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ドラマ最前線 制作者インタビュー4 NHK 高橋練 「まれ」高志のバックボーンを描かなかったわけ

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

※文中の高橋さんの高ははしごだか、山崎さん、篠崎さんの崎は大が立のものです

=== 2015年4月から9月まで放送された朝の連続小説(朝ドラ)「まれ」は、夢が嫌いな女の子・希(土屋太鳳)を主人公にしたところから異色であり、回を増すにつれて主人公は朝ドラらしからぬ言動をしまくって、視聴者を戸惑わせた。

視聴者の意見が、たとえ、ヒロインたるものそんなふうでは共感しかねるというものだったとしても、それがSNSを中心に駆け巡り巨大な渦となっていったのだから、日本中のひとがテレビに向かって同じ体験をするというテレビドラマとしての役割は十分に果たしたと言えるのではないか。

最終回を迎えてから一ヶ月、スピンオフドラマの放送を前に、高橋練プロデューサーに「まれ」でやりたかったこと、実際やって得た手応え、さらには、朝ドラのあり方が変わってきているかについて聞いた。

あと、やっぱり気になるのは、今回のスピンオフドラマで、本編では語られなかった、希の同級生でミュージシャンになった高志の家族問題及びあまりしゃべらないわけについて明かされるのかということ。それについても追求してみた。===

プロデューサーとお父さんと師匠は北海道出身

ーー今日は『まれ』のスピンオフの話と、振り返って本編の話をさせていただきたいんですけど、その前に、高橋さんの人となりを伺えたらと思いまして。北海道出身ということで、原風景みたいなことと、テレビドラマをつくりたいと思ったきっかけになった作品などがあれば教えてください。

高橋え? 自分の原風景ってあんまり考えたことなかったです(笑)。ぼくは北海道札幌出身で、やっぱりそこ出身の誰もがそうだと思いますが、雪は印象に残っていますね。だから『まれ』の舞台・能登にもある種親近感がありました。木俣さん、ご出身は?

ーー東京です。

高橋雪を踏みしめる感覚って、東京にいるとスペシャルじゃないですか。

ーーはい。

高橋でも北海道や能登などでは雪はすごく日常的なことで、そのなかで生きて行く感覚は根付いていますね。それを原風景と言うかどうかはちょっとわからないですが(笑)。18歳で高校卒業してから北海道を出てしまい、今は1年にいっぺん帰ればいいくらいなので、ほんとにご無沙汰してしまっているんですけど、北海道はやっぱり故郷ですね。

ーー『まれ』では、徹役の大泉洋さんと大悟役の小日向文世さんが北海道ですね。

高橋そうなんですよねえ。

ーー主人公のダブル父みたいな重要な存在がふたりして北海道出身っていうのは何かあるんですか(笑)。

高橋北海道とは全然関係ないんですよ(笑)。大泉さんに関しては『水曜どうでしょう』が好きで見ていまして。でも見始めた頃は、大泉さんが俳優としてどれだけの人物か全然知らずに、どちらからと言うと、バラエティーでものすごく力を発揮する方だなと勝手に思っていたんです。

ーーその大泉さんをお父さんにキャスティングされたきっかけはなんだったんですか。

高橋オンエア開始の2年くらい前、脚本の篠崎絵里子さんや演出の渡辺一貴と3人で企画を立てはじめたとき、まず、駄目なお父さんの話をやりたいと思いました。『ちゅらさん』(01)から何作か朝ドラに関わった経験から、お父さん像には2パターンあると感じていまして。ざっくり分けると、ひとりは厳しくて怖いお父さん、ひとりは駄目なお父さんですね。『まれ』では厳しいほうじゃなくて駄目なほうで描いてみたいなあという思いが個人的にもあって、篠崎さん的にも、いろんなところで彼女が言っていますけど、ご自分の小説でそういう駄目なお父さんを描いていたこともあったから、方向性としては合致しました。本当はたぶん、篠崎さんはもっともっと駄目なお父さんを描きたかったと思いますけど。底なしなーーそれこそ、娘から借金もして帰ってこないような。

ーーずぶずぶと堕ちていくような。

高橋ええ、家族を平気で裏切るような。それはそれですごい話になったであろうと思うんですけど(笑)。

ーーそこまですると朝ドラじゃない?

高橋朝ドラじゃないですよね(笑)。

ーーそう思って抑えめに?

