すでにパ・リーグに2人しか存在しない6回以上到達率100% ロッテ・石川歩のエースとしての矜持

エースとしてロッテ投手陣を支えている石川歩投手(筆者撮影)

【有効的な投手起用がシーズンを制す】

 NPBは新型コロナウイルスの影響で120試合の短縮シーズンで実施されているが、すでに全チームが1/3以上を消化している。

 すでに本欄でも何度か指摘しているが、昨今のNPBでは先発投手が完投するスタイルが大幅に減少し、年々中継ぎ陣の起用法が重要視されるようになっている。

 今や中継ぎ陣を如何に有効に起用していくかが、長いシーズンを制する上で重要なカギを握っているといっても過言ではない。

 その一環として、以前から中継ぎ陣の起用法に定評のあるロッテの吉井理人投手コーチについて取り上げ、ロッテは先発投手陣の5回未満登板試合数と中継ぎ陣の5人以上登板試合数がパ・リーグの中で極端に低く、それだけバランスよく投手陣を起用している状況を明らかにした。

【中継ぎ陣を生かすエース投手の存在】

 もちろん吉井投手コーチがどれだけ優れた起用法を考案したとしても、実際に投手たちが期待通りの活躍をしてくれなければ、画餅に帰してしまう。つまり投手たちが計算通りに働いてくれるかが、大きな要素になる。

 ここまでロッテ投手陣がバランスよく、無理なく回っているのも、計算通りの仕事をし、投手陣を安定させる存在がいるからに他ならない。その投手こそ、開幕投手を務めた石川歩投手だ。

 石川投手のここまでの成績は、8試合に登板し、2勝2敗、防御率3.83を残している。この成績だけを見れば、エース投手として物足りなさを感じる人もいるだろう。

 だが彼はローテーションの柱としてスケジュール通りに投げ続け、しかも登板した試合すべてで、中継ぎ陣の登板を最小限に留める投球を続けているのだ。

【6回以上到達率100%はリーグで2人だけ】

 先発投手の評価基準は様々あるが、最近ではMLBで広まったクォリティスタート(6回以上、3失点以内)がNPBでも一般的になっている。つまりエース投手の条件として、少しでも多くの試合で6回以上投げることも重要な要素になってくる。

 エース投手が定期的に6回以上投げてくれれば、それだけ多くの中継ぎ陣に休養を与えることができるからだ。

 例えば、昨年サイヤング賞を受賞したジャスティン・バーランダー投手とジェイコブ・デグロム投手の昨シーズンの6回以上到達率をみても、それぞれ85.3%、78.1%と相当に高いことが理解できる。

 実は今シーズンの石川投手の6回以上到達率は、ここまで100%を誇っている。それだけ好不調に関係なく、登板する度にしっかり試合をつくっている証ともいえる。パ・リーグで石川投手以外に100%を続けているのは、西武のザック・ニール投手しか存在していない。

【石川投手の登板試合での中継ぎ陣平均起用数は2.6人】

 さらに同じ6回以上到達率100%を続ける2投手を比較すると、さらに石川投手の安定感が確認できる。

 ニール投手は8試合中7試合が6回で交代し、残り1試合も7回途中で交代しているのだが、石川投手は8試合中4試合しか6回で交代しておらず、残り4試合は7回途中、もしくは7回を投げきっているのだ。

 この差は、そのまま中継ぎ陣に影響を及ぼすことになる。石川投手とニール投手が登板した試合で中継ぎ陣が起用された平均人数を比較すると、石川投手が2.6人に対し、ニール投手は3.5人。石川投手の方がより多くの中継ぎ陣に休養を与えているのが分かる。

 ちなみに開幕から6連勝を飾っている巨人の菅野智之投手は、ここまで7試合に登板し、2試合の完投を記録する一方で、2試合で6回を投げ切れていない。中継ぎ陣起用の面から考えると、準備のさせ方が多少難しくなってくる。さらに登板試合の中継ぎ陣の平均起用数も2.4人と、あまり石川投手と変わっていない。

 石川投手がこのままシーズンが終わるまで6回以上到達率100%を続けるのは不可能だろう。だが石川投手が彼の役目を果たし続ける限り、ロッテ投手陣が大崩れすることはないように思える。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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