MLB15年目のカート・スズキから見た大谷翔平は「投げる度に完全試合、ノーヒッターを期待できる投手」

投手としての大谷翔平選手を最大限に評価するカート・スズキ選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【制球力を乱した今季2度目の登板】

 右手中指のマメの影響で登板を回避してきた大谷翔平選手が、現地時間の4月20日のレンジャーズ戦に今シーズン2度目の登板に臨んだ。

 試合前にジョー・マドン監督から「75球前後」と球数制限が明示される中での投球となったが、4回を投げ1安打無失点、7奪三振、7四死球という内容だった。肝心の球数は予定よりやや増え、80球だった。

 その数字からも明らかなように、大谷選手は立ち上がりから制球を乱していた。全80球のうちストライクだったのは半分以下の37球。かなり苦しい投球が続いていた。

 試合後の大谷選手は制球力について「ゼロ点です」とした上で、厳しい自己評価に終始した。

 「全体的にストレスが溜まるようなリズムで投げていた」

 「今日は相手というより自分と向き合っていた時間の方が長かった」

 「むしろスプリットしかよくないという感じだった」

 「自分でピンチを招いて自分で抑えたってだけのピッチングだった」

【あくまで賞賛を繰り返したスズキ選手】

 こうした大谷選手本人とは正反対の見方をしているのが、公式戦で初めてバッテリーを組んだカート・スズキ選手だ。試合後の彼は、大谷選手に対し賞賛する言葉を繰り返している。

 まず制球力に関しては、以下のように擁護している。

 「球自体はよかった。マメのため2週間近く実戦で投げていなかったのだから、多少鈍ってしまうのは仕方がない。制球力は本人が望むほどよくなったとは思うが、肝心な場面ではしっかり自分の投球ができていた。それが大きかった」

 またこの日の大谷選手はマメの悪化を懸念して、真っ直ぐを少なめにして、力を抑え気味に投げていたことに関しても、まったく問題なかったとしている。

 「確かにショウヘイは球界を代表する球速を誇る投手の1人だが、彼は投球術というのを理解している。だから彼は特別な存在になれている。

 彼はボールにスピンをかけ、状況に応じてどんな球でも投げることができる。彼はただ投げるのではなく、マウンド上でどんな投球をしていくのか、しっかり考えを持っている。

 たとえ球速が95マイル(約153キロ)でも制球さえあれば、変化球も揃っているし、何の問題もない」

 スズキ選手は、大谷選手の制球力以上にその投球内容を評価しているのが理解できるだろう。

【常に特別なことを期待させてくれる投手】

 スズキ選手の賞賛は、まだまだ続く。米メディアから「これまで受けてきた投手たちと比較して彼の球は」という質問に対し、以下のように答えている。

 「正直これまで自分が受けてきた投手の中でベストの中に入ってくる。シャーザーやストラスバーグがそうだったが、彼も同じレベルの球だ。彼は本当に特別な才能を有している。彼が素晴らしい投球をする姿を見るのは、この上なく幸せだ。

 可能性は無限大だ。もし彼が登板した試合で制球的にいい感覚を掴んだとしたなら、何か特別なことをするチャンスだ。彼はマウンド上でボールを得れば、常に完全試合、ノーヒッター、完封試合、奪三振を期待できる。彼はそういうタイプの投手だ」

 これまで5チームを渡り歩いたMLB在籍15年目のベテラン捕手の目には、大谷選手はすでに、2019年にワールドシリーズを制した同僚のマックス・シャーザー投手やスティーブン・ストラスバーグ投手と同等の投手に映っているようだ。

【次回登板は中5日で再びレンジャーズ戦】

 以前から大谷選手が指摘しているように、ブルペンと実戦ではどうしても投球の強度が変わってきてしまう。実戦で制球力を修正していくには、やはり実戦を重ねることが必要になってくる。

 それが2週間も空いてしまったのだから、スズキ選手の言うように、多少感覚が鈍っていたとしても何ら問題はないだろう。肝心なのは、次回の登板で如何にそれを修正できるかにかかってくる。

 登板翌日の試合前会見でマドン監督は、大谷選手のマメの状態に問題はなく、現時点ではローテーション通り中5日で、4月26日のレンジャーズ戦に登板する方向であることを明らかにしている。先発投手として本格的に、ローテーション通りに投げていくことになりそうだ。

 すでに打者として人々を驚かせる活躍を続けている大谷選手。そろそろ投手としても本領発揮する時が近づいているのかもしれない。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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