2年ぶりに開催されたセ・パ交流戦も終わり、プロ野球は明日18日から再びそれぞれのリーグでの戦いに戻る。コロナ下で行われている今シーズン、ここまで目に付くのは引き分けの多さである。

かつて数年間導入されていた「引き分け0.5勝、0.5敗」ルール

 各球団143試合、延長12回制だった2019年は両リーグ合わせて22試合だった引き分けの数は、昨年は開幕が大幅に遅れた影響で試合数が120に減少しながらも、延長戦が10回までに制限されたことにより計40試合と倍増した。今年は143試合制に戻ったものの、開幕前の申し合わせにより延長戦は行わないことになっており、開幕から3カ月弱が経過したこの段階で、既に引き分けの数は49試合に上る。

 現在の規定では、引き分けの数自体が順位に影響を及ぼすことは、基本的にはない。順位は勝率によって決定されるが、引き分けは勝率の計算から除外されるからだ。セ・リーグでは勝率が同じ場合は「勝利数が多い球団を上位とする」との規定があるため、同率の球団同士であれば必然的に引き分けの少ない方が上位になる。ただし、たとえば貯金の数が同じならば、引き分けの多い方が「分母」が小さくなるため、勝率は上になる。つまり優勝争いなど勝率5割以上の戦いになれば、引き分けが多い方が有利といえる。

 かつて、プロ野球には引き分けを「0.5勝、0.5敗」で計算して、勝率を算出していた時代があった。セ・リーグは1956年から61年、パ・リーグは1956年から58年および61年。これが勝率にどのような影響を及ぼすかというと、「引き分けが勝率の計算から除外される」現在とは異なり、貯金がある(勝率5割を超えた)状態では引き分けが増えれば増えるほど勝率が下がり、借金のある(勝率が5割を下回る)状態では、逆に引き分けが多ければその分、勝率は上がることになる(当たり前の話だが、勝率が5割ちょうどであれば、引き分けがいくら増えても勝率は変わらない)。

1959年の中日はこのルールの”恩恵”で同率2位に

 このルールが採用されていた当時、両リーグともに引き分けの数が優勝を左右することはなかったのだが、1959年のセ・リーグでは中日ドラゴンズがこの規定の”恩恵”を受けて同率2位になっている。

 この年の優勝は77勝を挙げた読売ジャイアンツで、2位を争ったのが大阪タイガース(略称は阪神)と中日。62勝59敗9引き分けの阪神は現在の計算方法なら勝率.5123で、64勝61敗5引き分けで勝率.5120の中日はこれを下回る。

 ところが当時の規定どおりに引き分けを「0.5勝、0.5敗」として加算すると、阪神も中日もまったく同じ66.5勝63.5敗、勝率.5115。したがって、この年は阪神、中日の両球団が同率2位として記録に残っている。

「引き分け0.5勝」なら現在はヤクルト、オリックスが単独2位

 それでは、もし今シーズンのプロ野球でこの「引き分け0.5勝、0.5敗」ルールが採用されていたら、順位はどのようになっているのだろうか? まずは現在の両リーグの順位表を見てみよう。

筆者作成
筆者作成

 これが、引き分けを0.5勝、0.5敗として計算すると、次のようになる。

筆者作成
筆者作成

 セ・リーグでは、現行の計算では巨人と同率の東京ヤクルトスワローズが、勝率で上回ることになり単独2位。パ・リーグでは3位のオリックス・バファローズが、福岡ソフトバンクホークスと入れ替わって2位に浮上する。

 ちなみにオリックスとソフトバンクというと、2014年に最後まで優勝争いを演じたのを覚えている方も多いと思う。この年は78勝60敗6引き分けのソフトバンクが優勝、80勝62敗2引き分けのオリックスが2位だったのだが、もし「引き分け0.5勝、0.5敗」ルールであれば両チームの勝率は全く同じになっていた。もっとも、パ・リーグには当時から「同率球団が生まれた場合は、まずは当該球団間の対戦勝率で順位付けをする」との規定があり、12勝11敗1引き分けと直接対決で勝ち越していたソフトバンクの優勝に変わりはなかったのだが……。

 もちろんここまでの話はどれも”たられば”であり、そもそも「引き分け0.5勝、0.5敗」がフェアなのかどうかも、引き分けをどう捉えるかによって意見が分かれるところだろう。ただ、引き分け激増の現状を見るにつけ思う。もし来年以降も「延長なし」が継続される可能性が少しでもあるのなら、古のこのルール復活を議論の俎上に載せるのもアリではないか、と。