アドベンチャーランナーの第一人者が始めたリアル飛脚便! 荷物と一緒に人々の夢を運ぶユニークビジネス

京都から福岡まで600キロを走って荷物を届けた北田雄夫氏(本人提供)

【アドベンチャーランナーの第一人者が珍ビジネスを開始】

 日本のアドベンチャーランナーの第一人者である北田雄夫氏が、昨年末から新たなにユニークなビジネスを立ち上げている。

 北田氏といえば2017年に日本人として初めて世界7大陸アドベンチャーマラソンを走破しているランナーだ。『情熱大陸』でも取り上げられたことがある人物なので、その名を聞き及んでいる人も少なくないはずだ。

 北田氏が始めたビジネスは、その名も「リアル飛脚便」。自分自身のトレーニングと実益を兼ねたビジネスで、依頼主から預かった荷物を自らの足だけを使って届けようという配達サービスだ。

 すでに最初の依頼を受け、年末年始を利用して京都から福岡間の600キロを12泊13日かけ走破し、無事荷物を配達している。

【きっかけはUber EATSとの並走?】

 2018年からプロとして活動している北田氏は、以前から企業からのスポンサー契約にすべてを頼らず、独自で活動費をつくれるような環境づくりに取り組んできた。その中で走るという行為そのものから何か価値を生み出し、人々に提供できないだろうかという漠然とした考えが常に頭にあったという。

 そして迎えた昨年の11月のことだった。今年2月に参加予定のアラスカで行われるレースに備え、本番で引くソリに見立ててタイヤを引くトレーニングを行っていたところ、偶然Uber EATSの配達員と並走することになった。

 「並走しながら、走っているのは一緒なのに彼は荷物を配達していて、僕は単にトレーニングで走っているだけというか…(笑)。何か思うことがあったというか、ヒントになった部分がありました。

 それとタイヤ引きトレーニングを(SNSを通じて)報告すると、『自分を乗せて欲しい』とか『何か乗せていったら』みたいな返事が送られてきて、自分も何か配達できるのではという感じになったんです」

 そこでリアル飛脚便のアイディアを、奥さんや身近な人に相談してみたところ、全員が好感触を示してくれたという。そこで12月に入りSNSを通じて告知をしたところ、すぐに数件の問い合わせが届く人気ぶりで、その中から京都の企業からの依頼を受け、同社の九州支店まで荷物を運ぶことになった。

【心身ともに充実したトレーニングに】

 今回の依頼は、北田氏を応援したいという企業さんからのもので、社長さんのメッセージが入った2本の筒を九州支店に運ぶというものだった。

 配送指定日時に九州支店に向かうと、スタッフが表に出て出迎えてくれたという。メッセージの1つは社員に向けた年頭挨拶で、もう1つはサービスを無事完了した北田氏宛のものだった。北田氏も「(自分が走って荷物を運ぶことで)1つの会社のイベントになった雰囲気でした」と充実感を口にしている。

配達した荷物の1つは依頼主から北田氏に向けたメッセージだった(本人提供)
配達した荷物の1つは依頼主から北田氏に向けたメッセージだった(本人提供)

 ただこれは、単に自らの足で荷物を運ぶという営利目的だけではない。北田氏にとって理想的なトレーニングにもなっていた。

 600キロという行程は普段のレースに匹敵する距離であり、長い行程を毎日走ることで、1日のトレーニングでは体験できない気づきがあったという。

 「1日50キロ走ったのと、5日連続や10日連続で走ったのでは、身体に対する反応が違ってきます。

 具体的には足の裏のダメージにより、熱が出たり、足がむくんだり、土踏まずが下がってくる中で、自分はどこにマメができるのか、また走り方がどう変わるのかを確認できました。普段とは違った学びがありました」

【走ることで体験できた街の景色】

 ただ今回は普段のレースのように自分を追い込みながら走り続けたわけではない。ホテルに宿泊し観光をしながらの行程だったので、各地の風光明媚を楽しむという心に癒しを感じながらのランニングだった。

 「13日間も走りましたので、いろいろ想い出に残る景色や場所がありましたね。

 今真っ先に頭に浮かんだのは、北広島市の西条ですね。旧山陽道沿いですが、歴史ある宿場町で、ちょうど1月1日の元旦に通過したんです。偶然雪も降っていて、すごく趣があって印象に残っています。

このメッセージを付けながら600キロを走りきった(本人提供)
このメッセージを付けながら600キロを走りきった(本人提供)

 こうして走ってみると、本当に昔の人はここを歩いていたのかなというか、600キロという距離をリアルに体験できました。実際に走ったからこそ、江戸時代の人たちが地方から京都に行くのは本当に大変だったろうなと感じることができました」

【将来のトップアスリートのモデルケースに】

 もちろん北田氏は、今回のリアル飛脚便を生業にしたいわけではない。今後もレース中心の生活を続ける中で、トレーニングと活動資金を目的にリアル飛脚便を提供できればと考えている。

 これまで多くのトップアスリートにとって、活動を続ける上で企業との契約が大きな柱になってきた。だが先日もリンガーハットが内村航平選手との契約継続を断念するなど、企業の業績次第で活動継続の危機を迎えるリスクがある。

 今回の北田氏の取り組みは、アスリートのトレーニング自体を見事に収入に繋げる画期的なアイディアであり、将来に向けたトップアスリートの活動形態のモデルケースになる可能性を秘めている。

 「実際今回やってみて、もっと可能性があるなと感じました。もっと智恵を搾り工夫していけば、走るということからもっといろいろな価値提供できるのではと感じました。それが実体験できたのは良かったです」

 もし北田氏のリアル飛脚便に興味がある人がいれば、公式サイト内の問い合わせフォームから確認して欲しい。

「突拍子のない荷物以外は何でも運びますし、道が続く限りどこへでもいきます。

 送る側が面白いと思ってもらえるなら、ワクワクしながら(どんな荷物を誰に送るのかを)考えてもらえると嬉しいですね。皆さんも参加できる余地があるサービスなので、多くの人に興味を持ってもらえるといいですね」

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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