高橋一生、竹内涼真、役所広司らが演じた2017年ドラマの登場人物と『逃げ恥』から考えるオトコの進路

(ペイレスイメージズ/アフロ)

大河ドラマも『逃げ恥』にあやかりたい?

 2017年の最後を飾るように、この年放送されたテレビドラマを振り返る総集編などが放送されているなか、2016年の大ヒットドラマ契約結婚から愛を育む男女を描いた『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS 以下『逃げ恥』)が、31日、1月1日の2日間にわたり、全話放送される。

 

 しかも、前日、30日放送の大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK)総集編の第三章のタイトルは『逃げ恥』をもじったかのような『逃げるは恥だが時に勝つ』。となれば、16年下半期に放送された『逃げ恥』こそが17年のドラマのムードを牽引したとも言ってもいいのではないか。そのムードに名前をつけるとすれば、“逆ビューネくん現象”だ。

竹内涼真が慰めて抱きしめられた『過保護のカホコ』

 ビューネくんとは、「慰めて抱きしめる」をキャッチコピーにした化粧水のCMキャラで、働き疲れた女性が夜、家に帰ると、妖精のような男子が待っていて、優しくしてくれる。

 

 初代ビューネくんは藤木直人で、その後、押尾学、松田翔太ときて、17年は、竹内涼真が四代目ビューネくんになった。朝ドラ『ひよっこ』(NHK)、水曜ドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ)、日曜劇場『陸王』(TBS)と人気ドラマに連続出演し、話題をさらった、今年の顔のひとり、竹内が、話をうんうん聞いてくれたり、やみくもに応援してくれたり、風呂上がり、濡れた髪の毛にドライヤーをかけてくれたりする映像に、ひととき心をもってかれた女性も多いはず。

 

 筆者は拙著『みんなの朝ドラ』で、朝ドラヒロインの相手役はビューネくん的な人物が好まれるとし、その代表格を、『あさが来た』(15年)の玉木宏演じる新次郎であると書いたこともあり、にもかかわらず、なぜ、逆ビューネくんかというと、その竹内涼真が、『過保護のカホコ』で、高畑充希が演じる主人公に慰めて抱きしめられてしまうからだ。

高橋一生が膝枕してもらってた『おんな城主 直虎』

 最初、竹内演じる美大生は、高畑演じる、ちょっとトロいところのあるカホコを振り回していたが、8話では、弱みが出てきて、いつの間にか、カホコがお母さんのように彼を慰めて抱きしめる。

 

 同じく7月期の日曜劇場『ごめん、愛してる』(TBS)でも、長瀬智也演じる、天涯孤独なうえに病を抱えた、ハードボイルドふうの主人公が、今年の『紅白歌合戦』の審査員もつとめるほどの注目株・吉岡里帆演じる女性に、抱きしめて慰められた。

 

 また、『おんな城主 直虎』では、主人公・直虎(柴咲コウ)への献身と、壮絶な死に様に、多くの視聴者が夢中になった高橋一生が演じる政次も、33話、壮絶な死を遂げる直前、義妹(山口紗弥加)の膝枕で癒されている。クールで本心を見せないできた政次が、献身的に支えてくれた義妹に、ほかの人には見せない顔を見せるシーンは名場面のひとつだ。

役所広司が息子に肩を抱かれて涙ぐんだ『陸王』

 男が女にではなく、男を女が慰めて抱きしめる、逆ビューネくんパターンは、秋のドラマにも見られた。

 最終回の視聴率が20%を超えた『陸王』は、老舗の足袋製造会社を再興すべく奮闘する男たちの骨太で実直な物語だったが、6話のラストシーンで、役所広司演じる主人公が、度重なる困難に必死に堪えているところ、息子(山崎賢人)に励ますように肩を抱かれ、思わず泣いてしまう。これは、女性が男性にではないが、その応用パターンと言っていいだろう。本来、強くて大きな存在である父が、息子に弱いところを晒し、慰めて抱きしめられる場面は、新鮮に映った(役所広司がかなり男泣き演技をしているので余計に)。

 

 そしてもう一度、高橋一生。月9『民衆の敵』(10月期 フジテレビ)での高橋一生が演じる若き政治家は、その本職を隠し、殺風景で暗い部屋にデリヘル嬢をたびたび呼んでは、政治の世界とかけ離れた、無邪気で無知な彼女に癒やされていた。

 

 高橋が出ている(今年は高橋と竹内が大活躍であった)朝ドラ『わろてんか』(NHK)も、主人公(葵わかな)の夫(松坂桃李)は、売れない芸人時代、主人公にはじめて笑ってもらって(ここが慰めて抱きしめるに当たる部分)、生きる自信を見い出し、さらに、寄席をやるという目標まで与えてもらい、充実した人生を送るのである。

綾波レイの「わたしが守るもの」願望か

 ドラマの視聴者は女性が多いので、イケメンが必須であり、そのイケメンはヒロインを励ましたり引っ張ってくれたりするキャラクターが好まれた(ものすごく遡れば、月9『東京ラブストーリー』(91年)は、女性(鈴木保奈美)が男性(織田裕二)を振り回していたが)。

 ところが2017年はあからさまに、弱った男性を女性が癒やすところが描かれて、それはまるで『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイが主人公に言う台詞「あなたは死なないわ。わたしが守るもの」で、これは少年漫画に多く見られる男性の女性に対する願望だったはずだが、ドラマを見る男性を増やしたいのか、女性が、慰めて抱きしめられるより、慰めて抱きしめたくなっちゃったのか。

 

 女性向け漫画が原作の『逃げ恥』(ドラマにはエヴァのパロディもあった)でも、新垣結衣演じるみくりと星野源演じるプロの独身を長く続けてきた平匡との関係は、女性がリードする形になる。

 10話では、性体験のない平匡をみくりのほうがリードし、翌朝、目が覚めたとき「おめでとうございます」と初体験を終えた平匡をいたわるという、通常とは逆の展開が描かれた。ふつうは、朝、女が目覚めると横にいる男が優しく微笑んでくれて改めて幸福に浸るみたいな感じだろう。ここでも逆・慰めて抱きしめる現象が起こっていた。

 『逃げ恥』は、「ハグの日」エピソードなど、みくりが平匡に癒やされるときもあったが、それも、平匡が女性(みくり)を癒やしてあげられることで癒されるということでもある。

 慰めて抱きしめてもらうのは当たり前。たまに、逆にまわることで、よりいっそう癒される。女性がいっそう欲張りになったことでもあるし、男性が弱さを見せてもよくなったことでもあり。いずれにせよ、男性はこういうもの、女性はこういうものと、一面的な役割を強いることのないドラマが増えたことは興味深い。

 はたして、2018年もこの流れが続くか、新たな潮流があるか、注視していきたい。

『逃げるは恥だが役に立つ』一挙放送(一部地域をのぞく)

2017年 12月31日(日) 1話~3話:午前 8時55分~ 11時45分   4話~8話:午前11時55分~午後4時30分  

2018年 1月 1日(月・祝) 9話~11話:午後 2時30分~ 5時30分  

    

『おんな城主直虎』総集編

2017年 12月30日(土) 第一章「これが次郎の生きる道」 午後1時5分~午後2時 第二章「直虎の覚醒」午後2時~午後2時59分  第三章「逃げるは恥だが時に勝つ」 午後3時5分~午後4時30分 第四章「井伊谷は緑なり」 午後4時30分~午後5時43分