打撃進化で異次元レベルに足を踏み入れたマイク・トラウトに期待がかかるシーズン出塁率5割という金字塔

今シーズンは明らかに打撃が進化しているマイク・トラウト選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ただ1人打率4割をキープするトラウト選手】

 開幕から1ヶ月が経過したMLBだが、日本では連日のように大谷翔平選手の投打にわたる活躍が話題を集めているようだ。

 もちろん大谷選手の活躍は米国でも関心事の1つであることに変わりないが、大谷選手以外にも目覚ましい活躍をしている選手たちが多く存在し、メディアやファンを盛り上げ続けている。

 その中の1人が、大谷選手の同僚であるマイク・トラウト選手だ。すでに彼は現在のMLBを代表する選手として認知されているスーパースターなのだが、今シーズンのトラウト選手は、これまで以上の活躍を続けているのだ。

 5月4日時点で打率.410は、MLBトップ。現在も4割以上をキープしているのはすでに彼1人しかいない。他にも出塁率(.515)、長打率と出塁率を足したOPS(1.274)でも堂々の1位に輝いている。

 すでに本欄で報告しているように、今シーズンのMLBは史上最低レベルのシーズン打率で推移していることからも、トラウト選手のバッティングは一際際立っているのだ。

 スポーツ専門サイトの『the Score』ではランキング形式で現時点での両リーグのMVP候補5人を予想しているのだが、4月の月間MVPを獲得したバイロン・バクストン選手やゲリット・コール投手らを押さえ、トラウト選手がア・リーグの1位に選出されているほどだ(ちなみに大谷選手はランク外)。

【明らかに進化しているバッティング】

 すでにMVP受賞3回を誇り、毎年のようにMVP候補に名前が挙がってきたトラウト選手だけに、今更スポーツ専門サイトのMVP筆頭候補になったとしても何の驚きはないだろうし、現在の活躍も期待通りだと考える人も少なくないだろう。

 だがMLB屈指の強打者であるトラウト選手が、今シーズンは明らかに進化の徴候を示しているのだ。それを指摘しているのが、ESPNのバスター・オルニー記者だ。

 同記者がホストを務める『Baseball Tonight』ポッドキャストで、オルニー記者は具体的なデータを示した上で、今シーズンのトラウト選手はこれまで苦手としてきた高めの速球を完全に克服していると解説している。

 オルニー記者の説明を受け、早速個人的に調べたところ、確かに今シーズンのトラウト選手のゾーン別打率は、これまで圧倒的な強さを示していた低め同様、高めでも高打率を残しているのが分かった。

 MLB公式サイトの1つ『Baseball Savant』に掲載されているトラウト選手の今シーズンのゾーン別打率を見ると、外角高めは打率.000だが、真ん中高め、内角高めに関しては打率.500を誇っている。

2021年ゾーン別打率(Baseball Savant』より)
2021年ゾーン別打率(Baseball Savant』より)

 3度目のMVPを受賞した2019年のゾーン別打率と比較してみても明らかなように、以前の彼は明らかに高めの球を苦手にしており、今シーズンのトラウト選手は、投手から見れば付け入る隙がなくなった、完成された打者に近づいているということなのだ。

2,019年ゾーン別打率(Baseball Savant』より)
2,019年ゾーン別打率(Baseball Savant』より)

【打率4割以上に期待できる出塁率5割】

 トラウト選手のバッティングが進化しているのが確認できたとなれば、やはり彼に対しこれまで以上の活躍を期待したいのはMLBファンとしては当然のことだろう。

 そこで個人的に期待したい記録というのが、シーズン出塁率5割の達成だ。

 1941年のテッド・ウィリアムス選手を最後に、シーズン打率4割を達成した選手はおらず、この記録はすでに「untouchable record(手の届かない記録)」になっている感がある。

 だがシーズン出塁率5割は、バリー・ボンズ選手が2001年から4年連続で達成しており、もしトラウト選手が達成すれば17年ぶりの快挙ということになる。

 だからと言ってシーズン出塁率5割は、決して簡単な記録ではない。これまでMLB史上で達成できた選手はわずか9人しか存在しない。さらに近代野球に移行したといわれる1901年以降に絞ると、ボンズ選手、ウィリアム選手、ベーブ・ルース選手、ミッキー・マントル選手、ロジャース・ホーンスビー選手──の5人のみだ。

 つまりシーズン出塁率5割達成は、MLBの“超エリートクラス”に仲間入りすることを意味するのだ。

 トラウト選手は2016年から4年連続で出塁率タイトルを獲得しており、元々出塁率が高い選手として知られ、この記録を達成できる有力候補であることは間違いない。

 果たしてシーズン終盤で彼の出塁率は、どの程度の数字を維持しているだろうか。今後の楽しみにしておきたい。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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