高橋やっぱり、駄目なお父さんにも共感されたり好かれたり、どこか許せたりする要素がほしいかったんです。そこで大泉洋さんが浮かびました。この役は演じる役者さんによって全然雰囲気が変ってくるから、脚本をつくる段階でお父さん役を決めようってことになり、ヒロインのオーディションもまだやってない段階で、大泉さんを候補に考えたんです。大泉さんなら今までと違う新しいお父さんをやってくれそうで、しかも、どこまで駄目でも憎めない感じがあるからお願いできないかなと。

ーーそれで引き受けてもらった。

高橋最初からお父さんが失踪する話をやりたいと篠崎さんが言っていたから、それも含めて、でかいことばかり言って家族に迷惑かけていて、すごく駄目な役であることを伝え、でも駄目な人を魅力的に描けるのは、あなたしかいないからやってくれませんかと話をしました。大泉さんは、「ひとつ愛すべきところが描いてもらえるならぜひやらせてもらいたい」と言ってくれまして。でもそのあと、「実は朝ドラちゃんと見た事ないんです」って言うから、そうなんだーって(笑)。

ーーそうだったんですね。小日向さんは。

高橋小日向さんが演じた大悟は、お父さんであり師匠であり、やっぱりこのドラマで重要な人物ですけど、これもまた北海道とは関係なくて(笑)。なんかね、全く逆じゃないですか、駄目な父に対するある種理想の父親像。そういう厳しい人物をやってもらうときに、小日向さんって、ものすごく柔らかいイメージか、逆にヤクザっぽいこわいイメージか極端な印象がありますよね。そのどちらとも全然違う小日向さんの顔を見ることができたら面白いというところで相談しました。すごく忙しい方なので引き受けてくれるかどうか不安でしたが、たまたまスケジュールがうまく調整できたんです。お願いしたあとでわかったのは、若い頃に喫茶店でアルバイトしていて、手先が器用だったから、ケーキ作りも任せられていたそうで、製菓指導の辻口博啓さんのところにケーキ作りの練習に行ってもらったら、わりと早いうちに、小日向さんできるからもう来なくていいですって言われたほどで(笑)。ほかの方は追試みたいにもう少し来てくださいって言われていたんですけど。小日向さんは、2、3回でOKになって。ちなみに、鈴木拓さんは、逆に下手な役だから、2、3回で、もうこれでいいという感じでした。

徹みたいな駄目な人もいていい

ーー『まれ』では、徹もそうですが、主人公の希自身も発展途上のままドラマが終わりますが、最初からそういうふうにしようと考えていたんですか。

高橋最初の段階でどこまで決め込んでいたかというと、そこまでは決め込んでは当然なかったです。これまでの朝ドラの経験上で言うと、決め込んでも最後は必ず変わってくるので、そこは決め込まなくてもいいかと思っていました。ただ、大まかな着地点は決めてありました。それは、人がそんなに成長する話にしないことですね。例えば戦争などを経て人間が成長していく話は、ひと昔前の朝ドラの主流でしたし、また最近それが盛り返してきて主流になってきていますが、今回はその路線をやらなくていいかなと思っていました。

ーーそのわけは。

高橋自分があまのじゃくだから……ってことでは全然なくて(笑)。ぼくは、主人公の成長譚とは違う朝ドラの良さがあると思っているんです。だから『まれ』では、人と人のつながりやあったかさ、日常が続くことの面白さを描きたいなと思いました。お父さんが何度も失踪して、最後はまた帰ってきて、はたしてそれが解決になるかっていうと、なってないですよね。お金の問題も、圭太(山崎賢人)が解決したようなことを言っていますが、具体的にどれだけの金額がどうなったのかっていうのは曖昧ですし、お父さんがこれから能登でどうやって行きていくんだっていうこともすごく曖昧です。ただ、そういう人でも存在していいっていうことを受け容れていける空気というか世界を描きたかったんです。希ちゃんに関しても、もしかして子どもたちを犠牲にしてでもケーキをつくるっていうシーンがあってもよかったのかもしれませんが、あえてそっちじゃない主人公を描きたいという思いがありました。結末のストーリーラインが途中で変わっていくことがあったとしても、そういう世界観というかドラマの方向性は最初から一貫していました。少なくとも、華々しくパリのコンクールで優勝して終わるような結末にはする気はなかったです。それがどこまで好評だったかは置いておきますが(笑)。

ーー『男はつらいよ』なども、駄目な人物(主人公の寅さん)を受け容れる世界が描かれています。『まれ』 ってそれに近く、新しい作風というより実は昔ながらの心を描いているのかなという気もしました。

