Yahoo!ニュース

新アリーナ移転計画を発表した西宮ストークスが立ち向かう「平均入場者数4000人以上」という大きな試練

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
新アリーナの現状報告を行った参画企業ら((c)Smart Value)

【神戸に開業予定の新アリーナの全貌が明らかに】

 つい先日、2024年に神戸で開業予定の新アリーナへの本拠地移転計画を明らかにしていた、B2の西宮ストークスが4月7日、新アリーナ建設プロジェストに参画する企業らとともに記者会見を開き、現状報告を行った。

 このプロジェクトは、神戸市の新港突堤西地区(第2突堤)再開発事業に関する公募に合わせ提出された1つで、現在は優先交渉権を得ながら今秋の正式認可を目指し、推進されているものだ。

 正式認可されれば、神戸市のウォーターフロントに1万人収容規模(バスケットは8000人)を誇る総合娯楽アリーナが誕生することになる。

 このプロジェクトには、『チェイス・センター(NBAウィリアーズの本拠地アリーナ)』や『グローブ・ライフ・フィールド(MLBレンジャーズの本拠地球場)』などの設計・建築に携わった外国企業も参画。アリーナを中心とした複合型娯楽施設の建設を目指している。

 立地条件や収容規模等を勘案すれば、Bリーグでも屈指のアリーナになるのは確実で、B1昇格を目指しているストークスにとって大きなメリットになる。

【ストークスの経営体制も強化へ】

 またストークスは今回のプロジェクトを機に、経営体制の強化も図っている。

 ストークスの運営母体である『株式会社ストークス(3月29日から名称変更)』は、プロジェクトの推進企業である『株式会社スマートバリュー』の子会社化され、スマートバリューを含めた法人3社が株主に加わることになった。

 この結果ストークスは、「5000人以上収容のアリーナ」「経営体制の強靱化」というB1ライセンス取得の条件をクリアした状態で、今月Bリーグが実施するライセンス審査の結果を待つことになる。

 もしこの審査でB1ライセンスを取得できれば、すでに進出を決めているプレーオフで決勝戦まで進出することで、来シーズンは自動的にB1に昇格することになる。

【2026年からの構造改革を目指すBリーグ】

 だがストークスにとって明るいニュースばかりではない。新アリーナに移転してから、大変な試練が待ち受けている。

 それが2026年からBリーグが目指している構造改革だ。

 今回の会見で島田チェアマンが明らかにしているのだが、「NBAに次ぐ世界第2のリーグ」を旗印に、リーグをさらに発展させるため、現在のB1、B2、B3の昇降格制度を完全撤廃する予定だ。そして10~18チームでB1を固定させ、それ以外のチームは下部リーグに回し、将来的に新規チームとしてB1に受け入れていく方針を打ち出している。

 さらに島田チェアマンは、B1入りできる基準として「アリーナの確保」「年間売り上げ12億円」「平均入場者数4000人以上」の3つを示しているのだが、この基準をクリアするのは現在のB1チームでも至難の業なのだ。

 例えば2018-19シーズンのクラブ別収支報告書を見ると(昨シーズンは新型コロナウイルスによりシーズン途中で打ち切られたため参考にしにくい)、売り上げが12億円を超えているのは、千葉、三河、A東京、宇都宮、大阪の5チームしか存在していない。

 またこのシーズンで平均入場者数が4000人を上回っているチームになるとさらに減り、千葉と宇都宮の2チームのみになってしまう。この基準がどれほど厳しいものなのか理解できるだろう。

【シーズンチケット4000枚以上の販売はノルマに】

 島田チェアマンによれば、B1入りの仕分け作業を2024-25シーズンから開始していくようだ。つまり2シーズンの間で各チームはB1生き残りを懸け、それぞれの企業努力が試されることになる。もちろん新アリーナ移転1年目を迎えるストークスにとっても、相当大きな試練となる。

 8000人を収容できる新アリーナは間違いなく基準をクリアしているが、残り2つの基準は、まさにチームにとって未知の領域だ。それを少しでも可能にしてくれるのがシーズンチケットの販売だ。

 NBAでも新規チームを受け入れる場合、アリーナ状況やオーナー企業の財政状況などに加え、シーズンチケットの予約状況も重要視される。将来的なチーム運営を見極まる上で、重要な指標になるからだ。

 シーズンチケットを数多く販売できれば、チケット購入者が観戦に訪れなくてもチケット収入は確保されることになる。またシーズンチケット販売が増えれば増えるほど、ある程度の入場者数も見込めることになるためだ。

 そう考えると、ストークスとしても新アリーナに移転する際には、収容人員の半数に相当する4000枚のシーズンチケットは販売できるようにしたいところだろう。

 それが実現できれば、「平均入場者数4000人以上」のクリアがより現実味を帯びてくるし、シーズンチケットの売り上げが確実に収入増に繋がっていく。

 そうした地道なセールス活動を、新アリーナに移転するまで西宮を拠点にしながら神戸を中心に展開していくという難しさもあるのだ。

 Bリーグ屈指のアリーナを得た以上、やはりストークスとしても2026年から堂々とB1入りを果たしたいだろう。すべては彼らの経営手腕にかかっている。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事