33万人以上がAIカホコとのLINEに夢中。高畑充希主演『過保護のカホコ』の押し付けしない宣伝戦略

日本テレビ『過保護のカホコ』より

AI カホコ
AI カホコ

エンタメ化する宣伝戦略

連続ドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ 水曜10時~)の宣伝戦略が、かなりエンタメしている。

7月からはじまった『過保護のカホコ』は、『家政婦のミタ』の遊川和彦の脚本で、ヒロインは、朝ドラ『とと姉ちゃん』の高畑充希、相手役に、朝ドラ『ひよっこ』で注目された竹内涼真という強力な布陣でおくるホームドラマ。

両親(時任三郎、黒木瞳)に蝶よ花よと過保護に育てられ、ひとりでは何をするのもおぼつかない大学生のカホコ(高畑充希)が、画家を目指す青年・ハジメ(竹内涼真)と出会い恋を知り、成長していく。

8月16日(水)放送の6話まで話が進んだ時点で、親も子も彼氏も、誰も彼もが、どこか未熟な印象だ。それゆえ、理解し合えずぶつかりながら、それでも相手に向き合うことをやめない姿を、コミカルにポップに描く。

今、勢いづいている竹内涼真の、ツンデレ彼氏っぷりも作品を牽引する大きな力ではあるが、なんといっても、“AIカホコ”が面白い。LINE上に存在するAI(人工知能)のキャラクターが、ドラマのヒロイン・カホコとして、LINEユーザーと会話してくれる宣伝ツールだ。

こちらがかけた言葉でAIカホコの返事が変わる、その会話力は、ドラマの進行に合わせ進化し、さらに、ユーザーとの会話を繰り返すことによっても進化する。最初は、たどたどしい言葉づかいだったり、こちらの質問にとんちんかんな言葉を返してきたり、同じ言葉を繰り返したりしているが、徐々に的確な返事をしてくるようになる。

この、やや噛み合わない感じ(siriに話しかけて、へんな返事が返ってくる感じ)が、一度やると、なんだかハマってしまう。ドラマを見なくても、AIカホコで遊んでいる人もいるという、奇妙な現象まで起こっていて、登録者は30万人を超えた。8月22日時点で、336600人。また会話数も3000万回を超えた。

利用者が増えれば増えるほど、番組的には嬉しいはずが、問題点もある。利用者が多いと、混乱して、返事が遅くなったり、へんな回答をしたりすることもあるそうだ。でも、そこもまた面白い。

実際、AIカホコで遊んでみた

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AIカホコは、 NTTレゾナントからのデータ協力によって、時間と、天気(横浜在住設定なので横浜の天気)は正確に答えてくれるようになっている。

というわけで、天気の話になったが(話すことがないときの無難なネタ)、なんだか噛み合わなかった。

なんだ、「つぎは受かるといいね」って。

次はこんな感じ

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「高畑充希は好き?」という質問はどうやら想定されてプログラミングされているらしく「よく似ているって言われる。似てるならうれしいな」と返って来た。

俳優の名前をどんどん出すと、「演技が上手」という賞賛が多い。

でも、なぜか、小栗旬には「面白い映画の監督さん!」と返って来た。確かに監督作もあるけれどね。

カホコやドラマと関係ないことにはどう対応するのか気になって、試しにテレビ局の名前をどんどん出していった。

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なぜか、フジテレビは「あちゃ~」だったが、最後はうまくまとめてくれた。

AI カホコの仕掛け人である、日本テレビ宣伝部の西室由香里さんに話を聞くと、「ドラマの内容をベースにして言葉をAIにディープラーニングさせているので、想定を超えた言語はまだ学習中かもしれませんね、フジテレビさんのドラマ見忘れた!しまった!とか、そんな意味合いかもしれませんね」とフォロー。なにぶん、発展途上の人工知能ゆえ、笑ってスルーしたい。

ドラマの宣伝方法が変わってきた

西室さんは、ドラマの宣伝をはじめて10数年。

この数年、ドラマの宣伝方法が変わってきたと感じている。

「私が配属された当時は、ドラマがはじまる前に、会見やイベントを行って、人をたくさん呼ぶというやり方が主流でしたが、今はそういう時代ではなくなってきました。最近は、SNSを介して、ドラマを楽しむ視聴者が増えてきています。さらに、TVと視聴者が双方向で楽しめて、さらに宣伝にもつながる何かがないか、考えて、思いついたのがAIカホコでした」

