京都の出版社が伝説の映画本を復刊 スピルバーグに次ぐ第2、第3、第4のラインナップも発表

写真提供:宮帯出版社

 本が売れないという話はもはや聞き飽きた。本に関していい話はないかと思えば、歴史・茶道・美術(主に刀剣・甲冑・陶磁)などのジャンルを得意とする京都の宮帯出版社が、映画クリエーターに関する書籍シリーズの刊行を開始した。その名も「フィルムメーカーズ」。

 

 映画好きの方なら見覚えがあるシリーズかもしれない。映画の専門誌「キネマ旬報」から1997年から2001年にかけて出版された、海外と国内の著名な映画作家(映画監督)の魅力を掘り下げ、一人一冊の形で特集したのムックの復刊である。当時、宮崎駿、北野武、クエンティン・タランティーノ、クリント・イーストウッド、ティム・バートンなどがラインナップに並び、17巻まで刊行され、中には4万部以上売れたものもあった。いま、書籍が1万部売れたらいいほうという時代とは大違い。しかも、映画監督の本というニッチなジャンルでのことだから驚く。

 

 その夢、再びーー、今度は、00年代、10年代と次々現れる新世代の映画作家もとりあげるべく、18年ぶりの復活だ。

 手始めは、現在も影響力を誇るベテランの監督をと、巨匠スティーヴン・スピルバーグを取り上げた。責任編集に南波克行(アメリカ映画を中心に研究・執筆を行う批評家)を迎え、大ヒットしたSFファンタジー『E.T.』から、『インディ・ジョーンズ』シリーズ、『ジュラシック・パーク』シリーズ、最新作『レディ・プレイヤー1』『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』など、全作品を網羅、充実した完全データ。名作の名場面をカラー24ページで紹介。実力派の批評家たちによる、作家論、作品論、音楽論、製作総指揮作品について、徹底解剖する。構成は旧シリーズを踏襲しながら、新たに伝記的な事実を描いた「ライフストーリー」が加わった。

 

 復刊の立役者は、キネマ旬報版を企画、編集担当だった西田宣善。今回の刊行についてこう語る。

「キネマ旬報社から出ていたのを宮帯出版社から復刊した。復刊というと、前にあった本をそのまま出したように思われるが、実際は新しい原稿で出版したもの。2作品以上をまとめて批評を頼んだので、それは無茶ぶりだったがそれでも綺羅星のような評論家の方に書いていただいた」

 宮帯出版社の宮下玄覇代表取締役社長は映画及び映画に関する書籍に興味がもっていて、今回の復刊につながったという。京都はそもそも日本映画発祥の地でもあり、2021年までには文化庁の移転が予定されている。映画という文化の歴史を遺す書籍を京都の出版社が出すことにも親和性が感じられるではないか。

 

 「スティーヴン・スピルバーグ」は2月に発売、売れ行きも評判も上々だ。第2弾は、ギジェルモ・デル・トロ( 責任編集:大森望)、第3弾は大林宣彦 (責任編集:樋口尚文)、第4弾はゴダール (責任編集:佐々木敦)が決まっている。

 この本の特性は、対象に造詣の深い評論家が責任編集として立ち、本の構成、執筆陣の選定などを行うこと。映画監督のラインナップだけでなく責任編集者の顔ぶれも毎回楽しみだ。ちなみに、キネマ旬報社版では、忌野清志郎が「竹中直人」に「無・責任編集」という肩書で参加していたほか、「宮崎駿」は養老孟司が責任編集だった。責任編集者ほか、執筆陣も充実させ、映画評論などで一流のライターによるコラムやインタビュー記事などで、映画作家の実像に迫る。

 

 3月23日(土)14時から、八重洲ブックセンターで、伝説の映画本「フィルムメーカーズ」シリーズ再始動記念トークショー“南波克行&樋口尚文が語る「これからのスピルバーグ体験」”が行われる。