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いよいよ待望の全米デビューを飾る山本由伸がWBCに臨む姿勢「すべての意味においてすごく楽しみ」

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
自主トレを公開した山本由伸投手(筆者撮影)

【WBCで注目を集めることになりそうな侍ジャパン三銃士】

 侍ジャパンの栗山英樹監督が最終的な出場登録選手30人を発表し、日を追うごとにWBCへの関心が高まっている。

 日本国内的にはダルビッシュ有投手、大谷翔平選手、吉田正尚選手、鈴木誠也選手が参戦するとともに、史上初めて日本国外生まれのラーズ・ヌートバー選手が侍ジャパン入りしたこともあり、彼らMLB組に注目が集まっているように感じる。

 だが大会を主催するWBCI(MLBと選手会の合弁組織)や、決勝ラウンドをホストする米国民の視点から侍ジャパンを見てみると、すでに米国でそのプレーに慣れ親しんでいるMLB在籍選手以上に、米国にも凄い選手だとの噂が届いているNPB在籍選手たちへの関心が高いはずだ。

 WBCは東京ラウンドを含め国内外すべての試合が米国で中継されることになり、それまでSNS上で投稿されたハイライト動画などでしか確認できなかったNPB選手たちのプレーを、じっくりチェックできる絶好の機会になるからだ。

 特に侍ジャパンの中では、今やNPB随一の投手と呼ぶに相応しい山本由伸投手、昨年は完全試合を達成した佐々木朗希投手、同じく昨年三冠王を達成した村上宗隆選手はまさに侍ジャパンの“三銃士”と呼んでいいほど、米メディアの間でも認知度が高い存在になっている。

練習後に報道陣の質問に応じる山本由伸投手(筆者撮影)
練習後に報道陣の質問に応じる山本由伸投手(筆者撮影)

【WBCが全米デビューの場になりそうな山本由伸投手】

 そんな3人の中でも、とびきり注目を集める存在になりそうなのが山本投手だろう。すでにMLBチーム関係者は彼がWBCで登板するのを、固唾を呑んで待ち望んでいるはずだ。

 というもの米メディアやMLB関係者の間では、今シーズン終了後に山本投手が置かれる状況を理解しているからだ。それは彼が以前からMLBに憧れを抱いていたこととは別に、今シーズン終了後にMLBからインターナショナルFA選手と認められる「25歳以上」と「MLBが認定する国外リーグ在籍6年以上」という2つの条件をクリアするのだ。

 つまり米国では山本投手が今シーズン終了後に、オリックスの判断次第でポスティングシステムを使ってMLBに挑戦する可能性があると受け取られている。そんな状況下で山本投手がWBCに参戦してくるのだから、MLB関係者が彼に注目しないはずがない。

 しかもWBCではMLB公式球と同じボールが使用され、登板試合によっては現役のMLB選手とも対戦する可能性があるのだから、山本投手を評価する上でまたとないチャンスというわけだ。

 仮に侍ジャパンが決勝ラウンドに進出し、山本投手が同ラウンドで登板するようなことになれば、球場に設置されているトラッキングシステムで山本投手の投球データも入手でき、MLB全体でシェアすることが可能になる。

 今回のWBCは、MLB関係者からすれば山本投手を調査する上で絶好の場であり、山本投手からすればMLB挑戦前に全米デビューできる貴重な場といえるのだ。

【現状維持ではなく更なる進化を目指し続ける飽くなき探究心】

 まさに今年は山本投手にとって野球人生の転機になりそうなシーズンだが、1月28日に自主トレを公開した山本投手は、現状に満足することなく更に進化しようとしている姿勢を示している。

 メディアの前で披露した山本投手のキャッチボールは、同じ施設内で自主トレをしていた他投手とは明らかに違っていた。投球動作に入る前から細かく体重移動を意識し、投げた終わった後もキャッチボール相手にボールの軌道を1球1球確認するなど、キャッチボールの質、丁寧さが図抜けていた。

 現在のNPB選手中では決して大きいとはいえない178センチという身長ながら、キレのある150キロ台中盤のボールを投げ続けられるのも、自らの投球と向き合い続ける山本投手の探究心があるからに他ならない。

 「体重移動の部分についてはずっとやってきているんですけど、このオフも2ヶ月間そこに集中して、チェックし探りながらやってきました。

 いい意味で去年までのものをあまり大切にしすぎず、新しい感覚だったり、いい感覚というのを得られるように積極的に取り組んできたので、多少フォームのリズムとかが変わったかなと思います」

 山本投手本人が説明するように、更に自分の理想とする投球に近づけるよう今オフも微調整を続けていたようだ。

【山本投手にとってWBCは「すべての意味においてすごく楽しみ」】

 もちろんWBCに向けた準備にも余念はない。自主トレ中は練習用にMLB公式球をもらい、ずっとそれを使用してキャッチボールを行っていたところ、違和感なく扱えていたようだ。

 「試合で投げていないのでどうなんだろうという気持ちはありますけど、キャッチボールのレベルであったり、傾斜を使ってブルペンで投げたりとかは違和感なく投げられているとは思います」

 そして探究心旺盛な山本投手らしく、WBCをも学びの場にしようと考えているようだ。

 「WBCは大切な、特別な大会だと思っていますし、とにかく世界一を目指してみんなが一丸になって戦うと思うので、僕もその中でチームの力になれるようにしたいなと思います。

 レベルの高い試合に出られるということは、選手としてそこで得られる経験だったり、新しい技術が身につくかもしれないし、またレベルアップになるかもしれないし、すべての意味においてすごく楽しみだなと思います」

 日本ではどうしても3大会ぶりのWBC制覇に注目が集まりがちだが、山本投手がどのように現役のMLB選手たちに真剣勝負を挑み、そしてWBCからどんな学びを得るのか楽しみでならない。

 そしてWBCで山本投手の投球を目撃した後で、米国がどんな反応をするのかも実に興味深いところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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