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「これは自分自身の問題」元賞金女王イ・ボミの長引く休養と不調の理由…後半戦の出場はどうなる!?

金明昱スポーツライター
イ・ボミの復活が待ち遠しい(写真・KLPGA提供)

 もう燃え尽きてしまったのだろうか――。

 賞金ランキング85位。今シーズンの日本女子ゴルフツアーで現在、その位置にいるのは紛れもなく「イ・ボミ」だ。

 2015年、2016年に2年連続賞金女王となり、日本ツアー通算21勝。昨年は1勝にとどまったが、同23位と面目を保った。だが、今季は11試合に出場して、4試合予選落ちし、トップ10入りは一度もない。

 それも6月の宮里藍サントリーレディスオープンに出場したのを最後に姿を見せていない。

 日本女子プロゴルフ協会(LPGA)によれば、「大東建託・いい部屋ネットレディス(7月26~29日)から出場する」とのことだ。実質、5試合連続の欠場となるが、イ・ボミが日本ツアーに参戦してからは当然、初めての出来事である。

不調の原因は様々

 彼女は一体、いまどのような状態にあるのか。

 私のもとにも色んな質問が寄せられているのだが、近況を直接聞いたわけではないので、不調の原因を特定するのは難しい。

 公になっている情報としては、試合を欠場する前は首と肩の痛みを訴えており、「最近は体調がすぐれない」とも口にしていた。

 ただ、それだけではない。元々、女子ツアーでも屈指のショットメーカーと言われたイ・ボミだが、長らく“ショット”のことで悩み、自信を失っていた。

 ドライバーやアイアンの精度が落ちるため、かつての感覚を取り戻すため、必死に修正を続けていた。

 今季、ここまでの平均ストロークは73.1404の58位、フェアウェイキープ率58.6634%の75位、パーオン率61.3027%の72位など、各部門のスタッツを見れば、不調であるのは一目瞭然だ。

 中々結果が出ないことで、精神的なストレスを抱えていたことも欠場の理由だろう。

「自分自身の問題」

 今年4月にイ・ボミに話を聞いたとき、こう話していた。

「本当に、これはもう自分自身の問題なんです。いい結果を残したいのですが、ショットについていろいろと考えてしまう。ミスショットも、以前は右に飛んでいくだけだったのが、今は左にも飛んでいくこともあります。ただ、コンディションは悪くありませんし、トレーニングもしっかりできています。重要なことは、余計なことを考えずにスイングのリズムやタイミングをつかむこと。それがうまくいくと信じていますし、それができれば、結果もついてくると思っています」

 自分との戦いも、これだけ長く続けば、精神的にもきつい。それならば、5試合連続欠場を後ろ向きにとらえるのではなく、英気を養っていると考えたほうがいい。

 母のファジャさんも「体力的にも精神的にもしっかり休むことが大事な時期。後半戦からはもう心配ありません」と語っていた。

今は沈黙を守っているが…

 去年、イ・ボミは1勝しているが、8月まで勝てなかった。その時、「こんな状況は私のゴルフ人生では初めて」と話していたが、今年はそれ以上の試練が待っていた。

 ただ、逃げるわけにもいかない。日本ツアーに参戦している以上、戦いの場を避けては通れない。

 現在は韓国メディアにも露出がなく、SNSのインスタグラムにも新たな投稿がないのを見ると、今は静かに時を待っているのだろう。

 後半戦は残り20試合あるが、仲のいい韓国のゴルフ担当記者から聞いた話によれば、「イ・ボミは復活優勝も狙っている」と言う。燃え尽きるのはまだ早い。

 日本のファンの前に姿を見せるのは約2週間後。心機一転、再び強いイ・ボミが見られるのを期待したい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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