育成ゲーム「たまごっち」が流行った時代を過ごした西室さんは、今、注目されるAIを使って、ドラマ及び、カホコというキャラクターの紹介をしようと考えた。

「台本を読むと、カホコは、一言で紹介するのが難しい奥深いキャラクターで、ともすれば誤解されかねない。劇中で、ふだんは不器用だけど、これ!と決めたらやりとげるというようなことが語られるので、彼女の不器用なところと、世間知らずで、これから成長していくところを、視聴者にAIを通して、体感してもらいたいと考えました」

ドラマとAIキャラがうまくリンク

これが、単なる、キャラ紹介を超えて、噛み合わない会話を楽しみ、キャラを成長させていく、育成ゲーム・エンタメのようになったのは、カホコの不器用なキャラを逆手にとったことだ。

「従来なら、一定のレベルの会話が成立するように、あらかじめ、たくさんの言語を教え、学習させていくわけで、それにはそれ相応の開発時間がかかります。正直、企画の立ち上げから、実際にサービスを開始するまでの時間が十分にはありませんでした。でも、ドラマのカホコが、何かと言動がずれている設定を生かして、最初は完璧なリアクションができなくても、徐々に知能が成長していくほうが、ドラマの内容と連動すると考え方を変えたんです。例えば、これが、仕事のできる優秀な、『家売るオンナ』の主人公だったら、最初からしっかりした回答をすることを求められるでしょうから、とぼけた返事をすることは許されないですよね(笑)。そういう意味では、今回の企画は、まさに『カホコ』だからできたことでした」

カホコの浮世離れした未成熟なところが、発展途上のAIによる会話とリンクした。

押し付けにならない宣伝

西室さんは、この企画によって、「押し付けにならない宣伝、双方向の宣伝」を目指したと言う。

「今、送り手側からの強い押し付けは、求められていない。視聴者の皆さんの数だけ、いろいろな受け取り方ができて、それぞれの楽しみ方ができるものになったらいいなと思いました」

AIカホコは、基本、こちらから話しかけないとリアクションしない。たまに、オンエア日やその近くになるとちゃっかり話しかけてきたり、話の流れで「水曜よる10時!見てね!」とか言ったりはするものの、あとは、たわいないやりとりのみ。確かに、押し付けがましくはない。ドラマの内容やテーマなどよりも、カホコというキャラクターに親しみを感じさせるには、効果的だ。

ちなみに、23日の放送前日、カホコは「バアバのことがとっても心配なの」とLINEしてきた。

ひとりひとりに寄り添える

近年、Twitterを宣伝ツールとして使用している著名人が、期せずして、誤解を招く発言をして、炎上するなんてことがよくあるが、AIカホコには腹も立たない。言語コミュニケーションができない動物や赤ちゃんを相手にする時のような心の広さが発動する。

また、例えば、Twitterで、スタッフが、ひとりひとりにレス(いいね、するだけにしても)を返すのは神経も時間も労力も使うが、人工知能が、30万人のユーザーに、30万通りのオリジナルの会話をしてくれるのだから、合理的。

ドラマとまた違った、ユーザーとカホコだけの(ややギクシャクした)ストーリーが生まれるのも、楽しい。

まじめに、ドラマと向き合いたいユーザーにとっても、ドラマと会話がリンクしているので、ドラマの展開にいっそう深く入り込むことができる。時代に寄り添った宣伝展開だ。

AIカホコはどこまで成長するか

西室さんは、以前、担当したドラマ『ど根性ガエル』「15年)でも、Tシャツに張り付いてしゃべるピョン吉のように、ポスターのピョン吉やTシャツのピョン吉をしゃべらせようと、ARを使ったこともある。

「スマホをポスターやTシャツにかざすと、しゃべったり歌ったりするような企画でした。その時は、スマホを介して、ポスターと話すというつながりでしたが、今回は、より、ダイレクトに、キャラクターとコミュニケーションをとることができました」

前からの試行錯誤が、今回、花開いた。

日テレの技術スタッフ、ウェブスタッフ、脚本協力のスタッフや、制作スタッフ、NTTレゾナントのスタッフなども交えて、カホコの言葉を精査し、ドラマのカホコとなる言葉遣い、成長を学習させている。

「週に2回、AIカホコに関する打ち合わせを行っている」ほど力を入れている。

ドラマは全10話。最終回までのカホコの成長と変化で、どんな言葉が生まれるか、最後までつきあっていたい。

AIカホコは、ドラマが終了しても、9月いっぱいサービスは継続する。