長期大型契約は選手にとって幸せ? 過去の選手たちが辿った悲しい末路

年俸調停権取得前にMLB最長期となる14年の契約延長に合意したタティスJr.選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【パドレスがタティスJr.選手の契約延長を正式発表】

 すでに日本でも報じられているように、パドレスが現地時間の2月22日、フェルナンド・タティスJr.選手との契約延長を正式発表し、キャンプ施設で記者会見を行った。

 MLB最長期契約記録となる14年、総額3億4000万ドルの契約延長に合意したタティスJr.選手は、会見上で終始晴れ晴れしい表情を浮かべていた。

 「この街(サンディエゴ)を愛している。ファンを愛している。文化を愛している。雰囲気を愛している。そして勝つこと、サンディエゴで勝つことがすべてだ」

 今回の契約延長は、異例ずくめだと言われている。前述の最長期契約記録ばかりでなく、MLB在籍2年でまだ年俸調停権すら取得していない22歳の有望若手選手に、これほどの大型契約を用意したのはまさに初めてのケースだからだ。

【複数メディアから指摘されるリスク】

 米メディアでも今回の長期契約延長は大々的に報じられる一方で、早くも複数メディアからリスクを指摘する声が挙がっている。

 まず今回の契約延長の詳細を紹介しておくと、MLB公式サイトによれば、各シーズンの年俸の内訳は、今シーズンから2024年までで合計2400万ドルが支払われ、2025~2026年で各2000万ドル、2027~2028年で各2500万ドル、そして2029~2034年で各3600万ドルと、徐々に年俸が上がっていくシステムになっている。

 また別のメディアによると、今シーズンから4年間の2400万ドルに関しても、今シーズンの年俸は約171万ドルに留まり、こちらも年々上がっていくように設定されているようだ。

 いずれにせよ22歳の有望若手選手に、破格の契約だったのは間違いないところだ。しかもパドレスは、2018年オフにマニー・マチャド選手と10年、総額3億ドルの大型契約を結んでおり、2028年まで彼に年俸3000万ドルの年俸を支払い続けなければならないのだ。

 つまり2025年以降のパドレスは、タティスJr.選手とマチャド選手の2人だけで、年俸5000万ドル以上を用意しなければならなくなる。MLB内でも最もマーケット規模が小さいと言われるサンディエゴで、長期間にわたり低予算チームの年俸総額に匹敵するような額を2人のために払い続けることができるのか。メディアから疑問視する声が挙がるのは、当然なのかもしれない。

【長期大型契約を結んできた選手たちの末路】

 そんな中、タティスJr.選手の契約延長に合わせるように、MLB公式サイトのサラ・ラングス記者が、興味深い記事を公開している。過去に10年以上の長期大型契約を結んだ選手たちを紹介したものだ。

 そこで彼らが契約後に、どのような道を歩んでいったのかを調べてみたところ、契約チームで最後まで契約を全うできた選手が、ほとんど存在しないことが分かった。むしろ契約終盤に、悲しい末路を迎えている選手が少なくないのだ。

 そこで下記の表を見てほしい。ちなみにマイク・トラウト選手とムーキー・ベッツ選手の契約内容は、契約延長前に契約していた分を省き、純粋に延長分だけを表記したものだ。そのため契約が今シーズンから始まっている。

(筆者作成)
(筆者作成)

 まず過去の長期大型契約で、契約チームで契約を満了できたのは、デレック・ジーター選手しかいない。また現在契約下にある選手でも、ロビンソン・カノ選手、ジャンカルロ・スタントン選手はすでにトレードに出されている。

 またアルバート・プホルス選手とジョーイ・ボット選手は今も契約チームに在籍しているが、契約終盤を迎えたここ数年は成績が下降気味で、高額年俸がネックでトレードに出すこともできず、チームを再編する上で足枷になっている状況だ。

 もちろん長期間高額年俸を保証されている立場から、成績を残せなければメディア、ファンから強烈な批判、バッシングを浴びることになる。

 とりあえずマチャド選手以降の選手たちは、まだ契約合意からそれほど経過していないので、当然のごとく契約チームに在籍しているが、過去の例を見る限り、今後どうなっていくかは誰にも分からない。

 さらに注目したいのは、今回のパドレスのように同時期に複数選手と長期大型契約を結んでいるのは、過去にヤンキースしか存在していないという点だ。それだけリスクが伴うということなのだろう。

 果たしてタティスJr.選手とマチャド選手は、パドレスで契約を満了することができるのだろうか。現実的に見て、明るい未来を想像できない自分がいる。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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