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神戸のヘッドコーチ就任で10年ぶりJ復帰のエンゲルス氏、実は北朝鮮協会からのオファーも受けていた?!

金明昱スポーツライター
ヴィッセル神戸のヘッドコーチに就任したゲルト・エンゲルス氏(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

 J1ヴィッセル神戸のヘッドコーチに、ドイツ出身のゲルト・エンゲルス氏が就任したというニュースが飛び込んできた。

 エンゲルス氏は1998年から横浜フリューゲルスでコーチを務め、その後、ジェフユナイテッド市原、京都パープルサンガ、浦和レッズでヘッドコーチや監督を務めた。

 2008年に浦和レッズで監督を務めたのを最後に日本を離れたが、11年から13年まではモザンビーク代表監督を務めていた。

 それからヴィッセル神戸のヘッドコーチ就任が決まるまで、4年の空白期間がある。

 その間、いくつかのチームからオファーがあったと聞いたことがあるが、実は朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)サッカー協会が、国内の強豪クラブチーム監督のポジションを用意していたというのだ。

 現在、北朝鮮代表を指揮しているのは、元ノルウェー代表FWのヨルン・アンデルセン監督だが、2年前に数人の外国人指揮官をリストアップしていて、その中にエンゲルス氏がいたという。

契約合意直前まで行ったが……

 私が2年前に在日コリアンのサッカー関係者から聞いた話によればこうだ。

「選手の育成能力やチームを作っていく組織力に定評があり、実績も十分のエンゲルス氏ですから、朝鮮サッカー協会関係者も納得の人物でした。実は当時、水面下で交渉は進んでいました。エンゲルス氏は平壌を訪れ、国内クラブチーム監督の話もまとまりつつありました。あとはエンゲルス氏がドイツでメディカルチェックを受けて、医師からOKが出ればよかったのですが、結果的に健康状態が良くないとの判断が下り、監督業をするのが難しくなったのです。残念ながら最終的に合意に至りませんでした」

 北朝鮮も自国代表を強化し、2020年のカタールW杯出場を目指している。それに昨年12月から通年で初めて国内リーグがスタートしたこともあり、優秀な指導者に触手が伸びるのは至極当然のこと。

参考:北朝鮮で初となるサッカー1部リーグの通年開催! 日本人が知らないその中身とは!?

 当時、どのチームとも契約を交わしていないエンゲルス氏は、北朝鮮にとっては是が非でも招き入れたい指導者だったわけだ。

 それに北朝鮮代表には、日本で生まれ育った在日Jリーガーが数人いるため、「Jリーグを経験したエンゲルス氏が北朝鮮国内チームの監督になれば、代表選手を選ぶ際の情報交換などもスムーズに進んだはずです」(前出の関係者)と話していた。

 その後、エンゲルス氏がどうしているのか気になっていたのだが、Jリーグに戻ってきたニュースを見る限りでは、体調も良好で現場復帰できるようになったということなのだろう。

 10年ぶりのJリーグでの指揮は多少のブランクはあるかもしれないが、今季はヴィッセル神戸でどのような手腕を発揮できるのか注目したい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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