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バレンティンが謝罪会見後に見せた“いつもの”笑顔

菊田康彦フリーランスライター

東京ヤクルトスワローズのウラディミール・バレンティン選手が29日に球団事務所で記者会見を行い、一連の騒動について謝罪しました。

ヤクルトの衣笠球団社長(左)らと会見に臨んだバレンティン(中)
ヤクルトの衣笠球団社長(左)らと会見に臨んだバレンティン(中)

昨年はシーズン60本塁打の日本新記録を樹立し、テレビCMにも起用されるなど、一躍時の人となった感のあったバレンティン選手。それだけに、離婚協議中の夫人に対する監禁・暴行の容疑で米国で逮捕されたと今月14日に報じられたのは、本当に衝撃的でした。

幸いなことに裁判所から保釈が認められ、渡航許可が下りたことで28日に来日し、沖縄・浦添のキャンプには他のナインとともに初日から参加できることになりました。これに先立って、“けじめ”として行われたのがこの日の記者会見でした。

会見は、まずは同席した衣笠剛球団社長兼オーナー代行と奥村政之編成部国際担当次長とともに頭を下げることから始まりました。その上で、バレンティン選手は「私のファン、ヤクルトスワローズのファン、ヤクルト球団、そしてチームメイトに謝りたい」と改めて謝罪の言葉を口にしました。

会場には筆者も含めて約80人の報道陣、そして12台のテレビカメラが集まり、趣旨が趣旨だけにバレンティン選手の表情には硬さが目立ちました。それでもひとまずけじめをつけたことで、いくぶん肩の荷が下りたのでしょう。会見が終わって帰り際に声をかけると、ようやくいつもの柔らかな笑顔で応じてくれました。

握った手のひらには、シーズン55本塁打の日本タイ記録を達成した試合直後や、セ・リーグMVPを受賞した昨年オフのプロ野球コンベンションで握手した時のような、火傷するかと思うような熱さはありませんでした。しかし、その顔に浮かんでいたのはいつもと寸分たがわぬ「ココ・スマイル」。そんなに言葉を交わすことはできませんでしたが、その表情を見たらなんだかこちらもホッとしました。

もっとも裁判はバレンティン選手不在のまま進められ、シーズン中には離婚調停のために一時的にチームを離れることも決まっています。今後もいろんな意味で注目されることは間違いありません。衣笠社長も会見で「昨年以上の活躍、それから野球に対する真摯な態度、そういったものをキチッとお見せすることによって(ファンの方々に)理解していただきたいと思っています」と話していましたが、野球選手としてのバレンティン選手を取材対象とする筆者としても、この一連の騒動を良いモチベーションにしてくれることを願うばかりです。

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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