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4項目からHRダービーを大胆予想!大谷◎ストーリー○アロンソ▲ガロ×

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ますますオールスター戦での活躍に注目が集まる大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLBが大谷選手のプロモーション動画を制作】

 MLBが現地時間の7月10日、大谷翔平選手のシーズン前半戦での歴史的な活躍とオールスター戦での二刀流出場を受け、彼を称える30秒のプロモーション動画を制作したことを発表した。

 この動画はすでにTwitter上で公開されており、誰もが無料で視聴できる。この記事にも添付しておくので、是非チェックして欲しい。

 MLBが動画を制作した意図は明確で、史上初の二刀流枠でオールスター戦に出場する大谷選手を今回の主役に抜擢しようとしているからに他ならない。

 すでに多くのメディアが指摘しているように、今回は“大谷選手の、大谷選手による、大谷選手のための”オールスター戦になりそうだ。

【まずはHRダービーで大谷劇場が幕開け】

 まずはHRダービーで大谷劇場が幕を開けるわけだが、今や誰もが大谷選手を優勝の大本命に推している。7月9日のマリナーズ戦で、チームメイトさえ度肝を抜く特大本塁打(MLB単独トップの33号)を放ち、その期待はさらに膨らむばかりだ。

 本欄でもHRダービーに先駆けてルール説明を含めた「観戦ガイド」なる記事を公開させてもらっているが、今回は第2弾として、4つの項目から出場8選手を比較し、HRダービー優勝者を考察してみたいと思う。

 比較項目とは、「直近15試合の打撃成績」、「本塁打の平均飛距離」、「平均打球速度」、「Xファクター」──の4つになる(これらは7月9日現在のデータを引用)。

【最近の勢いはガロ選手の方が上?】

 まず重要になってくるのが、各選手がどんな打撃状態でHRダービーに参加してくるかだ。ここ最近本塁打を量産している大谷選手に期待が集まるように、やはり直近の各選手の好不調が勝敗を左右することになるだろう。

 そこでMLB公式サイトに掲載されている直近15試合の打撃成績から。上位4選手を抜き出してみた。実は好調だと思われた大谷選手以上に、ジョーイ・ガロ選手の好調ぶりが顕著なのだ。

(筆者作成)
(筆者作成)

 打率こそ低いが、ピート・アロンソ選手とトレバー・ストーリー選手も5本塁打を記録している。

【本塁打平均距離はストーリー選手がトップ】

 次に本塁打の平均飛距離だ。今回のHRダービーは多少のルール変更がなされ、対戦時間が短縮(1回戦樹決勝が3分間で、決勝は2分間)されているため、よりボーナスタイムの獲得が重要になってくる。

 そのボーナスタイムを得るには、475フィート以上の本塁打を放つ必要があるので、選手の本塁打平均飛距離は、その指標になるはずだ。

 こちらもMLB公式サイトに掲載されているデータを元に、上位4選手を抜き出してみた。こちらの1位はストーリー選手の419フィートで、大谷選手は417フィートで2位だった。

(筆者作成)
(筆者作成)

 ただストーリー選手はロッキーズに在籍し、今回の開催球場であるクアーズ・フィールドを本拠地にしている。今シーズンのストーリー選手はここまで11本塁打しているが、他球場よりボールが飛ぶとされる同球場で6本塁打しており、多少飛距離が上乗せされた部分があるのは否めないところだ。

 ということで、実質的な1位はやはり大谷選手だと考えていいと思う。

【平均打球速度は大谷選手に軍配】

 本塁打の平均飛距離だけではどうしても本拠地球場の影響を受けてしまうので、それを補填する上で各選手の打球平均速度もチェックしておきたい。

 打球角度にもよるが、打球速度が速ければ速いほど飛距離が伸びるのは物理で習ったとおりだ。打球速度に関しては本拠地球とは無関係なので、各選手の純粋なパワー比較になるはずだ。

 これもMLBサイトを元に上位4選手を抜き出すと、93.6mphで大谷選手が1位だった。ちなみに大谷選手に匹敵する打撃好調のガロ選手は、92.4mphで8人中5位だった。

(筆者作成)
(筆者作成)

【Xファクターは地元のストーリー選手に軍配】

 ここまでの3項目では明らかに大谷選手が有利だが、念のためXファクターも考えてみた。

 まずHRダービーは、単純に試合前の打撃練習の延長だと考えてはいけない。打撃練習よりも速いペースで打たなければならないし、1人で3分間も打ち続けることはない。また本塁打を狙うため、最初からフルパワーでバットを振らなければならない。それだけ体力を消耗するわけだ。

 それだけ普段の打撃練習とは異なるのだから、HRダービー経験者の方が優位に戦えることになるだろう。今回に関しては、経験者は前回覇者のアロンソ選手のみで、それ以外の7選手は初出場なので、アロンソ選手以外は横一線になっている。

 ただクアーズ・フィールドはMLBの30チームの中で最も標高が高い(約1600メートル)に位置する球場で、平地とは違いちょっとした運動でも息が上がってしまう。クアーズ・フィールドに試合中の選手のため、酸素ボンベが常備されているのは有名な話だ。

 この点に関しては、ロッキース所属のストーリー選手がかなり有利になってくるだろう。

 またファンの声援も、選手のモチベーションに繋がるので無視できない。これも地元ファンが多く集まることが予測されるためストーリー選手が有利だと思うが、今大会の主役とも言える大谷選手の人気も決して見劣りしないと考えている。

 そうした複合的な要素を考えて、自分なりに導いたXファクターの上位4選手は、1位ストーリー選手、2位アロンソ選手、3位大谷選手、4位マンシーニ選手──になった。

(筆者作成)
(筆者作成)

【総合評価はやはり大谷選手】

 これら4項目を◎4点、○3点、▲2点、×1点で得点化すると、1位は大谷選手の12点、以下、ストーリー選手9点、アロンソ選手8点、ガロ選手6点が続いた。やはり総合評価でも大谷選手が1位に輝いた。どう考えても、彼が大本命だということは不変に思えてならない。

 しかも不気味な存在になりそうなストーリー選手とガロ選手は、1回戦で直接対決してくれ、しかも大谷選手とはトーナメントで別の山に入るため、決勝まで彼らと当たることはない。

 それを考えると大谷選手が決勝進出するためには、準決勝で対戦する可能性が高いアロンソ選手を破るしかなさそうで、ここが1つの山場になりそうだ。

 いずれにしても、日本人が初出場するHRダービーが楽しみでしかない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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