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移動距離の最大差は4倍弱! 変則シーズンでさらに浮き彫りになった地区格差

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今シーズンは移動距離が短くて済むことになったカブスのダルビッシュ有投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【2020年シーズン全日程が明らかに】

 MLBが現地時間の7月6日、2020年シーズンの公式戦全日程を発表した。

 すでに日程が発表される前から、今シーズンは変則的な組み合わせになるのが決まっており、各チームの対戦相手は東・中・西の地区内に限定され、それぞれ同リーグ40試合、交流戦20試合が組まれている。

 地区内限定の日程が明らかになった時点で、今シーズンは総移動距離において、相当の地区格差が生じるのは明らかだった。それぞれ3地区で、チームの分布状況にかなりの差があるからだ。西海岸地域からテキサスにまで広がる西地区と、中西部地域に集中する中地区では当然のごとく移動距離は異なってくる。

 改めてMLB公式サイト(baseballsavant.mlb.com)で確認したところ、やはり例年以上の格差が浮き彫りになった。

【最長移動はアストロズで最短移動はブルワーズ】

 総移動距離の地区別傾向は、単純にいってしまえば、「中<東<西」になる。全30チームの総移動距離を比較すると、上位10チーム中8チームが西地区のチームで、下位10チーム中8チームが中地区のチームだ。

 今シーズン最長の移動距離を強いられるはレンジャーズで、1万4706マイル(約2万3530キロ)。その反対に最短の移動距離で済むのがブルワーズで、3962マイル(約6339キロ)でしかない。その差は3.71倍にもなる。

 ちなみに昨シーズンの場合だと、最長距離移動チームはマリナーズで4万6247マイル(約7万3885キロ)に対し、最短移動チームはタイガースで2万4139マイル(約3万8622キロ)となり、その格差は1.91倍に留まっている。

【ポストシーズンにも影響か?】

 もちろん移動距離、移動時間が長くなればなるほど、選手の肉体的、精神的な負担は増えていく。これだけの格差が生じていることを考えれば、60試合の短縮シーズンといえども、地区によって選手の疲労度は相当に変わってくるし、選手の負傷リスクも差が出てくる可能性がある。

 そうなれば、ポストシーズンにも影響を及ぼすことになるだろう。短縮シーズンといえども、ポストシーズンに入れば必然的に総力戦になってくる。レギュラーシーズンで主力選手が比較的疲労を残さずに戦えたチームが、どうしても有利になってくるだろう。

【日本人所属チームを徹底比較】

 最後に日本人選手が所属するチームの総移動距離もチェックしておこう。括弧内の数字は全30チーム内でのランキングだ。

 1位(3) マリナーズ 1万1813マイル(約1万8901キロ)

 2位(6) レイズ 1万939マイル(約1万7502キロ)

 3位(7) エンゼルス 1万457マイル(約1万6731キロ)

 4位(12) ブルージェイズ 9284マイル(約1万4854キロ)

 5位(19) ツインズ 5999マイル(約9598マイル)

 6位(22) ヤンキース 5604マイル(約8966キロ)

 7位(26) レッズ 4626マイル(約7402キロ)

 8位(29) カブス 4071マイル(約6514キロ)

 日本人選手の中でも、これだけの格差が生じている。MLB挑戦1年目の筒香嘉智選手と秋山翔吾選手は、基本的に主力として毎試合出場が期待されていることを考えると、秋山選手は比較的負担が少ない中で、シーズンを過ごすことができそうだ。

 今シーズンはチームのエースとして期待されているダルビッシュ有投手も、負担が少ない中で登板できると考えていい。どんな成績を残すのか、今から楽しみだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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