高橋そうなんです。能登に取材に行ったときにすごく感じたのは、全員がそうとは言いませんが、多くの住人が無条件で人を受け容れるところがあるんですよ。よそ者に対しては微妙なんですけど、一度、受け容れた人や家族に関しては全面的に受け容れるところがある。例えば、子供はちょっとくらいできが悪いほうがいいそうで、なぜかと言うと、出来が悪いと外に出ていかないから(笑)。

ーーへえ、面白いですね。

高橋中学校などにも取材に行きまして、幼稚園くらいからずっと同じクラスだという9人組の子供たちにも取材したら、そこには、たくさんしゃべる子、しゃべれない子、勉強できる子、できない子と、いろいろなタイプの子たちがいて。そのなかで、できる子はできない子を助けているんです。そんな仲良い彼らが中三で卒業して高校に入った時点でバラバラになる。さらに大学や就職になると完全にバラバラになってしまう。この子たちがその後どうなっていくかが気になって。全面的に受け容れられている社会から受け容れられない社会にぶつかったときのいろいろを描くことは面白そうだと思って、希の同級生の一子ちゃん(清水富美加)が東京に出て挫折するドラマをやってみました。彼女がどんなことをしても、地元のひとたちは受け容れるし、守るっていうのを描きたかった。

ーーどんなことをしても守るっていうのは完全にコミュニティーなんですね。

高橋そうなんです、そんなことって今の日本にある? と思っちゃうんですが、それが確固として能登にはあって。ドラマでも少し描いていた祭りという共同体の行事も面白いんですよ。輪島では、42歳の厄年になったら、男は全員祭りに参加しないといけないんですよ。「御当(おとう)」って言って、その年のお正月から夏くらいまで、事務所を構えてそこに厄年のみんなが集まって、募金活動やなにやらして、家に帰れなくなるくらい活動するんです。

ーーすごい話ですね。

高橋すごい世界なんです(笑)。あんなに巨大なキリコを出せるのは募金活動をしているからなんですよ。男性は御当をすることによって、ようやく一人前だって認めてもらえるそうです。そうやってコミュニティーが育まれていて、42歳で同世代が再び集まることで、18歳くらいで薄れていた仲間の関係性がものすごく強くなって一生の関係になるそうです。御当のこともほんとは描きたかったんですけど、そこまで描く余裕がなくて。

ーー『まれ』の同級生の男子たちが42歳になった時、そういうことをすると想像すると面白いです。

高橋スピンオフで、希たちが子供のときのように太鼓を叩いていますが、42歳になった時、実際、あんなふうにみんなで集まって太鼓叩いたりするんです。

ーーやりたかったことを少しだけスピンオフに入れてみた。

高橋ええ、やらせていただいた感じです(笑)。

語らないこと

ーースピンオフのお話を伺いますと、高志(渡辺大知)のお父さんお母さんのことは描かれますか?

高橋まったく出てきません。

ーー謎のまま。

高橋スピンオフで出そうかって話も実はしていたのですが……。出したほうがよかったですかね?

ーーいつもドラマを見ていて疑問をもつと、あとでたいてい回答があったので、高志のこともいつか出てくるのかなって思ってました(笑)。

高橋 お父さんお母さんを出す案と、もっと言うと、高志がなぜ言葉をしゃべらなくなったのかというドラマを描くという手もあったんです。でもそれを理屈で説明してしまうのがはたして魅力的かなってこともあって。あくまで例えばですが、お母さんが交通事故で死んだ現場を見たショックからしゃべれなくなったとか、おばあちゃんに何かあって……とか、そういう理由を説明するのが『まれ』的にいいのかなって気がして、描くのをやめたんですよ。その延長で、お父さんお母さんも一切出すのをやめました。

ーー最後まで謎のまま。

高橋ひとりくらい視聴者の方々に謎の部分があっていいかなと思いまして。あくまでひとりのミュージシャンの葛藤ドラマにしました。

ーー確かに、交通事故だとか不幸な出来事を、今のキャラクターの人格形成の理由にするのはよくある手法ですけれども、『まれ』にはそういうのが一切なかった。戦争も震災もないし、誰も亡くなってないですよね。それは意識されたんですか?

