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「65本打ってほしい!」日本記録まであと5本のヤクルト村上宗隆に“元祖60発”バレンティンがエール

菊田康彦フリーランスライター
2017年のWBCではオランダ代表としてプレーしたバレンティン(写真:アフロスポーツ)

 シーズン本塁打日本記録の60本にあと「5」と迫っている東京ヤクルトスワローズの村上宗隆(22歳)に、現在の記録保持者である元ヤクルトのウラディミール・バレンティン(38歳)がエールを送った。

“マイ・ボーイ”村上に本気のエール

 村上は9月13日の読売ジャイアンツ戦(神宮)で今季54号、55号を放ち、歴代2位の王貞治(巨人、1964年)、タフィー・ローズ(大阪近鉄バファローズ、2001年)、アレックス・カブレラ(西武ライオンズ、2002年)と肩を並べたばかり。自身のインスタグラムに、背番号55のユニフォーム画像を添えて「55号」と投稿すると、そこにコメントを寄せたのがほかならぬバレンティンだった。

 コメント欄に書き込まれたのは、両手を合わせた絵文字4つに続く矢印の先にある「60 ganbate my boy」(原文ママ)の文字。「my boy」は彼がチームメイトなど仲の良い選手に対してよく使う呼称で、それはまさしく「60本目指してがんばれ!」というエールに見えた。

 そこで昨年限りで日本球界を去ったバレンティンに連絡を取り、コメントの真意について尋ねてみた。テキスト(文字)メッセージでのやり取りではあったが、あのコメントは本気かと聞くと「もちろん。65本打ってほしい」という。

今から3年前に「間違いなくオレを超える」と

 バレンティンは2011年の来日から3年連続で本塁打王に輝き、2013年にMVP、2018年は打点王を獲得している。ヤクルトでの通算288本塁打は池山隆寛(現ヤクルト二軍監督)に次いで球団史上2位。村上とはドラフト1位で入団した2018年から2年間、ともにプレーした。

 村上は高卒1年目の2018年こそ大半をファームで過ごしたものの、2年目の2019年は開幕からレギュラーに定着。開幕から1カ月ほどが経ち、打率は2割台前半ながら5本のホームランを打っていた彼の印象を、バレンティンに聞いたことがある。

「素晴らしい選手だよ。まだ19歳だろ? 将来は間違いなくオレを超える選手になる。(シーズン)60本塁打は無理かもしれないが、打率はもちろん、パワーでもオレ以上の選手になるよ。ホームラン王も5年以内には取るはずだ」

 それが彼の答えだった。バレンティンは日本での通算打率は2割6分6厘だが、60本塁打の日本記録を樹立した2013年には打率3割3分0厘(リーグ2位、1位とは3厘差)、131打点(同2位、1位とは5点差)と、三冠王に限りなく近い成績を残した。今季の村上は9月15日時点でいずれもリーグ1位の打率3割3分7厘、55本塁打、132打点。打点は既にバレンティンの持っていた球団記録を塗り替えている。

 さらにバレンティンが「無理かもしれない」と言っていた60本塁打を超え、福岡ソフトバンクホークスに在籍した2年間も含めた彼のキャリアハイである2013年の数字をすべて上回って三冠王になれば、3年前の予想を軽く凌駕することになる。”マイ・ボーイ”がそれを成し遂げるのを、今は海の向こうにいるバレンティンも心待ちにしているはずだ。

「最後はスワローズで引退したい」

 ちなみに昨年限りでソフトバンクを退団したバレンティンは、今年はメキシカン・リーグのサルティーヨ・サラペメイカーズと契約したものの、18試合の出場で打率2割3分1厘、4本塁打。5月下旬に自由契約になると、動向はなかなか伝わってこなかった。あらためて現状について聞いてみると──。

「引退? してないよ。今はドミニカ(共和国)のウインターリーグでプレーする準備をしているところさ。その後は1試合でもいい、スワローズで試合に出てから引退したいと思ってるんだ」

 昨年はソフトバンクに在籍していたにもかかわらず、シーズン中に「これが日本で最後のシーズンになる。ファンのためにジングウ(神宮)で記念試合(引退試合)ができることを願う」とツイートして物議を醸したこともあったが、その思いは今も変わっていないようだ。

 今年8月には、ヤクルトのマスコットであるつば九郎の通算2000試合出場を祝うバレンティンのビデオメッセージが、神宮球場で流れたこともあった。彼の願いがかない、自身を超えた”マイ・ボーイ”村上との共演が愛着ある神宮で実現する日は、訪れるだろうか。

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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