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エスコバーがナショナルズの正二塁手に──ヤクルトから米球界に復帰した“助っ人”の「今」をチェック

菊田康彦フリーランスライター
昨年はヤクルトの正遊撃手、現在はナショナルズの正二塁手を務めるエスコバー(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 メジャーリーグは現地時間7月13日にオールスターゲームを終え、同15日(日本時間16日)のニューヨーク・ヤンキース対ボストン・レッドソックス戦を皮切りに、シーズン後半戦に突入する(※)。

 5月6日付の記事「前ヤクルトのエスコバーが古巣ロイヤルズとマイナー契約。昨年ヤクルトを退団した他の“助っ人”は今…」では、昨シーズン限りでヤクルトを退団した外国人選手の「その後」を紹介したが、今回はヤクルトでプレーした後に米球界に復帰した外国人選手の、今シーズン前半戦を振り返る。

エスコバーはメジャー復帰後3試合で打率.583!

 まずは前回の記事でも取り上げたアルシデス・エスコバー(34歳)。昨年はヤクルトで主に遊撃手として104試合に出場し、チーム3位の打率.273をマークしながら、1年限りで退団。現地時間5月4日(以下の日付はすべて現地時間)に古巣のカンザスシティ・ロイヤルズとマイナーリーグ契約を結んだのは、前回の記事で紹介したとおりだ。

 ロイヤルズ傘下のAAA(トリプル・エー)、オマハ・ストームチェイサーズで主に遊撃手として35試合に出場し、打率.274、5本塁打、16打点をマークしたエスコバーは、7月3日に金銭トレードでワシントン・ナショナルズへ移籍。同日のロサンゼルス・ドジャース戦に七番・遊撃で、メジャーリーグの試合では1007日ぶりにラインナップに名を連ね、7回の第3打席でメジャー通算1368本目の安打を放った。

 さらに翌4日のドジャース戦で4打数3安打を記録すると、5日のサンディエゴ・パドレス戦では一番・二塁で連日の“猛打賞”。メジャー復帰後3試合で12打数7安打、打率は.583に達した。

 ナショナルズがエスコバーを獲得した要因は当時、正遊撃手のトレイ・ターナーが左手の中指を痛めていたことに加え、バックアップのジョディ・マーサーも故障で戦列を離れたことにあったのだが、時を同じくして正左翼手のカイル・シュワーバーも故障者リスト入り。ターナーが5日のパドレス戦からラインナップに戻ると、正二塁手ながら外野手の経験もあるジョシュ・ハリソンがレフトに回り、エスコバーは新たに一番・二塁が定位置となった。

 2015年に遊撃手としてゴールドグラブ賞に輝き、昨年はヤクルトで三塁も39試合守ったエスコバーも、二塁は2018年にロイヤルズで3試合守っただけ(マイナーでは今季8試合プレー)。その不慣れなポジションで前半戦は最後までレギュラーとしてプレーし、10日のサンフランシスコ・ジャイアンツ戦では二塁打と三塁打を放った。9試合の出場で打率.282、5打点は、なかなか立派なものだ。

今季は2度のメジャー昇格も登板ナシのギルメット

 過去にヤクルトに在籍した経験を持ち、今シーズン前半戦でメジャーの舞台に立った選手は、このエスコバーしかいない。ただし、2017年にヤクルトで先発4試合を含む28試合に登板して1勝1敗2ホールド、防御率3.62の成績を残したプレストン・ギルメット(33歳)は、今年はマイアミ・マーリンズで2度にわたってメジャー昇格を果たしている。

 ギルメットはヤクルト退団後の2018年にセントルイス・カージナルスとトロント・ブルージェイズで計8試合に投げており、3年ぶりのメジャー登板も期待されたが、他の選手との登録の兼ね合いで、いずれも1日で40人のメジャー登録枠から外されてマイナーに逆戻り。傘下のAAA、ジャクソンビル・ジャンボシュリンプでは、ここまで12試合の登板で1勝1敗1ホールド、防御率3.55を記録している。

“鉄腕”ハフ、マリナーズ傘下で先発ローテ入り

 今年5月13日にシアトル・マリナーズとマイナー契約を結んだのが、2018年からヤクルトに2年間在籍した左腕のデービッド・ハフ(36歳、日本での登録名はデーブ・ハフ)である。

 ハフは2019年には中継ぎとして開幕から5カ月連続で10試合以上に投げるなど、セ・リーグ3位タイの68試合登板と“鉄腕”ぶりを発揮。同5位タイの26ホールドをマークしたものの、再契約を見送られてこの年限りで退団した。

 昨年はヤクルトOBでもあるトーリ・ロブロ監督率いるアリゾナ・ダイヤモンドバックスとマイナー契約を結んでいたが、コロナ禍のためにマイナーリーグのシーズン全休が決まり、5月下旬に解雇。その後は7月に開幕した独立リーグ、コンステレーションエナジー・リーグのシュガーランド・ライトニングスロースで14試合に救援登板し、0勝0敗1セーブ、防御率3.14という成績だった。

 マリナーズとマイナー契約した今季は、AAAのタコマ・レイニアーズで先発ローテーション入り。6月8日には古巣のロサンゼルス・エンゼルス傘下、ソルトレイク・ビーズを相手に6回1失点で勝利投手になったが、これが今のところ唯一の白星で、ここまで8試合の先発で1勝3敗、防御率5.75にとどまっている。

昨季イースタン最多勝のクックはインディアンス傘下

 昨年はヤクルトのファームで5勝を挙げてイースタン・リーグ最多勝利投手賞を受賞しながら、一軍では7試合の登板で0勝3敗、防御率7.88に終わったマット・クック(30歳)は、今季はクリーブランド・インディアンスとマイナー契約。5月15日からAAAのコロンバス・クリッパーズに配属されると、ここまで先発4試合を含む15試合に登板も1勝2敗2ホールド、防御率7.45と苦しんでいる。

 また、2018年にヤクルトで救援と先発で7勝を挙げ、翌2019年にマリナーズでメジャー復帰したマット・カラシティー(29歳)は、今季はマイナー契約でレッドソックス入り。だが、昨年3月にトミー・ジョン手術を受けてから実戦登板はなく、現在も故障者リストに登録されたままである。

 なお、2000年に「トレイ・ロブロ」の登録名でヤクルトに在籍した前述のロブロ監督は、ブルージェイズ、レッドソックスのコーチを経て、2017年からダイヤモンドバックスを率いて今年で5年目。就任1年目はナ・リーグ西地区2位でチームを6年ぶりのプレーオフ進出に導き、リーグ最優秀監督賞を受賞したが、今季は前半戦を終えて26勝66敗で地区最下位に沈んでいる。

(文中の今季成績はすべて現地時間7月14日現在)

(※)ヤンキースの選手が複数名、新型コロナウイルスに陽性反応を示したため、15日の試合は中止。

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フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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