もはやノーヒットノーランは“快挙”ではなくなった?!シーズン打率から紐解く明確な相関関係

自身初のノーヒットノーランを達成したジョン・ミーンズ投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ミーンズ投手が自身初のノーヒットノーランを達成】

 オリオールズのジョン・ミーンズ投手が現地時間5月5日のマリナーズ戦に登板し、打者27人を相手に無安打無得点無四球の“準完全”で自身初のノーヒットノーランを達成した。

 MLB在籍4年目の左腕投手にとって完投自体も自身初であり、さらに12奪三振も自己最多タイと、まさに記録ずくめの試合となった。

 ただ3回に許した唯一の走者は、“三振&暴投”からの振り逃げによるもの(次打者の間に盗塁死)。右打者に投げた外角のカーブを捕手が後逸したのだが、決して捕球できないようなボールではなく、むしろ完全試合を逃したという表現の方が正しいのかもしれない。

 マリナーズの先発を務めた菊池雄星投手も7回を投げ、7三振を奪い5安打3失点の好投を演じたものの、ミーンズ投手の快投の前に今シーズン2敗目を喫することになった。

 ちなみに1999年に開業した、マリナーズの本拠地球場「Tモービル・パーク(前セーフコ・フィールド)」でのノーヒットノーラン達成は今回で6回目。その中には2015年の岩隈久志投手も含まれている。

【早くも今シーズン3度目の快挙達成】

 今回のミーンズ投手のノーヒットノーランは、何と今シーズン3度目の快挙となる。

 すでにパドレスのジョー・マスグローブ投手が4月9日のレンジャーズ戦で、そしてホワイトソックスのカルロス・ロドン投手が同14日のクリーブランド戦で、それぞれ自身初のノーヒットノーランを達成している。

本欄で今シーズンは極端な“投高打低”傾向で推移していることを報告させてもらっているが、こうして短期間でノーヒットノーランが重なるのも、まさにその傾向を裏づけているのではないだろうか。

 ちなみに、これまでシーズン最多のノーヒットノーラン達成回数(完全試合を含む)は、1990年、1991年、2012年、2015年──と4度記録されている7回だ。5月上旬の時点ですでに3回達成された今シーズンは、記録更新の可能性が十分にありそうな気がする。

【ここ数年増加傾向にあるノーヒットノーラン】

 ところで野茂英雄投手のMLB挑戦とともに、1995年から現場取材を続けてきた立場から、ここ数年はノーヒットノーランの希少価値が下がってきているように感じている。

 そこでMLB公式サイトに掲載されているノーヒットノーランの達成リスト(同じく完全試合を含む)を調べたところ、前述通り1990年と1991年も記録的な数が達成されているものの、1995年以降で見てみると、やはり2010年以降からかなり増加傾向にあるのが確認できた。

 つまり20年前から比べると、現在の方がノーヒットノーランを達成しやすい環境になっているという仮説が成り立つ。

【シーズン打率と明確な相関関係が】

 そこで「Modern Baseball(近代野球)」として区分けされる1901年から2020年までのノーヒットノーランの達成回数と、各年のシーズン打率を調べて見たところ、明確な相関関係があることが判明した。

 まずは下記の表をチェックして欲しい。

(筆者作成)
(筆者作成)

 シーズン打率が低めだった1901~1920年辺りは、比較的多くのノーヒットノーランが達成されているが、シーズン打率が.280~.300で前後している1920~1940年辺りは、極端にノーヒットノーランの数が減っている。

 それ以降に関しても、シーズン打率の波に合わせるようにノーヒットノーランの数も推移ししているのが理解できるだろう。

 そしてここ最近は、2010年からシーズン打率が明らかな下降線を辿る一方で、ノーヒットノーランの達成回数は明らかに増加している。

 5月4日時点のシーズン打率は.234と、前回報告させてもらった時より2厘ほど上昇しているが、今も尚MLB史上最低レベルで推移している状況に変わりはない。

 この傾向が続くようだと、今シーズンは更にノーヒットノーランが達成されるシーンを目撃することになりそうだ。合わせて記録更新にも注目したいところだ。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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