Yahoo!ニュース

MLBに新たな不手際が発覚! ドミニカ人選手をPCR検査せずに米国に搬送し機内クラスター発生か

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
MLBが用意したチャーター便を利用しチーム合流後感染が確認されたフアン・ソト選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLBの新たな失態が発覚】

 PCR検査の結果が届かずナショナルズなど数チームが練習中止に追い込まれるなど、MLBの不手際で選手たちの不信感が増す中、MLBの新たな失態が明るみになった。

 サマーキャンプに参加するドミニカ在住の選手たちを米国に搬送する際、MLBはまったくPCR検査を実施しないまま、チャーター便に乗せていたことが判明した。スポーツ専門サイト「the Score」など複数メディアが現地時間の7月9日、報じている。

【チャーター便搭乗前にPCR検査を実施せず】

 第一報を報じたのは、ワシントン・ポスト紙のジェシー・ドアティー記者。すでにこの報道について、MLBも事実を認めているという。

 ドアティー記者によれば、MLBはドミニカ在住の選手を米国に戻すため、7月1日にチャーター便2本を用意し、約160人の選手およびスタッフを搬送していた。だが搭乗前に彼らのPCR検査を一切実施していなかった。

 この便を利用した多くの選手は、チーム合流後のPCR検査で陽性反応が出ており、搭乗前に選手数人に無症状感染者がいたため、機内で他選手に感染が広がったとみられている。

 ナショナルズのフアン・ソト選手とビクター・ロブレス選手もチャーター便を利用し、チーム合流後に感染が確認された選手たちだという。

【MLBが声明で事情説明】

 今回の事態についてMLBは声明を発表し、以下のように事情説明している、

 「ドミニカ在住の160人の無症状選手たちの検査は、ドミニカのヘルスケア・システムの検査器具が十分でなかったこともあり、同機関から対象外になるよう例外措置が求められていた。これは我々が準備してきたものではなかった」

 ドアティー記者によれば、MLBは選手たちにチャーター便の出発3時間前の集合を求め、検温、症状確認の問診を行っていたという。しかしこの措置で無症状感染者を確認するのは不可能で、結果的に機内でのクラスター発生を招いてしまった。

【不信を招き続けるMLBの対応】

 すでにカブスのクリス・ブライアント選手など多くの選手たちがMLBに対して不満と不信を口にしている。そうした声はナショナルズのマイク・リゾGMなどフロント陣からも上がり始めている。

 本来なら選手たちの健康、安全を担保するため、新型コロナウイルス対策の安全プロトコルの徹底的な実施に取り組んでいくべき立場でありながら、今回の不手際は自らプロトコルの本質を黙殺したに等しい行為といえる。これでは選手からの心象を悪くするばかりだ。

 選手たちは本当にMLBを信頼していいのだろうか。さらにMLBは無事にシーズンを開幕することができるのだろうか。疑念は増すばかりだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事