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ヤクルト戦力外の村中恭兵が渡豪、”12年ぶり”に海外でプレーへ

菊田康彦フリーランスライター
HWBではワイキキ・ビーチボーイズの一員としてプレーした村中(筆者撮影)

 今季限りで東京ヤクルトスワローズから戦力外通告を受けていた村中恭兵(32歳)が、シーズンが開幕したばかりのオーストラリアン・ベースボール・リーグ(ABL)に参戦することが決まった。所属するのはニュージーランドに本拠地を置くオークランド・トゥアタラ。村中は来月4日に日本を発って、チームに合流する予定だという。

2007年にはハワイ・ウインター・ベースボールに派遣

 村中といえば思い出すのが、2007年秋に派遣されたハワイ・ウインター・ベースボール(HWB)だ。当時はまだプロ2年目で、8月には北京で行われた北京オリンピックのプレ大会に若手主体の日本代表メンバーで出場したばかり。2カ月近いハワイのウインターリーグでの経験は、村中のキャリアに大きな影響を与えた。

「ハワイに行ってなかったら(プロ)3年目の開幕一軍っていうのはなかったと思います。あそこで自信がついたっていうのがかなりあったんですよ」

 のちに村中はそう振り返っている。この時のハワイでは前半はリリーフ、後半は本来の先発として起用され、計10試合の登板で3勝1敗2セーブ、防御率2.00(リーグ6位)の好成績を残した。プロ2年目まで一、二軍合わせても計18試合(すべて先発)しか投げていなかったのが、およそ2カ月の間にこれだけ投げたことで「それまであまり試合で投げてなかったんで、試合慣れっていうのが大きかったですね」という。

ハワイでの経験を自信に、翌年ブレイク

「(HWBの)試合で変化球もドンドン投げて、そこでカーブとかフォークが使えることに気づいて。試合でいっぱい投げさせてもらって、どこに投げれば空振りが取れるのかとか、いろいろ分かりました。あと、中3日ぐらいだとあまり力が入らないんですけど、力を入れなくてもいい球が投げられる、相手を抑えられるっていうことにも気づかされました」

 ハワイでの経験を自信に、翌2008年は初の開幕一軍入りを果たすと、プロ初勝利を含む6勝をマーク。5月3日の巨人戦(神宮)では、結果的には負け投手になったものの、9回1死までノーヒットノーランの快投も演じた。そして2010年に11勝、2012年には10勝と、2度にわたって2ケタ勝利を記録する。

 来月初旬からABLに参戦する予定の村中だが、海外でのプレーはそのハワイ以来、12年ぶりのことになるという。当時、20歳になったばかりの若者は既に三十路を越えてベテランと呼ばれる年齢に差し掛かっているが、それでもまだ32歳。本人も「(同い年の)巨人の山口(俊)はこれからメジャーに行くっていうぐらいですから、やろうと思えばまだまだできると思います」と言っているように、まだ老け込む歳ではない。

 ここ数年、悩まされてきた故障の不安もなくなった今、オーストラリアで思う存分アピールして、来春以降も現役続行を目指す。

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フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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