高橋多分『カーネーション』(11)では、人が死ぬところを直接は書いてないんですよね。場面が変わったら亡くなっていたっていう表現でした。……正直言うとドラマにおける死はカタルシスになります。でも、今回はあえてそれを描くのはやめようという話は確かにしました。能登では大きな地震もあって、我々が取材した塗師屋さんも地震で蔵が壊れて、それをみんなで再建したそうで、そういうことを盛り込む可能性もあったのですが、例えば、希が必死になって(震災の被害を)なんとかする話ってやっていいのかどうかってことと、そもそも『まれ』ってそういう世界なんだっけ? ってことでやめました。それと近いところで元治(田中泯)や弥太郎(中村敦夫)が亡くなるっていう案もひとつあったんけど、早い段階で封印しちゃいました。

ーー誰も死なない。

高橋80歳過ぎてもみんな元気に生きています。

ーー昨今、いろんな方にお話を聞くと、コンプライアンスの問題があって、地震とか戦争を描くと見たくないという声があるとか。

高橋東日本大地震に関してはそういう感情があるかもしれないですね。『まれ』でも意識的に飛ばして、台詞で「地震があった」などと説明的に言わせるのもやめました。

ーー『あまちゃん』でもどこまで描いてどこまで描かないかはデリケートに考えられたそうですね。

高橋どこまで描かないかっていうのは本当に大事になってきますよね。

ーーだとしたら中途半端に手を出さない。

高橋『まれ』に関しては。能登の地震については誰も亡くなっていないし、その事実を知らない方も多くて、逆にいえば、いくらでも創作できるのですが、今回はあえてやりませんでした。

追記 地元の方よりご指摘があり「石川県・平成19年能登半島地震災害記録誌」に正確なデータが記されていました。

ーーさて、『まれファンブック』のインタビューに、『ちりとてちん』以前以後で、朝ドラも変わったところがいろいろあって、とおっしゃっていますが、なにが変わったのでしょうか。

高橋ひとつは、本でも言っていますが、見ている人たちの環境が変わったってことですね。ドラマにコミットしてくださる視聴者が増えて、見ている方が、SNS でいろんなことをつぶやいたり、発信する側にまわっているってことは5、6年前には考えられなかったことです。

ーーああだこうだと、いろいろ指摘されるのはどうでしたか?

高橋面白いっていうのは不謹慎ですかね?(笑) もちろん反省することもありましたし、正直、反論したいこともありましたが、概ね、いろいろな意見が出るのは良かったと思います。

ーー反論したいときもあった。

高橋不足をつっこまれて、そこはあとで出て来るんだけどな……と思うこともありましたよ。でも、そういう時、あえてTwitterでこちらから反応しないようにしていましたが。

ドラマのスタイルの変化のなかで

ーー忍耐があったんですね。変わったことのもうひとつは。

高橋ドラマの内容そのものですね。『ちゅらさん』から以来、ぼくが担当した朝ドラは現代ものばかりで、いわゆる戦争をくぐった女の一代記をやったことは一度もなかったんですよ。2001年の『ちゅらさん』から2010年の『ゲゲゲの女房』までの10年間は、現代もののほうが朝ドラのスタンダードになっていたんです。ところが10年代に入ると再び、戦争をくぐり抜けた女の一代記みたいなものが多く描かれるようになった。ひと昔前の女性の生き方のいわゆるロールモデルが、今、見直してみたら意外と共感できるし良いねってことだと思うんですね。

ーー揺り戻し的に。

高橋ものすごく大きな揺り戻しが来たと思います。この10年は、昔の朝ドラと変わらない主人公たちの生き方がすごく安心して受け入れられる時代になったのかもしれません。そもそも、時代ものを扱う良さというのもあるんですよね。年代によって作品に対する好き嫌いが変わる中で、時代ものは幅広い年代の好む最大公約数的なものになります。そういう意味では、若い女の子が何かをなしとげる現代劇は、好む人が限られるし、それが好きだった人たちの年齢が上がれば飽きられて離れてしまうということもあるでしょう。ただ、時代物をまたやるにしても、以前とまったく同じことをするのではなく、歴史的に有名なひとではない人物や、有名な人物の脇にいる人物を主に描くなど、工夫が凝らされています。その中で『まれ』は、引き続きそういうやり方で時代ものを描くのではなく、あえて違うものをやってみようと思いました。

ーー違う路線にいくとき、上のひとを説得するんですか?

