「玉流館」の支店のようなものだろう。

 北朝鮮と同じ味の平壌冷麺がドバイで食べられるわけだが、南北首脳会談の時に韓国の文在寅大統領が平壌冷麺を味わったこともあり、ここUAEでも現地で働く韓国人たちに人気を博していると聞いた。

 お店の前に到着すると看板は見えたが外観は薄暗い。少し入りにくい雰囲気があったが、ドアを開けると一気に明るくなった。

ドバイにある北朝鮮レストランの入口
ドバイにある北朝鮮レストランの入口

「アンニョンハセヨ!(こんばんは!)」「オソオセヨ!(いらっしゃいませ!)」

 入ろうとちゅうちょする私を見つけた女性が招き入れてくれた。ウェイトレスは4~5人いた。どの女性も若く20代から30代といったところだろうか。

 ソウルで聞く発音とはまた違う、久しぶりに聞いた平壌なまりの言葉がとても懐かしい。そもそもドバイで北朝鮮の雰囲気を味わえることは、想像もしていなかった。

 店内は4人がけのテーブル席が10席ほどあっただろうか。先客で現地UAEの家族の姿が見え、中国人や韓国人男性らが6人ほど料理を楽しんでいた。

 驚いたのは一番奥にステージがあったこと。噂では聞いていたが、20時から公演が行われるらしい。

明るい店内。UAE在住の家族や韓国人などが食事を楽しんでいた
明るい店内。UAE在住の家族や韓国人などが食事を楽しんでいた

「撮影OK」だった美人ウェイトレス

 前日の試合でサウジアラビア記者が隣で大喜びするのを見ながら、北朝鮮代表のふがいなさにむしゃくしゃしていたのだが、美人ウェイトレスの笑顔で、そんな感情も一気に吹き飛んでしまっていた。

 メニューを持ってきたウェイトレス。この人がまた美人だった。彼女は英語で話してきたが、すぐに日本から来た在日コリアンであることを伝えると、すぐに朝鮮語で返してきた。

「オススメはなんですか?」と聞くと、「なんでもおいしいですから(笑)」と笑顔を見せる。

 そう言われても困ったが、やはり最後は「平壌冷麺は食べてくださいね」と言う。

スマホを向けるとにっこりと笑顔を見せてくれたウェイトレス
スマホを向けるとにっこりと笑顔を見せてくれたウェイトレス

 メニューを見た。

「平壌冷麺 200グラム」:50ディルハム(約1500円)

「チェンバンクッス200グラム」:55ディルハム(1650円)

「海鮮チヂミ」:45ディルハム(1350円)

 そもそもドバイは基本的に物価が高い。中心部の小奇麗なレストランなら、もう少し高いので、この店はまだ良心的だ。私はチェンバンクッスと海鮮チヂミを注文した。

 ウェイトレスがおもむろに「このメニューは日本語でなんて言うんですか?」と聞いてきたり、こちらとの会話を楽しもうとかなり積極的だった。

 待っていると出された平壌冷麺を食べやすくほどき、酢などの調味料も適度にかけてくれた。そんなことまでちゃんとやってくれるのかと感心し、隣でジッと見守っていた。

「写真を撮ってもいいんですか?」と聞くと「ええ、もちろんいいですよ」と笑顔で答えてくれた。人当たりがよく、会話もスムーズ。これなら韓国人サラリーマンに人気なのがよく分かる気がした。

アジアカップの応援に駆け付けていた店員

 北朝鮮現地の人と話す機会も中々ないと思い、いろんな話を振ってみた。

「昨日、サッカーの朝鮮代表の試合の取材に行ってたんですよ」

「え、取材に行かれてたんですか?」とびっくりするウェイトレス。「私も現地で応援していましたよ!」。

 やはりそうだと思った。一瞬、どこかで見たことある顔だと思ったが、撮った写真にバッチリ写っているではないか。

 サウジアラビア戦のバックスタンドに北朝鮮レストランの従業員がいたのだ。

 写真を見せると大爆笑する彼女。何度も写真を見て、笑っていたが、やはり0-4で敗れたことはとてもショックだったようだ。

アジアカップの北朝鮮対サウジアラビアの試合の応援に駆けつけたウェイトレス
アジアカップの北朝鮮対サウジアラビアの試合の応援に駆けつけたウェイトレス

「がんばって応援したのに負けてしまいましたね……。でも試合には勝ち負けがあるので、しょうがないことですよ!次、がんばってもらいましょう」

 前向きでとても明るい。そんな彼女たちは平壌から遠く離れたUAEで普段、どのような生活をしているのだろう。

 聞いてもあやふやにされるのかと思ったのだが、彼女はしっかりと色んなことを教えてくれた。

UAEに3店舗もある北朝鮮レストラン

「UAEにはドバイに2店舗とアブダビに1店舗あるんです。営業時間は年中無休で午前9時から0時までで、自分の休みは週1回です」

 UAEに3店舗も北朝鮮レストランがあることに驚いたが、もっとびっくりしたのは営業時間だ。店は休まず営業し、9時から夜の0時までとは恐れ入る。もちろん交代制なのだろうが、決して楽な仕事ではないだろう。

