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メジャーリーグでもあった現役選手の用具窃盗。巨人・柿澤のケースとの違いは……

菊田康彦フリーランスライター
リベラはパナマ代表としてWBCにも出場しているが……(写真:ロイター/アフロ)

 読売ジャイアンツの柿澤貴裕(23歳)が、同僚の野球用具を盗み出して中古ブランド品買取専門店に売却していたとして、7月7日付で球団から契約を解除された。この一件は日本球界にとってはかなり衝撃的だったが、この報に接して筆者の脳裏に浮かんだのは、今から16年前の春にメジャーリーグで起きたある“事件”だ。

ヤンキースのスター、ジーターのバットやグラブを盗んで……

 2002年春、パナマ出身の外野手であるルーベン・リベラ(当時28歳)はニューヨーク・ヤンキースとマイナー契約を結び、招待選手としてキャンプに参加していた。リベラは、当時はチームの絶対的なクローザーだったマリアーノ・リベラの従弟。もともとは1995年にヤンキースでデビューし、1997年に伊良部秀輝(故人)らとのトレードでサンディエゴ・パドレスに移籍すると、1999年には正中堅手として23本塁打を放った選手である。

 だが、そのリベラはオープン戦で3割を超える打率をマークしながら、シーズン開幕を待たずに解雇されてしまう。「招待選手」といえば聞こえはいいが、実際にはテスト生のような立場であり、オープン戦の途中でもチームのニーズに合致しないと判断されれば、クビになるのも珍しいことではない。ただし、リベラの場合は理由はまったく別のところにあった。チームの看板スターであり、後にはその背番号2が永久欠番になるデレック・ジーターのグラブやバットをロッカーから盗み出し、メモラビリアを扱う業者に売りさばいていたことが原因だったのだ。

 つまり、解雇に至る流れは柿澤と同じ。違うのは、解雇から1カ月も経たずにテキサス・レンジャーズと契約したことだ。新天地では69試合の出場で打率.209、4本塁打の成績に終わり、シーズン終了を待って解雇されるのだが、翌年はサンフランシスコ・ジャイアンツと契約して再びメジャーの舞台に立っている。セカンドチャンスを大事にするお国柄とはいえ、日本ではおよそ考えられない。柿澤の場合、窃盗容疑で逮捕までされてしまったとなれば、なおさらだろう。

16年後の今も44歳で現役!

 ちなみにこのリベラ、実は44歳になった今も現役選手としてプレーを続けている。メジャーの舞台は2003年のジャイアンツが最後だったが、その後はボルティモア・オリオールズ、ヤンキース(!)、シカゴ・ホワイトソックスのマイナーなどで2006年までプレーし、2007年以降はメキシカン・リーグで現役を続けている。

 リベラは1973年生まれであり、今季途中からシアトル・マリナーズの会長付特別補佐という立場になってプレーからは遠ざかっているイチローと同い年。今シーズンはモンクローバに在籍し、現地7月7日時点で前後期通算45試合に出場して打率.245、2本塁打、4盗塁の成績を残している。

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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