高橋NHK のいいところって、バランスがいいことなんです。本来、時代もの、安定路線をやったほうがいいかもしれないんですよ。でも、たぶんそればかりやると、どこかで自分たちの範囲を狭めてしまうことがわかっているので、あえてチャレンジしてみてたらどうか? という気持ちがある。だから、現代ものはここ2年くらいやってないからいいんじゃないかとなりました。

ーー高橋さん、朝ドラですとポップな現代劇をやっていらっしゃいますが、それこそ、『胡桃の部屋』や『足尾から来た女』などのシリアスなものと、幅広いですが、本質的にはどちらなんですか。

高橋ハハハ、難しいですね、NHKって誰もが両方つくるんですよ。『あまちゃん』のプロデューサーの訓覇圭さんも『外事警察』や『ハゲタカ』をやっていますし、だいたい皆時代劇も社会派ドラマも恋愛ものも担当します。演出もそうですが、プロデューサーのいいところって、いろいろなジャンルができるところじゃないかと思うんです。

ーー高橋さんがドラマをやるきっかけになった作品は何ですか?

高橋難しいですね。……ひとつ、向田邦子さんの『阿修羅のごとく』は衝撃的でしたね。こういう人間の描き方があるんだなって思って。この仕事をはじめて、向田さんをやれることになった時はすごくうれしかったですね。

ーーいつごろご覧になりました?

高橋中学生かなあ。ぼくの子供の頃って、銀河テレビ小説という朝ドラの夜版のようなものがあって、そこでやっていた原作ものドラマが好きでよく見ていました。『阿修羅〜』は銀河テレビ小説ではないですが、衝撃を受けた一作ですね。あと、やっぱり北海道育ちなので『北の国から』シリーズを喜んで見ていました。

ーーいい脚本家のドラマを見ていますね。

高橋7、80年代ってドラマの黄金時代ですよね、そう思うと。

ーーいい脚本家がたくさんいた。今、いないってわけじゃないですが。

高橋こういう仕事していて改めてDVD 借りて見ると、全然古びてないというか、設定は当然古いんですけど、ドラマが面白い。全然説明しないところもあって、でもそういうものだよねって、リアルってこういうことだよねって思わせるところがあったりするんですよね。

ーー作家性で押し切るところありますよね。

高橋そうなんですよね。

ーーそういう意味で、篠崎さんにはそういうところがある脚本家さんだと思います。

高橋彼女は、作家なんですよね。やっぱり台詞が面白いんです。『胡桃〜』をやったとき、元になっている短い短編をどう膨らませたらいいのか悩んだんですよ。台詞が向田さんの命なのに、中途半端に増やしたら恐れ多いじゃないですか。でも篠崎さんが面白い台詞を書いてくれたことでキャラが生きてきた。その経験があったので、このひとだったら、朝ドラでもおもしろい台詞やキャラクターを書いてくれると思ったんです。

ーーまたおふたりのコンビで濃密なドラマが見たいです。

高橋また、ドラマ10 もやってみたいですね。

PRIFILE

たかはし・れん

1967年北海道生まれ。NHKプロデューサー。92年入局。98年大河ドラマ『徳川慶喜』、2001年朝の連続テレビ小説『ちゅらさん』、04年『ちゅらさん3』では演出を担当。その後、プロデューサーに。主なプロデュース作に、『チェイス〜国税査察官〜』『10年先にも君に恋して』『胡桃の部屋』『メイドインジャパン』『足尾から来た女』など。朝ドラでは『こころ』『風のハルカ』『ちりとてちん』をプロデュースしている。

画像

「写真撮るんですかー、要らないでしょう」と言いながらいざ撮り始めたら「目線外します?」などと撮られ慣れている様子の高橋さんでした。

ザ・プレミアム『まれ〜また会おうスペシャル』NHK BS プレミアム

前編は『僕と彼女のサマータイムブルース』(作/池谷雅夫、演出/川上剛)10月24日(土)19時〜

後編『一子の恋〜洋一郎25年目の決断』(作/篠崎絵里子 演出/一木正恵、津田温子)10月31日(土)

19時〜

9月末に終了したNHKの朝ドラ『まれ』のスピンオフドラマ。主人公・まれ(土屋太鳳)が能登で結婚式を行ったその後の、同級生たちの物語を描く。前編「僕と彼女のサマータイムブルース」(作/池谷雅夫、演出/川上剛)では、芝居もできる人気ミュージシャンになった高志(渡辺大知)と巨匠・池畑大悟の義娘・美南(中村ゆりか)の恋を描き、後編「一子の恋〜洋一郎25年目の決断」(作/篠崎絵里子 演出/一木正恵、津田温子)では、文字通り、一子(清水富美加)と洋一郎(高畑裕太)の関係性が描かれる。仁子(清野菜名)という一子に似た女性が出現して……。

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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