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Jリーグに韓国人GKが増えた理由~ヴィッセル神戸GKキム・スンギュに聞いた!【インタビュー後編】

金明昱スポーツライター
韓国代表GKのポジション争いに勝つためにもJリーグで結果を残したいところ(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 ヴィッセル神戸で3年目のシーズンを迎えているキム・スンギュ。彼のほかにも多くの韓国人GKが日本でプレーしているが、その理由についても考えているようで、正直に話してくれた。また、JリーグとKリーグの攻撃スタイルの違いについても語ってくれた。

【インタビュー前編】:ヴィッセル神戸GKキム・スンギュが一目置く日本代表GKとは?

「出られないときほどしっかり準備する」

――ロシアW杯ではメンバーに選ばれながらも、ピッチに立てなかったのは残念でした。その悔しさもあると思います。

 ロシアW杯では韓国代表に選ばれたことはともて光栄でした。自分の目標でもあったので、まずはそれを達成できたことはうれしかった。ただ、自分だけを考えるのではなく、あくまでも韓国代表の一員に選ばれたからには、一丸となって勝利を目指すことが大事です。試合に出られなくても、学ぶことはたくさんあります。試合に出られなかった悔しさは少しはありますが、絶対に出たかったということでもありません。ポジション争いはこれまでもたくさん経験していますから、出られないときほど、チャンスが巡ってきたときのためにしっかりと準備をしておくことが、GKにとって一番大事なことだと思います。

――韓国代表は新たに、かつてポルトガル代表監督も務めたパウロ・ベント監督が指揮官となりました。コスタリカ(2-0)、チリ(0-0)、ウルグアイ(2-1)、パナマ(2-2)と4戦2勝2分と負けなしです。監督の戦術にはどのような印象を受けていますか?

 ベント監督になって チームがガラリと変わったわけではありません。W杯を戦った選手も含め、既存のスタイルを受け継いだ上で、徐々に自分たちのスタイルにチームを作っていく段階です。この国際親善試合で、結果を残したので、成果や課題が見えたと思います。これからどんどんいいチームになっていくと感じています。見た目はすごく厳格に見えるのですが、すごく雰囲気のある監督で、選手にたくさん話しかけてくれて、コミュニケーションも取ってくれます。冗談を言ったり、笑かしたりして、チームの雰囲気を良くしてくれる監督ですね。

――国際親善試合でのGKの出場状況を見ると、ロシアW杯でゴールを守ったチョ・ヒョヌ選手(大邱FC)やセレッソ大阪のキム・ジンヒョン選手にもチャンスが与えられていました。来年1月のアジアカップに向けてレギュラー争いも始まりますね。

 それについてはいつものことなので、自分のやることに集中するだけです。代表では常にポジション争いになるので、とにかく良いコンディションを維持していくことがとても大事です。Jリーグでいいパフォーマンスを見せることで、代表でも結果を残すことができますからね。

「日本のGKにも優れた選手は多い」

――現在、Jリーグには多くの韓国人GKがプレーしています。それも代表クラスの選手が多いですが、なぜ韓国人GKがJリーグに必要とされていると思いますか?

 それぞれのクラブ事情があると思うので、その辺は詳しくは分かりません。ただ、韓国のGKがJリーグに多いからといって、日本のGKが劣っているわけではありませんし、優れた選手はたくさんいます。それに10年前のJリーグを見ても、外国人GKはそこまで多くなかったと思います。Kリーグの規模は大きくなくて、現在の1部のチーム数は12チームと多くありません。韓国の場合は、外国人GKを呼ぶと、国内選手のポジションがなくなる可能性は大きかったはずです。ただ、Jリーグは J 1からJ3まであるので、日本のGKが経験を積む場所はありますし 、一概に外国人GKが多いということで 日本のGKのスキルが低くなるということは考えにくいと思います。

(※Kリーグは1999年からGKのポジションに韓国籍を持たない選手は登録できない規定を設けている)

――韓国GKに対するコーチの指導が良いということでしょうか?

 韓国人GKのスキルは常に試合に出て経験も積むことも大事ですが、これまで国内で長らくプレーしてきた先輩たちの経験を見ながら、下の選手たちが育ってきているので、そうした一面は大きいかもしれません。

――中国リーグも自国選手しか使えない規定があり、中東は欧州からGKを獲得する傾向があります。すると必然的に日本が選択肢になるような気もします。

 そのような流れは確かにあると思いますが、韓国の選手がJリーグを選ぶのは、昔からの流れで、海外挑戦するなら日本も一つの選択肢に入っていると思います。私もチャンスがあれば海外でプレーしたいという考えを持っていましたし、Jリーグにもチャレンジしてみたいと思っていました。海外でプレーするという気持ちは強かったです。

「日本はサイドからのクロス、韓国はミドルシュートが多い」

――ゴールを守っていると、JリーグとKリーグでは攻撃のスタイルがかなり違うと感じると思います。何か特徴はありますか?

 日本の場合は、ゴール前までくるとサイドからクロスを選択することが多いかなと感じますね。サイドハーフやサイドバックからの攻撃展開から、クロスを上げてチャンスを作る。Kリーグでプレーした立場からすれば、ミドルシュートはJリーグよりも多いと思います。その辺は、かなり意識の差があると感じます。FWがシュートを打つ意識は日本も韓国もそこまで大差はないと思います。ただ、外国人FWは、ゴール前にいると積極的にシュートを打ってきますね。

――最後に、今後の目標について教えてください。

 リーグ戦も残り少ないですが、リーグ優勝とACLに出て優勝することが今の私の大きな目標です。今年はもう試合が残り少ないですが、まずはリーグ戦でいい成績を残さないといけません。これからもチームの勝利に貢献できるようにいいプレーをして、もしチャンスがあれば欧州でプレーしたいという思いもあります。プロサッカー選手としての夢は大きく持っていたいです。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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