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37歳以上のTJ手術で2年以上の現役継続率はわずか20%! ジャスティン・バーランダーの不透明な未来

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
37際でトミージョン手術を受ける決断をしたジャスティン・バーランダー投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【バーランダー投手がTJ手術を受けることを公表】

 7月24日のシーズン開幕戦に登板したのを最後に、右腕の張りで故障者リスト入りしていたアストロズのジャスティン・バーランダー投手が現地時間の9月19日、インスタグラム上に動画を投稿し、近日中に右ヒジ内側側副靱帯を再建するトミージョン手術(以下、TJ手術)を受けることを公表した。

 バーランダー投手に関してはつい最近まで復帰間近との報道が続いていただけに、このニュースは瞬く間に全米中に広がり、人々に衝撃を与えることになった。

 バーランダー投手によれば、リハビリメニューの一環で模擬試合に登板したところ、右ヒジに異常が発生したという。その後MRI検査と医師の診断を仰いだ結果、TJ手術を受けることが最善策との結論に達したようだ。

【復帰は2022年シーズン以降に】

 またバーランダー投手は今回のTJ手術を楽観的に受け取り、「少しでも長く現役を続けるためにもより健康な身体にするために必要なこと」だと話し、前向きに復帰を目指す姿勢を示している。

 MLB公式サイトに掲載されているTJ手術の解説によれば。復帰までに要する期間は10~18ヶ月間としており、回復状況次第では来シーズン終盤で復帰できる可能性が残されている。

 だが37歳という年齢を考えれば、リハビリもより慎重に進めていくことになり、やはり2022年シーズンでの復帰が現実的といえそうだ。それだけ高齢でのTJ手術はリスクが高いと考えるべきだろう。

【37歳以上のTJ手術復帰率はなんと90%】

 バーランダー投手のニュースが様々なかたちで報じられる中、スポーツ専門サイト「the Score」が、37歳以上でTJ手術を受けた投手の復帰状況とリハビリ期間をまとめた記事を公開している。

 この記事によれば、これまで37歳以上でTJ手術を受けた投手は10人存在している。バーランダー投手と同じ37歳が4人、38歳が2人、さらに40歳2人、41歳1人、47歳1人──となっている。ちなみに最高齢の47歳でTJ手術を受けたのは、長年マリナーズで活躍したジェイミー・モイヤー投手だ。

 この10投手のうち、手術後にMLBの公式戦に登板できなかったのは、クリス・コステ投手の1人しかいない。つまり9投手がMLBのマウンドに戻っており、その復帰率は90%に及んでいる。

 リハビリ期間に関しては、かなりバラツキがある。マイク・フェターズ投手のように9ヶ月間で復帰できた投手もいれば、ブロンソン・アローヨ投手のように33ヶ月間と、ほぼ3年かかった投手もいる。

 ただ9人中7投手が18ヶ月以内で復帰できており、基本的にはMLB公式サイトの解説通りに復帰できているようだ

【2年以上の現役継続率はわずか20%に】

 だが復帰率とは違い、非常に悲観的なデータも存在している。実はこちらの方がかなり深刻な状況だ。

 バーランダー投手は前述通り、少しでも長く現役を続けるためにTJ手術を受ける決断をした。そこでTJ手術から復帰できた9投手の復帰後の状況をチェックしたところ、なんと9人中7人が復帰したシーズンを最後に、MLBの公式戦に登板できていないのだ。

 つまりTJ手術後に、2年以上現役を続けられた投手は2人しか存在していないということだ。

 しかもこの2投手は、アーサー・ローズ投手(復帰後4年間)とジョン・フランコ投手(復帰後3年間)と、いずれもリリーフ投手であり、先発投手で復帰後に2年以上現役を継続できた投手は1人も存在していないのだ。

 ある意味バーランダー投手の挑戦は、不可能との戦いになるということだ。果たして彼は復帰後に、どれだけMLBの舞台で投げ続けることができるのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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