MLB時代のトラウマを克服できなかったジャスティン・ボーア NPB残留のカギはやはり対左投手?

阪神でもMLB時代のトラウマを克服できなかったジャスティン・ボーア選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ボーア選手が自由契約選手に】

 すでに主要メディアが報じているように、阪神に在籍していたジャスティン・ボーア選手が11月20日に自由契約選手として公示された。今後はFAとして日米問わず、全チームとの交渉が可能になった。

 複数メディアによれば、ボーア選手は来シーズンもNPB残留を希望しているようだ。すでに本欄でも報告しているように、新型コロナウイルスの影響でMLBのFA市場は史上稀に見る冷え込みが続いており、そうした背景もボーア選手の考えに影響を及ぼしているのかもしれない。

 いずれにせよ、今後他チームからボーア選手にオファーが届くのか、注目が集まるところだ。

【周囲の期待に応えられなかった打撃成績】

 昨年12月に阪神がボーア選手の獲得を発表した際、メディアは長距離が期待できる左打者だったこともあり、「バースの再来」と形容し関心を寄せた。

 だが彼の成績は、打率.243、17本塁打、45打点に終わり、打撃主要3部門でリーグ10傑に入ることができなかった。強打者の指標といわれるOPS(出塁率+長打率)でも.760に留まり、合格点の.800に届いていない。

 残念ながらこの成績では、周囲の期待に応えられなかったといわれても仕方がないところだ。

【本塁打率はMLB時代とほぼ変わらず】

 ただちょっと視点を変えれば、ボーア選手の成績は極端に期待外れだったわけではない。

 ボーア選手はMLB通算で91本塁打を記録しているが、通算打数1714を要しているので、その本塁打率は0.053ということになる。2020年のボーア選手は329打数で17本塁打を放っており、その本塁打率は0.051となり、MLB時代と大きな差はない。

 さらに他のMLB通算成績も、打率.253、OPS.794であり、今年の成績が極端に落ち込んでいるわけではない。むしろデータ上は、例年とほぼ変わらない成績を残していたことになる。

【カギを握るのは対左投手】

 さらに細かいデータでも、MLB通算と非常に類似している。その1つが左右投手別成績だ。

 ボーア選手はMLB通算で、対右投手が打率.262、OPS.836に対し、対左投手が打率.215、OPS.627と、左右で極端な差があった。

 今年のボーア選手も、対右投手が打率.251、OPS.807で、対左投手が打率.219、OPS.624だったので、こちらもほぼ例年通りに推移している。つまりボーア選手は日本でも、「左投手が苦手」というMLB時代のトラウマを克服することができなかったというわけだ。

 OPSを見る限り、右投手だけなら及第点を与えられる成績を残しているものの、左投手の成績が大きなマイナス要因になっているのは明らかだ。だがボーア選手が左投手をまったく打てないと結論づけるのは、ちょっと危険な面もある。

 2019年シーズンは大谷翔平選手と同じエンジェルスに在籍し、MLBで52試合、3Aで49試合に出場している。MLBでは左右ともに打率1割台に終わったものの、3Aでは左投手相手に打率.391、OPS1.161と、右投手(打率.291、OPS1.085)を上回る成績を残しているのだ。

 ボーア選手は左投手を打てないと考えるのか、それとも打てる可能性があると考えるのか…。この判断の差が、NPB残留のカギになりそうだ。

 ちなみに今回のデータは、MLB時代のものが「BASEBALL REFRERNCE.COM」と「MiLB.com」、阪神のものが「データで楽しむプロ野球」を参照にしている。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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