Yahoo!ニュース

今夜、アジア大会サッカー日本代表の敗戦もありえる!?ベトナム代表の韓国人監督が英雄扱いされているワケ

金明昱スポーツライター
今年1月のAFC U-23選手権でベトナムが準優勝し、国中がお祭り騒ぎとなった(写真:ロイター/アフロ)

 ジャカルタ・アジア大会の男子サッカーでD組の日本代表は、初戦のネパールに1-0、2戦目のパキスタンに4-0で2連勝し、勝ち点6で同組2位以上が確定した。

 1試合を残して決勝トーナメント進出を決めたわけだが、ここで警戒しておかないといけないのが、19日に行われるグループリーグ最終戦、ベトナムとの試合だ。

 ベトナムも初戦のパキスタンに3-0、ネパールに2-0で勝利して2連勝し、勝ち点6。得失点差も同じで、グループ1位で日本と並んだ。つまり、最後の試合が首位攻防戦となるわけだ。

 「日本がベトナムに負けるはずがない」と思う人が大半だろうが、今回は油断しないほうがいいかもしれない。

 今大会、ベトナムはオーバーエイジ枠3人をフルに使い、戦力を補強。それに加え、1月のU―23アジア選手権で5得点を挙げた21歳のMFグエン・クアン・ハイなど、才能豊かな選手がそろう。

 ちなみにMFグエン・クアン・ハイの最大の武器は鋭い左足のFKで、元日本代表の中村俊輔(ジュビロ磐田)をほうふつとさせる。

 さらに、チームを率いるのが韓国人のパク・ハンソ監督なのだが、ベトナムでは“英雄”扱いされており、「ベトナムには彼の名を知らない人はいない」とも言われている。

 その理由は、今年1月の快挙が発端となっている。

AFCU-23選手権で準優勝

 “パク・ハンソ マジック”――。韓国メディアは当時の出来事をそう表現した。

 そもそも、パク・ハンソ監督とは何者なのか。現役時代は韓国のKリーグでプレー。選手生活から退いたあと、国内クラブの慶南FC、全南ドラゴンズ、尚武尚州などで監督を歴任。韓国代表コーチやU-23韓国代表監督なども務めた。

 2017年10月にベトナムサッカー連盟とA代表監督の契約を交わし、U-23代表監督も兼任することが決まった。

 彼のハイライトは今年1月に開催されたAFCU-23選手権だ。

 パク・ハンソ監督率いるベトナムは、グループリーグ初戦で韓国に敗れたものの、第2戦目のオーストラリアを1-0で下し、第3戦のシリアに0-0で引き分けて、勝ち点4でグループ2位。8チームによる決勝トーナメントに進出した。

 準々決勝では強豪イラクを相手に3-3のドローからPK戦で勝利。続く準決勝でもカタールに2-2で引き分け、PKで劇的勝利を収めて、決勝へ進出した。

 決勝ではウズベキスタンに2-1で惜しくも敗れたが、アジアの勢力図が変わりつつあるのを予感させてくれる大会だった。

“ベトナムのヒディンク”

 サッカーでは後進国と言われ続けていたベトナム初の快挙に国中が沸いた。

 当時、ベトナム現地の盛り上がりと興奮する国民の様子を韓国紙「スポーツ京郷」はこう伝えている。

「“パク・ハンソ マジック”がベトナムを熱く沸かしている。首都ハノイはもちろん、主要都市で赤いTシャツを着て、道路で応援をするファンは快挙を満喫していた。ベトナムは元々、サッカー人気は熱いが、実力が落ちるため、アジアの舞台では何度も涙を飲んできた」

 ベトナムのメディアは、現地のサッカー解説者の話として「パク監督はベトナムのヒディンクだ。パク監督は、ファンに驚くプレゼントを贈るという約束を守った」と伝えている。

 また、この快挙にベトナムの総理大臣が「政府に代わり代表チーム、特にパク・ハンソ監督にお祝いの言葉を贈りたい」と祝電を送ったほどだ。

 パク監督は、ベトナムの選手たちに組織力の大切さを強調しているという。特にピッチの上で劣勢に立たされたときでも、攻撃的な布陣で攻めの姿勢を貫き通す采配が、選手にも浸透しているのが強みだろう。

 日本戦を前に「ベストを尽くす」と意気込んでおり、気合十分。またもや“パク・ハンソ マジック”がベトナムに勝利を呼び込むのか――。19日の日本戦に注目したい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

金明昱の最近の記事