 さらにこんな情報も教えてくれた。

「私はここで働いて4年目になります。もうベテランですよね(笑)。だいたい1~2年で交代するのですが、私は長くなりました。年に1回だけ休みで平壌に帰るのですが、その時に1カ月の休暇をもらうんですよ。ささ、早く食べてくださいね」

 遠くUAEで暮らすのもまた楽しいのかもしれないが、家族と離れる寂しさもあるだろう。いろんなことを頭の中で思いめぐらしながら、平壌冷麺を口に入れた。

名物の平壌冷麺。UAEのドバイで食べる冷麺は本場平壌とほぼ同じ盛り付けと味付けだった
名物の平壌冷麺。UAEのドバイで食べる冷麺は本場平壌とほぼ同じ盛り付けと味付けだった

 それにしても胃にしみわたるスープと麺。平壌冷麺を何年ぶりに味わっただろうか。とても懐かしく、とてもおいしかった。

「平壌でこの冷麺、食べたことがあるんですよ」

 そう伝えるとウェイトレスは目を丸くして「行かれたことがあるんですか?これ現地から麺を仕入れているんですよ」と言っていた。

 味は確かで現地から材料を仕入れなければ、本場の味をここまで再現できないはずだ。

 黙々と食べていると「海鮮チヂミはおいしいですか?」と別のウェイトレスが聞いてきた。

「おいしいですよ!」と答えると、「次は不味く作りますから(笑)」と舌を出して愛嬌たっぷりの笑顔を見せる。

 この人当たりの良さは一体なんなのだろうか。きっとリピートを狙っているんだなと少々勘繰りたくもなった。

 それにしても接客してくれた彼女たちはとても明るい。韓国人や中国人、現地UAEの人たちの中にも常連客もいるようで、楽しそうに会話している姿がとても印象的だった。

舞台では自慢の歌を披露
舞台では自慢の歌を披露

北朝鮮代表選手もドバイで平壌冷麺を食す

 実はこのお店を訪れる前、東京ヴェルディ所属で北朝鮮代表MF李栄直が「そのお店、去年末に行きましたよ!」と教えてくれていた。

 北朝鮮代表選手たちは、サッカーアジアカップが行われている間、この店で食事をしていたのだ。

 選手たちもつかの間の疲れを癒すかのように、母国の料理に舌鼓を打っていたに違いない。

 世界各国に北朝鮮レストランが多く点在するのはよく知られているが、中国では国連安全保障理事会の制裁決議で相次いで閉鎖に追い込まれていた時期があった。だが、中朝関係改善による影響からか、去年の半ばくらいから徐々に営業を開始し始めたという話も聞く。

 採算が取れる店は残し、売り上げが伸びない店は閉店しているのだろう。ドバイ店は現地では評判のいいお店なのは間違いない。

民族楽器の演奏も聞くことができた
民族楽器の演奏も聞くことができた

プロ顔負けの公演は約20分

 そうこうしているうちに、毎日20時から始まるという公演が始まった。そこに登場したのは、今まで接客していたウェイトレス。いつの間にか豪華な衣装に着替えて、それぞれの演目がスタートした。

アコーディオンの演奏はプロ級だった
アコーディオンの演奏はプロ級だった

 プロ顔負けの独唱に始まり、K-POPアイドルをほうふつとさせる(!?)女性グループでの歌とダンス、アコーディオン演奏、民族衣装を着ての民族楽器「カヤグム」演奏と次々と繰り出される生公演に圧倒された。

 舞台から降りて、食事している客の前で歌い、花束を渡す演出もあり、逆に韓国人客が舞台の女性に花束を手渡しにいったりと、それこそ見ている人を飽きさせない本格的なショーだった。

 意外にも店内や公演の様子も、写真や動画で撮り放題で、とがめられるようなことは一度もなかった。

 20分ほどの怒涛の公演が終わり店を出た。「また来てくださいね!」と外でずっと手を振るウェイトレスの彼女。中に入ってくださいと言っても、まだ手を振っている。

 若いながらも遠くUAEで明るく働く北朝鮮女性のたくましさと明るさに、少しばかり力をもらった夜だった。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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