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村中はオール直球勝負、山川は異例の“二刀流” ~燕戦士、それぞれのトライアウト~

菊田康彦フリーランスライター
ヤクルトから戦力外通告を受けた村中(左)と山川(10月1日筆者撮影)

 11月12日に大阪シティ信用金庫スタジアムで「プロ野球12球団合同トライアウト」が開催され、今季限りで戦力外通告を受けた選手を中心に、日本野球機構(NPB)に所属した経験のある43名が参加した。今回は現地に赴くことはできなかったが、フジテレビONEの中継をもとに日頃、筆者が取材をしている東京ヤクルトスワローズに在籍していた選手の結果を出場順にまとめた。

(投手の球速は画面表示のあったもののみを対象)

投手 山川晃司(22歳=一軍出場なし)

 トライアウト参加26投手中、真っ先にマウンドに上がったのは、2014年のドラフトで捕手としてヤクルトから3位指名を受けた山川。登録は一貫して捕手だったが、今年は3月に大学チームとの試合で投手として投げると、9月4日の関西独立リーグ選抜との試合では投手と捕手の両方で出場。9月11日のイースタン・リーグ、読売ジャイアンツ戦では9回に登板して1イニングを無失点に抑え、投手としての公式戦デビューを果たしている。

 トライアウトは1人の投手が3人の打者と対戦するという形式で、各打者ともボールカウントは1-1からスタート。山川は先頭の宮崎祐樹(オリックス)を2-2からセカンドフライに打ち取ると、続く森本龍弥(日本ハム育成)は1-2からスライダーで見逃し三振。3人目の藤澤亨明(四国IL愛媛、元西武)も2-2からフォークで空振り三振に仕留め、パーフェクトピッチングでアピールした。最速は139キロ。

投手 村中恭兵(32歳=通算199試合46勝55敗0S防御率4.30)

 続いて登板したのは、2005年の高校生ドラフト1巡目でヤクルトに指名され、2010、2012年と2度の2ケタ勝利をマークした村中。昨年12月に腰の手術を受け、今年は4年ぶりに一軍登板がなかったが、9月はファームで登板5試合中4試合を無失点に抑えるなど、手ごたえを口にしていた。

 その村中が最初に迎えたのは千葉ロッテマリーンズ、メジャーリーグのミネソタ・ツインズ、そして阪神タイガースを経て、今季はルートインBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスでプレーした西岡剛。2-2から外角低めへの138キロのストレートで見逃し三振に仕留めると、2人目の八百板卓丸(楽天、今季の登録名は卓丸)には3-1から四球を与えるも、続く近藤弘基(中日)の初球に八百板が二盗に失敗。最後は近藤をカウント2-1から一塁へのファウルフライに打ち取った。「全部ストレートのつもりではなかったのですが、(相手の打者が)3人だったのでそれでいいかなと思いました」と後で振り返ったように、投じた8球はすべてストレート。最速は138キロだった。

投手 屋宜照悟(30歳=通算24試合3勝0敗0S防御率7.11)

 トライアウト開始からヤクルト勢の登板が続き、3人目でマウンドに上がったのが屋宜。2012年のドラフトで北海道日本ハムファイターズから6位指名を受けて入団し、2017年の途中でヤクルトにトレードされたが、移籍後は通算3試合の一軍登板にとどまっていた。

 1人目の森越祐人(阪神)にはカウント1-2からの2球目をライト前に運ばれた屋宜だが、続く山田大樹(楽天・育成)は1-2からこの日最速の144キロのストレートで見逃し三振。最後はこれが山川との対戦に続いて2度目の打席となる宮崎(オリックス)をセカンドゴロに抑えた。

投手 沼田拓巳(25歳=通算1試合0勝0敗0S防御率9.00)

 ヤクルト勢4人目でマウンドに上がった沼田は、大学中退後、クラブチーム、米国マイナーリーグ、BCリーグの石川ミリオンスターズと渡り歩き、2017年のドラフト8位で指名された苦労人。プロ2年目の今シーズンは一軍登板の機会はなかったものの、シーズン終盤はフォームの微調整が功を奏し、二軍戦でストレートが150キロを超えることもあった。

 それだけに戦力外通告を受けた後も、いち早くトライアウト受験の意思を表明していたが、この日は先頭の森本(日本ハム・育成)をストレートで詰まらせながらも、センター前に運ばれポテンヒット。続く藤澤(愛媛)にはフルカウントからフォアボールを与えると、グラブをバットに持ち替えて打席に入ったチームメイトの山川も3-1からフォアボールで歩かせてしまった。最速は142キロ。

投手 菊沢竜佑(31歳=通算2試合0勝0敗0S防御率6.00)

 ヤクルト勢最後の登板は、2016年のドラフトで軟式野球の相双リテックから6位で指名され、当時26歳の「オールドルーキー」として注目を浴びた菊沢。こちらもなかなかの苦労人で、大学時代に一度は野球を断念するもクラブチームで再び硬球を握り、その後は読売ジャイアンツの入団テストに合格しながらもドラフト指名から漏れると、海を渡って米国の独立リーグでもプレー。だが、ヤクルトでの一軍登板は2試合にとどまり、2年で戦力外になっていた。

 その菊沢はこの日2度目の打席に入った西岡(栃木)をセカンドゴロに打ち取ると、八百板(楽天)は森本(日本ハム・育成)の好守もあってファーストゴロ。最後は近藤(中日)をカウント1-2からショートフライに抑えた。最速は139キロ。

打者 山川晃司

 トライアウトでは異例の“二刀流”の山川は、前述のとおり最初の打席で沼田から四球を選んだ後、2度目の打席では横山貴明(BCリーグ福島、元楽天)のスライダーに空振り三振。それでも3度目の打席では、左腕・高木勇人(西武)の外角球を弾き返してライト前にヒットを打った。最後は岡本健(ソフトバンク)に対して粘りながらもセンターフライに打ち取られ、打者としては3打数1安打、1四球。なお、この日は投手、打者での出場だけでなく捕手としてマスクもかぶっている。

 トライアウトに参加した選手の獲得を希望する球団は、5日以内に本人に連絡をすることになっている。まだ現役をあきらめられない男たちに、吉報は届くだろうか。

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フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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